生活保護受給中には、守らなければならない規定があります。規定を守らない場合、生活保護が停止されるケースもあるため注意が必要です。今回は、生活保護受給中に、してはいけない事と許されている事を解説します。
1.生活保護の目的と受給条件

生活保護のルールの多くは、生活保護制度の目的と受給条件を基準としています。生活保護制度の目的に反する行為は基本的にルール違反となるため、生活保護制度を正しく理解しておくことが大切です。
①生活保護の目的
生活保護は、日本の国民の生活が困窮した場合に、健康で文化的な生活を守るために、国が最低限度の生活を保障するために定められた制度です。※1
具体的には、食品や日用品、衣服、住居(家賃)、医療、学習に必要な費用などを国が支給することで、日常生活と健康の維持、学習の機会が確保されます。また、現在は生活保護と就職支援事業が連携しており、就労や自立へ向けたサポートがあることも特徴です。※2
②最低生活費
「最低生活費」は、厚生労働省が定めた基準により算出されます。最低生活費の計算には、生活保護受給者の住所地で決まる「級地」、年齢や世帯の人員構成、介護、育児、医療費などの状況が考慮されています。
算出された最低生活費から、世帯の収入合計を差し引いた後の差額が、実際に受給できる生活保護費です。
生活保護受給中のお金にかかわる問題は、基本的に最低生活費を基準として判断されます。
③生活保護の条件
生活保護を受給するための条件は、厚生労働省によって以下の4つが示されています。
1-資産の活用
保有する資産をすべて活用しても最低生活費に足りない場合。(現在保有している預貯金、売却して現金に変えられる家や土地、貴金属などを活用することが求められます。)
2-能力の活用
介護や育児、ケガや病気などの理由や、能力を活用しても働くことができない場合。
(働くことが可能な場合は、自身の能力を活用して仕事を探し就労することが求められます。)
3-制度の活用
年金、給付金、貸し付けなど、他の制度を活用しても、最低生活費が確保できない場合。
4-扶養義務者の扶養
生活保護受給者の扶養義務者から援助が得られない場合。(DVや虐待など援助が期待できない場合も含みます。)※3
※1出典:厚生労働省「生活保護制度」参照:2024.07.02
※2出典:厚生労働省「生活保護受給者等への就職支援」参照:2024.07.02
※3出典:厚生労働省「扶養義務履行が期待できない者の判断基準の留意点等について」参照:2024.07.02
2.生活保護受給中でしてはいけないことは?

生活保護受給中にしてはいけない事は、以下の5つです。
①高価な所有物を持つこと
生活保護では、必要最低限のお金と物で暮らすことが条件です。例えば、通勤に使う衣服やバッグは、高価なブランド品ではなく、必要最低限の機能を備えている、一般的な価格の衣服やバッグを購入することが求められます。
ただし、大手メーカー品でもどのくらいまでであれば許容されるかなどは判断が難しいところもあると思いますので、事前にケースワーカーに相談して予算感などを訊いておくと良いでしょう。
②収入があったことを報告しない
生活保護受給中に収入があった場合は、速やかにケースワーカーや福祉事務所に報告することが義務付けられています。収入を報告しないことは、重大な規定違反となるため、必ず報告しましょう。収入を報告せずに、最低生活費以上の金額を受給することは、不正受給となります。※1
ポイント還元や購入商品のキャッシュバックなども収入として認定される場合があるため、判断に迷った場合には、ケースワーカーや福祉事務所に相談することをおすすめします。
③生活保護費を貯金する
生活保護費を受給しながら、貯金をすることは原則認められていません。しかし、使用目的が生活保護の目的に反しないと認められた場合に限り、少額の貯金が認められるケースがあります。※2
④生活保護費を借金の返済に使用する
生活保護費を借金の返済に使用することは認められません。
そのため借金の問題は、弁護士に依頼し自己破産手続きをすることが一般的です。生活保護受給中は、国が設立した「法テラス」を介して自己破産手続きをすることで、弁護士費用の支払いが猶予、または免除されます。
⑤ケースワーカーの指導や指示に従わない
生活保護受給中は、ケースワーカーや福祉事務所から、生活の維持や向上のための指示や指導があります。※3
指示や指導は強制ではありませんが、指示に従わないことで生活保護の目的や条件に反する場合、生活保護の停止や廃止が検討されます。
※1出典:さいたま市「生活保護費の不正受給防止対策に取り組んでいます」参照:2024.07.02
※2参考文献:荘村明彦(2023.10.30)「生活保護手帳」中央法規出版(p245)
※3参考文献:荘村明彦(2023.10.30)「生活保護手帳」中央法規出版(p17)
3.生活保護受給者が禁止事項に違反した場合はどうなる?

生活保護受給者が禁止されている行動をした場合、生活保護法(第62条)の規定によって生活保護の停止や廃止が検討されます。※1
具体的には以下のような流れで、最終的な判断が下されます。※2
①指導や指示
生活保護受給者に、生活保護制度の目的に反する行動があると判明した場合、福祉事務所やケースワーカーから、具体的な指示や指導があります。
②義務に違反した理由の弁明
指示や指導に従わない場合、福祉事務所によって廃止、停止の処分が行われますが、その際、生活保護受給者には、処分に対する弁明の機会が与えられます。
③生活保護の停止・廃止
弁明が正当な理由として認められない場合、生活保護が停止、または廃止されます。
※1出典:e-GOV「生活保護法」参照:2024.07.02
※2参考文献:荘村明彦(2023.10.30)「生活保護手帳」中央法規出版(pp44-45.)
4.生活保護の受給中に許される行為

生活保護受給中は厳しい規定がありますが、許容されていることもあります。また、生活を立て直すことを目的とする正当な理由がある場合には、各種申請で必要な扶助を受けることが可能です。
①理由のある貯金
原則、生活保護費の貯金は認められませんが、エアコンの修理費用など、具体的な理由がある場合は認められるケースがあります。
近い将来に出費が想定される場合は、先にケースワーカーに相談することもおすすめです。申請することで受け取れる扶助がある場合は、無理に貯金をせずにそちらを利用します。
②資格取得
就労のための資格取得は「生業扶助」の対象となるため、申請することで費用が受給できます。資格取得のためのテキスト代や授業料、授業を受けるための交通費、検定費用などが対象となっており、87,000円以内が基準額となります。※1
③スマホの所有
現在、スマホは重要な連絡手段であるため所有が認められています。安価な端末や毎月の回線代が低額に設定されているサービスであれば、使用が可能です。
④理由のある家や自動車の所有
持ち家に住み続けることで家賃がかからないケースや、公共交通機関のない地域での自動車などは、所有が認められる場合があります。
⑤仕事をする
生活保護受給中に仕事をすることは可能です。仕事による収入は随時速やかに福祉事務所に報告します。働く事で収入が増えると、収入認定された金額分が生活保護費から差し引かれますが、全額が収入認定されるのではなく、収入を得るための必要経費などは控除されます。※2
※1参考文献:荘村明彦(2023.10.30)「生活保護手帳」中央法規出版(p352)
※2参考文献:荘村明彦(2023.10.30)「生活保護手帳」中央法規出版(p370)
5.生活保護のご相談はリライフネットへ

今回は、生活保護受給中にしてはいけない事、許されている事についてご紹介しました。
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