生活保護を受けている人は、家賃の補助を受けることができる住宅扶助という制度があります。

住宅扶助とは

困窮のために最低限度の生活を維持することのできない者に対して、家賃、間代、地代等や、補修費等住宅維持費を給付するもの。厚生労働省

とされており、生活保護受給者であっても賃貸へ入居する際に補助を受けて入居できる仕組みとなっています。

しかし、実際には「本当に生活保護でも引越しできるの?」「生活保護でも賃貸に入居できるの?」と疑問に思っているのではないでしょうか?

今回は、生活保護受給者が住宅扶助制度を受けるための方法や賃貸物件に入居する際に気をつけるポイントなどを解説していきます。

1.生活保護受給者が賃貸の入居審査で断られる理由とは?

生活保護受給者でも賃貸物件への入居が可能だとお話しましたが、入居にあたっては審査が必要になります。大家さんからすれば、どんな人が入ってくるか確認したくなるのは当然でしょう。

しかし、生活保護受給の理由には、さまざまな事情があるので「どんな理由だと断られるの?」と不安に感じる方も多いのではないでしょうか。

ここではそんな疑問を解消するため、生活保護受給者が入居審査で断られる5つの理由について説明していきます。

①生活保護の受給理由

1つ目は生活保護を受給するに至った理由です。

例えば、「精神的な理由」は断られやすいです。

精神が安定していない方は一般の方と比べて、新しく仕事に就くことができなかったり、最悪の場合、亡くなってしまったりすると事故物件になってしまうからです。

審査する大家さん側としては、何かトラブルがあると自分たちで対応しなければならないので、過去にトラブルがあった人を入れたいとは思いません。

ただし、正当な理由であれば理解を示してくれる大家さんが多くいらっしゃるのも事実です。

例えば、「離婚により生活が苦しくなった」「職を失って働き口を探している」等はやむを得ない理由となります。

受給理由は早いうちに説明して大家さんの理解を得るようにしましょう。

②連帯保証人が立てられない

連帯保証人を立てられない場合、入居審査で断られる可能性が上がります。

保証人がいない場合は、保証会社を使うことも可能です。

③過去に滞納などのトラブルがある

生活保護受給者のなかには、支払い能力が低いために家賃などの支払い滞納をしてしまった人もいるかもしれません。

その場合、新しい入居先で過去と同じように滞納されるリスクを避けたいために断られるケースがあります。

特に生活保護受給者はもともと生活保護費での収入が決まっているため、家賃を滞納してしまった場合は退去につながるリスクも高いと考えられることも敬遠される理由です。

④年齢による理由

生活保護受給者の年齢は若年層から高齢者までさまざまな年代がいます。

年齢が高齢である場合、身体的に不自由な方が多く生活に支障をきたす可能性があるため断られるケースが多いです。60歳以上ですと断られてしまうケースが多くなります。

また、若い方に比べて高齢の方は部屋で亡くなる懸念もあります。高齢の方の何かと大家さん側への負担が増えることか入居を断る理由の1つとなっています。

⑤生活態度

普段からの生活態度も審査で断られる理由になります。

なぜなら、態度が悪い=トラブルを起こすと判断されやすいからです。

特に生活保護受給者は良いイメージを持たれにくいので、審査時には丁寧な姿勢で臨むことを心がけましょう。

これに加え、犯罪歴や前科がある人は審査に通過することがより難しくなるため、より人柄が良くないと審査で落とされてしまうことも認識しておきましょう。

断られる場合の主な要因としては以上の5つが挙げられますが、その他にも

  • 精神疾患を患っており、他の住民や大家さんとのトラブル等が懸念される
  • 昼夜逆転の生活リズムになってしまい深夜の騒音トラブル等の可能性がある 
  • 家にいる時間が長い為、室内が劣化しやすい

