生活保護受給中に得た収入は、ケースワーカーにすべて申告する必要があります。しかし、家計に入るお金には、収入として認定されるケースと認定されないケースがあります。今回は、生活保護受給中に知っておくべき収入認定と収入申告のポイントを解説します。

1.生活保護を受給しながら収入を得るのは大丈夫?

生活保護を受給しながら収入を得ることは可能です。しかし、得た収入はすべてケースワーカーや福祉事務所に報告(収入申告)する必要があります。

①なぜ収入を申告するのか

生活保護制度は、困窮した国民の健康と最低限度の文化的な生活の保障が目的です。生活保護制度では、厚生労働省によって定められた「最低生活費」の基準額から収入を差し引いた金額を生活保護費として支給します。※1

生活保護費の最終的な支給金額は、世帯収入の正確な申告により算出されるため、非常に重要な申告といえます。また、申告を怠っていた場合、不正受給となるケースもあります。収入は速やかに申告しましょう。

②生活保護費が減額される収入認定とは

世帯に入るお金は、収入として認定されるお金と、認定されないお金に分けられます。生活保護費が減額される収入は、収入として認定されたものだけです。収入として認定されることを「収入認定」と呼びます。最低生活費から差し引かれる収入には、就労収入、年金、親族からの援助、預貯金、資産の売却による収入、保険の払い戻しなどが該当します。※2

③すべての収入が収入認定されるわけではない

生活保護を受給しながら収入を得ることは、法律的に問題ありません。むしろ、収入を得ることによって自立への道を進むことが期待されています。厚生労働省の指針によれば、収入の一部は生活保護の支給額に影響しますが、すべての収入がそのまま差し引かれるわけではありません。例えば、就労収入には一定の控除が適用されます。

※1出典:厚生労働省「生活保護制度」参照:2024.05.23

※2出典:厚生労働省「生活保護制度の概要等について」参照:2024.05.23

2.収入は全て申告しないといけないのか

生活保護を受給している間に得た収入は、すべて申告する必要があります。これは、生活保護法に基づく義務であり、正確な生活実態を把握するためです。収入を申告しない場合、不正受給と見なされ、生活保護の支給停止や返還請求が発生する可能性があります。※1

①申告する収入の種類

生活保護受給中は、収入をすべて申告します。申告する収入として代表的なものを解説します。

1-就労収入

継続する勤務によって得た就労収入は、基本給に各種手当を含めた総額を収入認定します。

生活保護制度では生活保護受給者の自立を促進するため、就労収入に4種類の控除があります。基礎控除、特別控除、新規就労控除、未成年者控除に該当する場合、収入から一定の金額が控除されます。

さらに、働く際に必要になる交通費や所得税などは、必要経費として実費の控除が認められます。※2

2-不安定な就労による収入

継続しない不安定な臨時の就労収入も申告します。不安定な就労であっても、交通費などがかかる場合は、その実費が必要経費として控除されます。収入として認定される金額は、月額15,000円を超える場合です。経費を差し引いた場合に月額が15,000円以下になる場合は、収入として認定されません。また、不安定な就労収入は、世帯の人員ごとに計算されるため、少額の就労収入を得た家族が2人いる場合には、1人あたり15,000円まで控除されます。※3

3-ボーナス(賞与)

就労している場合に受け取れるボーナスは、全額が支給された月の収入として認定されます。しかし、やむを得ない理由がある場合は、支給月から継続する6ヶ月以内で分割して収入認定します。

4-遺産

生活保護受給中であっても、遺産の相続は可能です。相続した遺産の金額によっては、最低生活費を越えるだけでなく、生活保護の受給条件に該当しなくなる資産を持つことになるため、生活保護が停止、もしくは廃止となる可能性があります。※4

5-給付金

国から支給される給付金は、収入認定されないケースと収入認定されるケースがあります。年金や恩給、地方公共団体が定期的に支給する給付金は、受領額が収入認定されます。災害時やコロナ、物価高騰などの救済措置として臨時に支給される給付金は収入認定されない傾向があります。※5

