1.生活保護を受給する人の医療費はどうなるのか

生活保護は生活保護法にもとづき、「国民が健康で文化的な最低限度の生活を送る」ための制度として極めて重要な役割を担います。そこには医療行為を受け傷病を治療する権利も含まれており、生活保護では医療扶助が適用されます。

生活保護法では生活扶助・住宅扶助・教育扶助・医療扶助・介護扶助・出産扶助・生業扶助・葬祭扶助という8種類の扶助が定められており、世帯の実情に応じて必要なものが給付されます。

基本的に各扶助は金銭給付されますが、ある程度額が決まっている生活扶助や住宅扶助などと違い、額の変動が大きい医療扶助は現物支給の形がとられています。

生活保護が開始されると国民健康保険から脱退することになり、医療費の10割全てを医療扶助が対応します。一方で生活保護の原則に「他法他施策の優先」というものがあるため、併用できる制度は可能な限り使用しなければなりません。

例としては会社員等が加入している社会保険や障がいを持つ人が利用できる自立支援医療制度などがあり、これらの場合は制度適用後の自己負担額のみを支給します。

医療機関の受診には通院医療と入院医療があり、入院すると医療費のほかに食費もかかります。医療行為ではないものの入院時の食事は医療と一体という取り扱いから、食費にも医療扶助が適用されます。

2.生活保護を受けている人は医療機関を受診する前に申請が必要

医療扶助を受けて医療機関を受診する際は、受診希望日や受診者の氏名・医療機関名などを記載した申請書を、あらかじめ福祉事務所へ提出しなければなりません。

医療の必要性が認められた場合は医療券が発行されるので、保険証の代わりとして医療機関の受付に呈示します。医療費の手続きは月単位で行うため、月が変わった後も通院したい場合は改めて申請する必要があります

処方箋が発行される場合は薬局で処方を受けることになりますが、この場合も医療機関と同様調剤券が必要です。受診前に薬局を決めておき、医療券と一緒に調剤券の発行も受けておきましょう。この場合、複数の調剤薬局を利用するのは好ましくないため、かかりつけ薬局をあらかじめ決めておきましょう。

入院時の手続きも原則として通院時と同じで、入院日や手術日があらかじめ決まっている場合は必ず事前に申請する必要があります。救急医療などやむを得ず事前の申請ができない場合は、連絡可能になり次第ケースワーカーに連絡を入れ指示を仰ぎましょう。

なお医療扶助の支給対象となるのは、生活保護法上の指定医療機関を受診した場合に限られます。ほとんどの医療機関は指定を受けていますが、わずかながら生活保護法の指定を受けていないところもあるため、医療扶助の申請時に確認しておきましょう。

3.自己負担として本人支払額が生じることも

生活保護の要否判定や支給額の決定にあたっては最低生活費と収入額を比較し、不足する金額を支給します。最低生活費には医療費相当分も算定されますが、収入を充当していった際に「生活費は足りるが医療費が不足する」という事例も、わずかながら存在します。

その場合は医療費のみを扶助する「医療扶助単給」という扱いとなり、本来の医療費から生活費を超過する額を差し引いた分が生活保護から給付されます。差額は自己負担となり、これを実務上「本人支払額」と呼んでいます。

また保護費の算定基準が居宅基準から入院基準に変更される単身世帯でも、本人支払額が発生する場合があります。

具体的にはⅠ類やⅡ類の代わりとして入院患者日用品費が計上されますが、入院時に必要な最低限の額になるため、本人支払額が生じる可能性が高くなります。

4.受診前の申請が不要な場合も

医療扶助を受けるためには、原則として受診前に申請を行い、交付された医療券を提出する必要があります。しかし事前の申請が不要な場合も、例外的な取り扱いとして定められています。

救急医療をはじめ緊急性のある受診は、事前申請が不要な例のひとつです。特に福祉事務所が閉庁している土日祝日にやむを得ず受診する場合は、物理的に事前の申請ができません。いずれの場合も連絡可能になった時点でケースワーカーに連絡を入れ、受診した旨を報告しましょう。

定期的な通院を要する場合も、事前申請を必要としないことがあります。ケースワーカーの家庭訪問時でも構いませんが、できれば早めに定期通院を希望する旨伝えましょう。福祉事務所と医療機関との間で書類のやり取りがあり、福祉事務所が必要と認めた場合は最長6カ月の一定期間、事前の申請をせずに通院することが可能です。

決定された期間が経過した後に引き続き通院する場合もあるため、受診状況は随時報告しなければなりません。また無駄を省くため、通院を止める際も必ずケースワーカーに連絡しましょう。

ちなみに歯科医院の場合、上記のようには取り扱わないのが原則です。保険証を持参して受診する場合と同様、継続して通院する際は毎月医療券の交付を受ける必要があります。

5.通院移送費の支給

通院する際のバス代やタクシー代は、原則として生活費から捻出しなければなりません。しかし定期的な通院を要する場合、病状等から公共交通機関の使用がやむを得ないと認められれば、医療一時扶助として通院移送費が支給されることもあります。

ケースワーカーに連絡・相談した上で移送費の給付を申請し、審査に通れば通院移送費が支給されます。原則として認められる交通機関はより低額な運賃のもので、療養に必要な最小限度の日数に限られます。

通院移送費は事後支給の場合が多く、医療機関から通院した証明をしてもらい、定期的にケースワーカーへ提出します。タクシー移送が認められている人は、証明書提出の際領収書を忘れず添付しましょう。

6.入院中の賃貸家賃も生活保護から支給される

入院中の世帯員は生活費の算定が入院基準となり、単身世帯では賃貸が使用されないまま契約が続く状態になります。しかし退院後の帰来先がなくならないよう、6カ月以内に退院見込みがある場合は家賃にあたる住宅扶助が継続して支給されます

病状の変化で入院期間が延長される場合は、3か月以内に確実に退院退所できる見込みがあると認められれば、3カ月を限度として給付を受けることも可能です。

それ以上入院が長引く場合は、帰来の見込みなしとして住宅扶助の支給が停止されます。そのため単身者が長期入院をする場合、退院後の生活拠点も頭に入れておく必要があります。

7.まとめ

生活保護を受けている人の医療費は、保護の対象として医療扶助の適用を受けます。一般的な医療費はもちろん、通院移送費や入院中の住宅扶助など、保護を受けている人の医療を

様々な角度から支援しています。

しかし制度を熟知していないため申請をせず、必要な扶助を受けていない人もいるのではないでしょうか。そんなとき、生活困窮者をトータルでサポートするリライフネットは強い味方になってくれるでしょう。

リライフネットは経済的に困窮する人への様々な角度からの総合的な支援が可能ですが、中でも賃貸物件を最短で相談翌日から提供できる点を強みとしています。

もちろん生活保護などの福祉制度も熟知しており、住居確保と保護申請をセットでサポートすることも可能で、生活保護を受け長期入院している人が退院後の住まいを探す場合も頼りになる存在です。

特に医療費支払いの面で生活保護の申請を検討している人は、一度リライフネットに相談してはいかがでしょうか。