なども生活保護受給者が敬遠される要因となります。

これらの対応策としては、

まずは『住宅扶助内の賃料の物件』を探し、その中から『生活保護受給者入居可能な物件』を探すことが最低限必須になります。 

その上で、生活保護受給にどれだけ正当な理由があり、それを貸主である大家さん等に理解してもらえるかが重要になってきます。

生活保護の受給理由によっては不動産会社で断られるケースも多いため、まずは物件を申込む不動産会社にしっかりと生活保護の受給理由を説明する必要があります。

不動産会社に物件を探してもらう時点から事情を説明することで、理解ある大家さんを紹介してもらえたり、アドバイスをもらえたりすることもあるので、早めに申告しておきましょう。

審査で断られないようにするためには、不動産会社に正確な情報を伝えるのが1番の近道です! 

2.生活保護受給者が賃貸物件探しで気をつけること

生活保護受給者は一般の方よりも物件探しで気をつけなければならないことが多数あります。

ここでは気をつけるべき点について、手続きの流れとあわせて説明していきます。

①ケースワーカーから許可をもらう

まずは担当のケースワーカーに相談しましょう。

生活保護受給者は家賃を自治体に負担してもらっている状態なので、私的な理由で引越しすることはできません。

引越しが認められる理由は以下の例があります。

  • 離婚したため新居が必要である
  • 災害や立ち退きなど、やむを得ない理由がある 
  • 騒音などの環境面の問題が病気治療の著しい妨げになっている

上記以外でも私的でなければ認められる事例はあるので、気になる方はケースワーカーに相談してみましょう。

また、認められる家賃には上限があります。

引越し先によって家賃の上限は異なるため、必ず確認しましょう。

②物件を探す・決める

次に、物件探しです。物件を探す際に気をつけるべきポイントは、生活保護受給者の賃貸を認めている物件を選ぶことです。

理由は、『生活保護受給者が賃貸の入居審査で断られる理由とは?』でも説明したように入居お断りの大家さんや不動産会社が多いからです。

「ここに住みたい!」と思った物件を見つけても、そもそもお断りであれば時間ももったいないですし、気持ちのいいものではありません。

【生活保護 賃貸】で検索すれば各地域でさまざまな物件が見つかります。

効率的に物件を見つけていきましょう。

物件を見つけたら、不動産会社に問い合わせして内見と入居審査を受けて物件を決めましょう。

③引越し業者を決める

次に引越し業者を決める必要があります。

引越し費用は自治体が負担してくれるため、最も安い費用を提示する必要があるからです。

そのため、引越しの見積もりは相見積もりをとって、最も安い業者を選ぶようにしましょう。

引越しの見積もりは以下のサイトからとることができます。

④住宅補助の受け取り引越しする

ここまでくれば、あとは手続きだけです。

ケースワーカーに申請を行い書類を提出しましょう。

引越しの許可をもらえたら住宅補助を受け取ることができます。

受け取りが完了したら不動産会社と手続きを行います。

不動産会社へは以下の2点を提出してください。

  • 契約書類
  • 初期費用

あとは引越ししてすべての作業が完了です。

⑤気をつけるべきポイントまとめ

手続きの流れに沿って、気をつけるべきポイントを説明してきました。

ポイントについてまとめておくので参考にしてみてください。

  • 私的な理由では引越しできないので、理由を明確にしておく
  • 物件は生活保護受給者の賃貸を認めている物件を選ぶこと
  • 家賃には上限があるので、引越し先の自治体の上限額を確認しておく
  • 引越し費用は見積をとって最も安い業者を選ぶ
  • 役所と不動産の手続きをもれなく行う

