生活保護制度の中には様々な扶助制度があります。
毎日の暮らしにかかる食費や光熱費の扶助が受けられる生活扶助。
家賃や修繕費、賃貸の更新料、引っ越し費用扶助が受けられる住宅扶助。
他にも様々な扶助制度があります。

今回はその中でも家賃や修繕費、賃貸の更新料、引っ越し費用扶助が受けられる住宅扶助制度についてご紹介していきます。
制度について行政が発行している説明資料では難しく、理解できないところを詳しく、よりわかりやすく解説いたしますので、是非ご一読を!

1.生活保護における住宅扶助制度ってなに?家賃を補助してくれるって本当!?

皆さん、生活保護で家賃補助をしてくれるということは知っているものの、実際どのようなものに補助を受けられるのかってご存知ないかたもの多いのではないでしょうか。
「私って対象者に当てはまるの?」「具体的にどのような補助が受けられるの?」
このような疑問・不明点を持たれている方も多いはず。

具体的な内容や対象者について、まずはざっくりとご説明させていただきます。

2.生活保護の住宅扶助制度のそもそも何?制度でどこまで補助してくれるの?

住宅扶助とは、困窮のために最低限度の生活を維持することのできない者に対して、家賃、間代、地代等や、補修費等住宅維持費を給付するもの。

厚生労働省「住宅扶助について」から引用

行政が公式に発行している資料には上記のように「家賃、間代、地代、補修費等住宅維持費」を給付すると書いてあります。
実際は下記のようなものが含まれます。

①住宅扶助の基準額ってどれくらい?

一級地・二級地・三級地とは国が定める土地種別のことで、下記リンクから見ることができます。
こちらの土地種別により月額で扶助される金額が変わってきます。

一級地はこちらから (法テラス 生活保護の基準に定める一級地|法テラス から引用)
二級地はこちらから (厚生労働省 生活保護制度における地域差等について から引用)
三級地はこちらから (厚生労働省 生活保護制度における地域差等について から引用)

扶助を受ける前にまずは自分がどこに住んでいて、どの基準額が適用されるのかをしっかり確認しましょう。

②特別基準額ってなに!?負担額が一定額を超えるとさらに扶助されるの?

家賃、間代、地代等については、当該費用が上記の額を超えるときは、都道府県、指定都市、中核市ごとに、厚生労働大臣が別に定める額(限度額)の範囲内の額とする。

厚生労働省「住宅扶助について」から引用

厚生労働省は上記のように特別基準額を定義しており、基準額を一定額超えた場合、都道府県、指定都市、中核市ごとに、厚生労働大臣が別に定める額が付与される場合があります。

条件としては以下が挙げられます。

  • 限度額によりがたい家賃、間代、地代等であること
  • 世帯員数、世帯員の状況、当該地域の住宅事情によりやむを得ないと認められるもの

算定額としては計算方法が2つ列挙されており、

複数人世帯等の場合の特別基準 = 限度額 × 1.3
7人以上世帯の特別基準 = 限度額 × 1.3 × 1.2

となっており、現状の基準額から1.3倍~1.56倍扶助を多くもらえる可能性があります。

③その他扶助される項目

上記と他にも下記項目にも扶助を受けられます。

1-敷金、礼金等

賃貸するときにほとんどの場合で必要になります。中には敷金・礼金がかからない物件も存在しますが、多くの物件で発生するものです。
敷金・礼金がわからない方向けにさっとおさらいすると
敷金とは、「賃料の不払いであったり、住んでいて部屋を汚してしまったり、破損させてしまった場合の原状回復費用の未払い等のため事前に備えておくためのお金」のことで、引っ越し等で賃貸している部屋から退去するときに、貸主に支払うべきお金がある場合、その金額を差し引いて残金が返還されるケースが多いです。

2-契約更新料

これは名前の通り、賃貸の更新料はもちろん、賃貸契約を結ぶにあたり必要になってくる火災保険料も含まれます。
ただし、こちらは上限があり、あくまで先ほど説明させていただいた「特別基準額」の範囲内となっているので注意が必要です!

④住むにあたってかかってくる、住宅維持費まで扶助してくれるの?

被保護者が、現に居住する家屋の畳、建具、水道設備、配電設備等の従属物の修理又は現に居住する家屋の補修等をする場合に給付する。

厚生労働省「住宅扶助について」から引用

となっており、住むにあたり住居の補修費も扶助してもらえます。
ただし、光熱費、水道料金等はこちらに含まれませんので、注意が必要です!