6-ポイント・キャッシュバッグ

店舗やWebサイトのキャンペーンを利用したことによる、ポイント還元やキャッシュバック、フリマアプリでの売上ポイントも収入申告が必要です。電子マネーやポイントなど、現金と同様に使用できるものは現金として収入認定されます。個人での判断は難しいため、ケースワーカーに相談しましょう。※6

※1出典:厚生労働省「生活保護法による保護の実施要領について」参照:2024.05.23

※2出典:厚生労働省「生活保護制度における勤労控除等について」参照:2024.05.23

※3参考文献:荘村明彦『生活保護手帳2023年度版』(中央法規出版、2023.10.30)p.377

※4出典:朝日新聞社「相続会議」参照:2024.05.23

※5参考文献:荘村明彦『生活保護手帳2023年度版』(中央法規出版、2023.10.30)p.378

※6出典:中央法規出版「生活保護手帳 別冊問答集 2018 年度版」(別冊問答18_追補_20190513)参照:2024.05.24

3.収入の申告方法と申告するタイミング

収入を得た場合は、ケースワーカーや福祉事務所に報告し、申告手続きをします。

①収入の申告方法

収入の申告方法は書面です。「収入申告書」に必要事項を記入し、給与明細書やその他の収入を証明する書類を添付して、担当のケースワーカーや福祉事務所に提出します。※1

自治体によっては、オンラインでの申告が可能です。

1-月次報告

継続して収入がある場合は、毎月報告することが求められます。※2

2-臨時収入の報告

臨時収入があった場合には、その都度報告が必要です。

②申告のタイミング

収入申告のタイミングは、各自治体が定める期限内に行います。通常は収入があった場合、その都度速やかに報告します。毎月報告する月次報告であれば、給料日から数日の間に収入申告書を作成することが無難です。また、臨時収入も確定した日から数日以内を目安に申告することがおすすめです。

報告しないまま調査時に収入が発覚すると、不正受給と判断される可能性があります。場合によっては、生活保護の受給停止や生活保護法第85条(※3)に定められた罰則が適用される場合もあるため、早めに申告しましょう※4

「収入があればすぐにケースワーカーへ報告する」ということを習慣づけるようにすることが大切です。

※1出典:平塚市「記入例」参照:2024.05.23

※2出典:厚生労働省「生活保護制度」参照:2024.05.23

※3出典:e-Gov「生活保護法」参照:2024.05.23

※4出典:習志野市「不正受給とならないために(生活保護受給者の皆様へ)」参照:2024.05.23

4.生活保護と収入の疑問

生活保護受給中には、収入が大きく増えることもあれば、減少するケースもあります。ここでは、収入が生活保護費を上回った場合や家族の収入申告について解説します。

収入が生活保護費を上回った場合

収入が生活保護費を上回った場合は、生活保護受給者の状況により、生活保護の停止か廃止が検討されます。

1-生活保護の停止

生活保護受給者の収入状況が安定していない場合は、生活保護の停止が一般的です。通常、6ヶ月以内に再び生活保護が必要になる可能性があると予想されるケースが該当します。

2-生活保護の廃止

知活保護受給者の収入状況が安定しており、6ヶ月以内に生活保護が必要になる可能性が低い場合には、生活保護が廃止となります。また、6ヶ月の停止期間が安定した状況で推移した生活保護受給者も廃止が検討されます。

3-生活保護の再申請

生活保護の停止や廃止後に、再び収入が減少し生活保護が必要になった場合には、再申請が可能です。※1

②家族の収入の申告

生活保護費は世帯の収入で計算されるため、家族の収入についても申告が必要になります。未成年や世帯分離した家族の収入も含まれるため、常に収入を把握し忘れずに申告しましょう。※2

※1出典:厚生労働省「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて問18-3」参照:2024.05.24

※2奈良市「不正受給にならないために」参照:2024.05.24

5.生活保護のお悩みはリライフネットへ

リライフネットは、東京都が指定する居住支援法人が共同運営しています。東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県を対象に、生活保護や住居のお悩みを解決します。生活保護の申請手続きに不安がある場合や生活が困窮していて家賃が払えないなどのお悩みがある場合には、お気軽にご相談ください。

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