親が生活保護を受給する場合、子には経済的にどのような影響があるのか、気になっている人も多いのではないでしょうか。この記事では、生活保護を受給する親の扶養照会があった人や世帯分離の可能性を考えている人に向け、生活保護の仕組みを解説します。
1.親が生活保護を受給する際の子への影響
ここでは、親が生活保護を受給する場合の、子への影響を解説します。
①子の収入や資産への影響
親が生活保護を申請する場合、子には以下のような経済的な影響があります。
1-同一世帯の場合
生活保護は世帯単位で適用されるため、同一世帯の子の収入や資産も審査の対象となります。子の収入が最低生活費を上回る場合、世帯として生活保護を受給することができない可能性が高くなります。また、子の収入は全て福祉事務所への申告が必要となり、その収入に応じて生活保護費が調整されます。
2-別世帯の場合
親と別世帯を構成している成人した子の場合、収入や資産への直接的な影響はありません。別世帯の子の収入を申告する必要はなく、貯金額などの調査対象にもなりません。
②別世帯の場合は扶養照会の可能性が高い
別世帯の場合、福祉事務所は生活保護法に基づき、親族(扶養義務者)に対して扶養照会を行う場合があります。この際、扶養能力を確認するために子の収入や資産状況が調査されることがあります。ただし、これは親に対する扶養義務を確認する手続きであり、子の収入や資産が生活保護費に直接影響することはありません。
③援助した場合の生活保護費への影響
親族からの援助は生活保護制度において以下のように扱われます。
1-援助金の取り扱い
子が親に援助を行った場合、その援助額は収入認定の対象となり、生活保護費から援助額分が減額されます。例えば、月額13万円の生活保護費を受給している場合に、子から2万円の援助があれば、生活保護費は11万円に減額されます。
2-扶養義務の考え方
生活保護制度では「扶養義務者の扶養は保護に優先する」という原則がありますが、子の扶養義務は生活扶助義務であり、自身の生活を維持できる余力がある場合にのみ扶養の義務が生じます。そのため、子は自身の生活に支障が出るような援助を強制されることはありません。
なお、援助を行う場合は必ず福祉事務所への申告が必要で、申告せずに援助を行った場合は不正受給となる可能性があります。
2.生活保護の扶養照会の仕組みと範囲
親と別居している場合、親が生活保護を受給する際に、子への扶養照会が行われる可能性が高くなります。
①扶養照会とは
扶養照会は、生活保護の申請者に対して、親族の中で扶養(支援)できる人がいないか調べる制度です。申請者が生活保護を申請した福祉事務所から親族へ書面で問合せが行われます。
②生活保護の扶養照会の範囲
生活保護の申請者に対する扶養照会は、3親等までの親族が対象となります。具体的には、1親等として両親と子(配偶者は含まれない)、2親等として祖父母、孫、兄弟姉妹、3親等として叔父・叔母、甥・姪が含まれます。これらの親族は「絶対的扶養義務者」として位置づけられており、生活保護申請があった場合は原則として扶養照会の対象となります。
③生活保護の扶養照会の回答義務
扶養照会に対する回答義務はありません。届いた扶養照会を無視しても罰則はなく、無視した場合は扶養の意思がないと判断されます。年収や資産状況などのデリケートな個人情報については、書ける部分だけ記入して返信することも可能です。ただし、扶養する意思がない場合は、その旨を記載して返信する方が福祉事務所での判断がスムーズになります。
④生活保護の扶養照会をしないケース
扶養義務者が以下の条件に該当する場合は、扶養照会が行われない場合があります。
- 70歳以上の高齢者
- 10年程度音信不通の者
- 借金や相続などで著しく関係が悪い者
- 過去に虐待やDVが問題になった者
⑤扶養照会を拒否できるケース
また、経済的に扶養できる状況でも申請者との関係性が破綻している場合や、支援することで自身の生活維持が困難になる場合は、扶養を拒否することが可能です。
3.生活保護の世帯分離とは
生活保護制度では、原則として同じ住居で生計を共にしている人々を「世帯」として扱います。一世帯単位で収入や資産が合算され、生活保護費が決定されます。そのため、たとえば親と同居している成人の子どもは、基本的に同一世帯として扱われ、子どもの収入や資産も審査対象になります。
①世帯分離とは何か
生活保護の世帯分離とは、同一世帯の中で生活保護を受ける人と受けない人を分けることができる制度です。通常、生活保護は世帯単位で適用されますが、特定の条件下では世帯の一部の人だけが生活保護を受給することが可能となります。
例えば、要介護の親と同居する子の世帯が、親のみを世帯分離して生活保護を受給するなどが可能です。
②世帯分離に該当するケース
以下のような場合には、世帯分離が認められることがあります。家族構成や世帯の状況によっては、世帯分離をしないで、世帯全体で生活保護を受けた方が負担が少ないケースもあるため、慎重に判断しましょう。
1-物理的に別居している場合
家族が別々の住居に住んでおり、それぞれ生計を立てている場合を指します。
例えば、高齢の親が施設に入所しており、子どもと別居している場合が該当します。
厚生労働省の生活保護制度では、世帯の認定は原則として同一の住居に居住し、生計を一にしている者としています。別居している場合、世帯分離の可能性が高くなりますが、個々の事情に応じて判断されます。
2-生活実態が異なる場合
同じ住居に住んでいるケースで、収入や支出を完全に分けている場合です。
例えば、経済的に独立した成人が同居しているが、親の扶養をしていないケースが該当します。
厚生労働省の指針では、同一の住居に居住していても、明らかに生計を異にしていると認められる場合は、別世帯として認定することができるとしています。ただし、実態の確認が必要です。
3-特殊な事情がある場合
DV(ドメスティックバイオレンス)などの理由で、実質的に扶養や援助が期待できない場合です。
長期間の不和や疎遠があり、扶養義務を果たすことが現実的でない場合が該当します。
厚生労働省は、DVや虐待等の事情がある場合、被害者の安全確保の観点から世帯分離を認めています。また、長期間の絶縁状態など、扶養の期待可能性が低い場合も考慮されます。
4-施設入所や医療機関への長期入院
高齢者施設や病院に長期入所している場合、その人は世帯分離が可能です。
厚生労働省の通知によると、介護保険施設等への入所や病院等への入院により、居住を異にすることとなった場合、世帯分離を行うことができるとされています。ただし、一時的な入院等の場合は除外されます。
施設の長期入所や長期入院の具体的な目安として、以下のケースが厚生労働省から示されています。※1
- 6ヶ月以上の入院または入所を要する患者で、出身世帯員との間に生活保持義務関係がない場合
- 入院・入所期間が1年を超え、かつ引き続き長期間の入院・入所を要する場合
- 救護施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、介護老人福祉施設、障害者支援施設(重度障害で長期化が見込まれる場合)への入所者
また、世帯分離後の入院・入所期間がおおむね5年以上にわたり、今後も長期間継続する見込みがある場合は、出身世帯と完全に別世帯とみなすことも可能とされています。
※1出典:厚生労働省「生活保護法による保護の実施要領について」(5)参照:2024.11.30
4.生活保護のご相談はリライフネットへ
生活保護を親が受給する場合、子にどのような影響があるのかについて解説しました。子は親の扶養義務者となるため、基本的には扶養照会が行われます。また、状況によっては世帯分離が可能ですが、世帯分離をするかどうかは慎重に相談し、総合的な負担が少ない方を選択することが大切です。
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