このほか、共益費・管理費も住宅扶助は出ませんのでご注意ください。

3.住宅扶助制度を利用するための流れ(保護を受けていて転宅指導を受けている人向け)

住宅扶助制度に関しては、まず物件を見つけて不動産会社に初期費用の見積もりをしてもらいます。

その後、ケースワーカーに見せてOKかどうか判断してもらいましょう。

次にケースワーカー側で費用の準備がそろう日程を教えてもらい、不動産会社と契約の日程を決めます。

そして初期費用を受け取りに行って、ここでようやく不動産会社との契約になります。

この際の契約書と支払った領収書は必ず入手して、ケースワーカーに提出しましょう。

引っ越し費用も扶助してもらう場合には、複数の業者に見積もってもらった上で一番安い業者を選んで、ケースワーカーに提出。

引っ越し費用をケースワーカーから受け取ったら、そのお金で引っ越しを済ませて、領収書をケースワーカーに渡します。

4.住宅扶助制度を利用する上での注意点

住宅扶助制度を利用する際には、3つの注意点があります。

それは一体どのようなものなのでしょうか。

①必ずケースワーカーと相談しながら進めていく必要がある

上記で述べたように、住宅扶助制度はケースワーカーと何度もやり取りする必要があります。

その上、必要な度にケースワーカーからお金をもらわなければならず、先に建て替えてもらうことはできません。

また、限度額にも注意する必要があります。

限度額を超えるような契約は住宅扶助制度の支給の対象とはならないため、必ずケースワーカーと相談しながら住宅の契約や引っ越しの準備などを決めていくようにしましょう。

②住宅がなかなか見つからない可能性がある

生活保護の受給者は、不動産会社や保証会社から厳しい目で見られやすく、思うように契約までできる住宅が見つからないかもしれません。

特に個人経営の不動産業者の場合は、物件の紹介すらしてくれない可能性もあります。

そのため、ある程度余裕を持って行動するようにしましょう。

時間の余裕があれば、じっくりと生活保護受給者でも契約可能な住宅を見つけやすくなるでしょう。

③家主から断られる可能性がある

生活保護の受給者は家主が受け入れを不安視してしまい、住むことを断られる可能性があります。

家主の中には生活保護受給者に対して、室内で事故が起こる可能性や家賃を滞納する可能性などの不安感を抱えてしまう場合があります。

そうなると、家主としては生活保護受給者が住むことに抵抗感を覚えるかもしれません。

5.生活保護受給者が新しく家を探す際のポイント

生活保護受給者の家探しは大変なものであり、すぐに見つけられないでしょう。

だからこそ、これから探そうと考えているのであれば、以下のポイントを踏まえて探してみましょう。

そうすることで、生活保護を受給しながら理想的な住宅が見つかるかもしれません。

①大手の不動産会社に相談してみる

これから住宅を探すのであれば、大手の不動産会社に相談してみましょう。

大手の不動産会社の場合は成約件数をこなせる体制が整っており、生活保護受給者への家探しをサポートする時間と人員を持っています。

そのため、個人経営の不動産業者よりも探しやすくなっています。

これから探す場合は大手の不動産会社に足を運び、生活保護を受けていることを不動産会社に伝えた上で探してもらいましょう。

先に伝えておけば、そのことを汲み取った上での住宅を探してくれます。

②インターネットで生活保護者でもOKなところを探す

もし近くに大手の不動産会社がないのであれば、インターネットを活用してみましょう。

現在ではインターネットで賃貸を探せるようになっており、サイトによっては生活保護受給者でも対応可能かどうか公表している場合もあります。

ただし、仮に対応可能であっても必ず入居できるとは限りません。

しかし、家主との交渉や不動産会社によるサポート次第で、入居できる可能性があります。

もし生活保護受給者でも対応している賃貸があった際には、その賃貸を管轄している不動産会社や家主に問い合わせてみましょう。

③保証人がいない場合は保証会社を頼る

賃貸契約する上では保証人が必要ですが、生活保護受給者の中には保証人がいない場合があるでしょう。

その場合は、保証会社に頼りましょう。保証人がいるかどうかで物件を紹介してもらいやすくなります。

その上、家主の不安も解消されやすくなるという利点もあります。

ただし、上記で述べたように生活保護者に対する保証会社の審査は厳しく、必ず審査が通るとは限りません。

そのことを踏まえた上で、頼るようにしましょう。

④リライフネットに相談してみる

物件をこれから探すのであれば、リライフネットに相談してみるのもおすすめの方法です。

リライフネットでは、ニーズに合った物件の提供と住宅を確保するのが困難な方へのサポートを行っています。

そのため、住宅で悩んでいるのであれば、リライフネットに相談することで、解決策が見つかるかもしれません。