3.賃貸物件の入居審査で注意すべきポイント

次は、入居審査での注意ポイントです。注意するポイントを押さえておけば、入居審査の通過の可能性がグッと上がるのでしっかり意識しましょう。

①生活保護を受けることになった理由をしっかりと伝える

生活保護を受けることになった理由をしっかり伝えましょう。

断られる理由でも説明していますが、やむを得ない理由であれば理解を示してくれる不動産会社や大家さんもいらっしゃいます。

そのため、理由を正確に伝えることが大事です。あとから伝えるのは印象もよくないですし、早いうちから大家さんや不動産屋に正確な情報を伝えるようにしましょう。

②連帯保証人がいるかどうか

物件に賃貸で入居するには原則として連帯保証人を立てる必要があります。

家賃の未払いや夜逃げなどした際、代わりに支払いをしてもらうためです。通常は親族が連帯保証人になる場合が多いです。

しかし、生活保護を受けている人の多くは、頼れる人がいないため連帯保証人を見つけられないケースも多いです。

そんな時はこれから説明する対処法で審査に臨みましょう。

4.連帯保証人を見つけられないときの対処法

賃貸物件を契約する際は、基本的に連帯保証人が必要となります。

契約者が家賃を支払えなくなったときや、何らかのトラブルが生じた際に支払いに関して保証する必要があるからです。

しかし、生活保護受給者は頼れる方がいないケースも多く、連帯保証人を見つけられない場合もあります。

もし連帯保証人が見つからない場合、家賃保証会社を利用したり、自治体の代理納付を活用したりするのがおすすめです。

①家賃保証会社を利用する

連帯保証人がいない場合は、家賃保証会社を利用して賃貸借契約を結ぶことができます。

ただし家賃保証会社を利用するためには、条件があります。

今まで家賃の支払いやクレジットカードを滞納していないか、家賃が収入に対して高すぎないか等の審査を受ける必要があります。

また物件によっては家賃保証会社の利用ができない場合もあるため、事前に不動産会社へ確認しておきましょう。

保証会社の審査基準については、会社によってバラバラです。

賃貸保証会社にはそれぞれの審査基準があり、一定の基準に応じて審査を行います。

多くの場合は過去に家賃滞納などがないことが前提ですが、生活保護受給者でも連帯保証人を付けず緊急連絡先だけで審査を通してくれる保証会社もあります。

生活保護を受給していると、どうしても家賃保証会社からは、審査の際に厳しい目で見られがちです。

1つの保証会社に落とされたからといって、落ち込まずに何社も審査をお願いしてみましょう。

②自治体の代理納付を利用する

連帯保証人が見つからずに保証会社を使用する以外の方法として、自治体の代理納付という方法もあります。

代理納付とは、本来であれば生活保護受給者に給付する家賃補助を、自治体から直接大家さんや管理会社に支払う方法です。

これにより、家賃の支払い忘れがなくなったり、振込手数料の削減などのメリットがあります。

入居審査も有利に働くので生活保護受給者への負担も小さくなります。

ただし、代理納付制度の実施は地域によって異なるため、担当のケースワーカーに確認しておきましょう。

また、共益費や管理費用の支払いは条件によって支払われない可能性もあるので、こちらもケースワーカーに確認するようにしてください。

5.住宅扶助を受けるには?

住宅扶助を受けるには、引越し先の家賃が住宅扶助内で収まるかどうかを慎重に確かめなければいけません。場合によっては、ケースワーカーに相談しなければ解決しないこともあるので、相談が必要です。

住宅扶助の支給額は、地域によっても異なるので確認が必要です。

例えば、主要都市では以下のような上限額が決まっています。

地域(単身世帯・1、2級地の場合)限度額(単位:円)
北海道29,000
東京53,700
神奈川46,000
大阪42,000
福岡32,000
                                                出典:厚生労働省

家賃の確認は不動産会社に見積もりをしてもらう必要があります。不動産会社に出してもらった見積もりが扶助の対象外となれば、物件を探し直す必要もでてきます。

物件を借りるにあたって、生活保護受給者は普通の人よりやることが多いため、余裕を持って行動することが大切です 。

まとめ
生活保護受給者の賃貸借契約はハードルが高いですが不可能ではないので、根気強く一つ一つクリアしていきましょう!