生活保護受給中は健康保険や生命保険、勤務先の社会保険がどのように取り扱われるのか、気になっている人も多いのではないでしょうか。この記事では、生活保護を受給した場合の健康保険、生命保険の取り扱い、社会保険についてケース別に解説します。
1.生活保護受給中の健康保険
生活保護受給中は国民健康保険を脱退する関係で、保険証も返納するため使用することができません。そのため、医療機関の受診を中心にこれまでとは異なるプロセスとなります。
①国民健康保険・後期高齢者医療制度には加入できない
生活保護受給中は、医療扶助によって医療費が支給されるため、国民健康保険や後期高齢者医療制度を使用できなくなります。
医療扶助で医療費が支給されるため、国民健康保険や後期高齢者医療制度には加入できなくなります。生活保護を受給する際に加入している場合は、脱退の手続きを行います。
②医療扶助により医療費は全額カバーされる
生活保護受給者は、医療扶助が適用されます。医療扶助では医療費の全額が支給されるため、受給者の自己負担は基本的にありません。医療扶助の対象となるのは、すべての疾病であり、通院から入院、手術等の医療費全般に適用されます。また、医療機関への通院時の交通費も必要に応じて支給される場合があります。(※1)
③医療券・調剤券の発行が必要
医療扶助を受けるには、事前に担当ケースワーカーに受診の報告をし、医療券の発行を受ける必要があります。医療券は福祉事務所が医療の必要性を判断した上で発行され、指定医療機関でのみ使用できます。薬の処方を受ける場合は、別途調剤券が必要となり、指定薬局で使用します。ただし、夜間・休日の急病など緊急時は、事前の医療券発行が間に合わない場合があります。その場合は生活保護受給者証を提示することで受診が可能で、後日ケースワーカーに報告し、医療券を発行してもらう必要があります。(※2)
※1出典:厚生労働省「医療扶助に関する基礎資料集」p.9参照:2024.11.29
※2出典:厚生労働省「医療扶助に関する基礎資料集」p.10参照:2024.11.29
2.生活保護受給中の生命保険
生活保護受給中は、生命保険が資産に当たるため、新規加入はできないことが一般的です。
①原則として新規加入はできない
生活保護は最低限度の生活を保障する制度であるため、原則として生命保険への新規加入は認められません。これは保険料支払いが生活費を圧迫する可能性があるためです。生活保護の申請時には、既存の生命保険も原則として解約が求められ、解約返戻金は収入認定の対象となります。
②例外的に継続・加入可能な条件
以下のケースでは、生活保護受給中に生命保険が継続可能です。
1-掛け捨て型で保険料が最低生活費の1割程度以下
掛け捨て型の生命保険で、月々の保険料が最低生活費の1割程度以下である場合は、継続が認められる場合があります。これは葬祭費用などの将来的な支出に備えるための最低限の保障として認められています。ただし、保険料の支払いが生活に支障をきたさないことが条件となります。
2-解約返戻金が最低生活費3ヶ月分以下
解約返戻金が最低生活費の3ヶ月分以下の保険については、継続が認められる場合があります。これは解約返戻金が少額であり、解約しても大きな資産にならないためです。ただし、この場合も保険料の支払いが生活を圧迫しないことが前提条件となります。
③保険金受取時は収入申告が必要
生命保険金を受け取った場合は、速やかにケースワーカーに申告する必要があります。保険金は収入として認定され、生活保護費の算定に影響を与えます。申告を怠ると不正受給とみなされる可能性があるため、必ず報告することが求められます。また、受け取った保険金の使途についても福祉事務所に相談することが推奨されます。
3.生活保護受給中の社会保険
生活保護受給する際に、勤務先の社会保険に加入している人のケースについて説明します。
①会社員の場合は継続して加入可能
生活保護受給者であっても、被用者保険(社会保険)に加入している労働者は、保険から脱退する必要はありません。正社員として雇用されているケースでは、本人の意思に関係なく自動的に被保険者となります。事業主には資格取得の手続きを行う義務があり、給与の金額に関わらず加入することになります。例えば、最低賃金で雇用されている場合でも、不足分を生活保護で補填する形で継続加入が可能です。
②保険料は生活保護費に加算される
生活保護受給者であっても社会保険料の支払い義務は発生しますが、実質的な負担は生じません。これは保険料相当額が生活保護費に加算されて支給されるためです。また、40歳以上65歳未満の場合は介護保険料についても同様の扱いとなります。
ただし、医療保険に加入していない40歳以上65歳未満の方は介護保険の被保険者とはならないため、保険料の支払いは発生しません。65歳以上になった場合は、第1号被保険者となるため、保険料の支払いが必要になります。(※3)
③医療費の3割負担分は医療扶助でカバー
被用者保険(社会保険)に加入している生活保護受給者の場合、医療費の給付は以下のような仕組みになっています。まず医療費の7割は健康保険から給付され、残りの3割の自己負担分を医療扶助が補填します。これにより、実質的な自己負担は発生しません。医療機関では、勤務先の社会保険の保険証と医療券を併用することになります。
※3出典:いわき市「生活保護を受けている場合の保険料等の支払いについて」参照:2024.11.29
4.よくある質問(FAQ)
ここでは、生活保護受給中の保険に関する疑問について解説します。
①生活保護受給中に保険を解約しなかった場合はどうなりますか?
保険を解約せずに継続した場合、不正受給とみなされる可能性があります。保険金や解約返戻金を受け取っても申告しなかった場合、最悪の場合は告訴され、裁判に発展する可能性があることにも注意しましょう。保険金の受け取り拒否をしても不正受給と判断されることがあるため、必ず福祉事務所に相談する必要があります。
②生活保護受給中に医療費以外の保険は必要ですか?
基本的に医療費以外の保険は必要ありません。生活保護では医療扶助により医療費が全額カバーされ、葬祭費用なども支給されるため、保険に加入するメリットは少なくなります。ただし、特定の条件下では保険の継続が認められる場合もあるため、気になることや疑問点は個別にケースワーカーへ相談しましょう。
③生活保護受給中に傷害保険に加入できますか?
傷害保険も原則として新規加入は認められません。ただし、以下の条件を満たす場合は例外的に認められる可能性があります。
- 掛け捨て型で保険料が最低生活費の1割程度以下である場合
- 解約返戻金が最低生活費の3ヶ月分以下である場合
保険への加入を検討する場合は、事前に福祉事務所に相談し、承認を得る必要があります。
5.生活保護のご相談はリライフネットへ
今回は、生活保護受給中の保険の取り扱いについて解説しました。
リライフネットでは関東一都三県を対象にマンション、アパート、個室型シェアハウスなどの住居提供を行っております。家を失いそうな方、ネットカフェ生活をされている方、ホームレスの方へも迅速な住居提供が可能です。
生活保護の申請のサポート、生活保護の受給に必要となる住居の確保等、お気軽にご相談ください。リライフネットでは完全無料で相談が可能です。
ご相談はこちらから