生活保護を受給した場合、国民健康保険は返納し、医療扶助を利用することになります。国民健康保険と医療扶助に、どのような違いがあるのか、疑問に思っている人も多いのではないでしょうか。この記事では、医療扶助と国民健康保険の違いについて解説します。
1.生活保護受給中の国民健康保険の資格はどうなるのか
生活保護を受給する場合、国民健康保険の資格は喪失します。
①国民健康保険の資格喪失
生活保護を受給すると、国民健康保険の被保険者から除外され、保険証を返納する必要があります。これは、生活保護受給者は保険料の支払いが免除されるため、保険料支払い義務が生じる国民健康保険には加入できないためです。生活保護開始日をもって国民健康保険の資格は自動的に喪失となり、福祉事務所を通じて市区町村の国民健康保険窓口に保険証を返納することになります。
②医療費の取り扱い
国民健康保険に代わり、以下の対応がなされます。
- 医療扶助が適用され、医療費は全額が公費負担となります
- 受診時は福祉事務所で発行される「診療依頼書」を医療機関に提出します
医療扶助では、通常の保険診療と同様の医療サービスを受けることができ、入院費用や薬剤費、検査費用なども含めて全額が公費で賄われます。ただし、受診前に福祉事務所への申請が必要となります。
③健康保険(社会保険)との違い
一方、会社員などが加入する健康保険(社会保険)の場合は異なります。
- 生活保護受給中でも資格を失わず、継続して加入できます
- 医療費は医療扶助から支給され、無料で医療を受けることができます
これは、健康保険が雇用関係に基づく制度であり、生活保護受給の有無にかかわらず、就労している限り加入が継続されるためです。ただし、医療費の自己負担分については医療扶助で補填されます。
2.生活保護制度の医療扶助とは
生活保護制度の一環として提供される医療扶助は、経済的に困窮している人々が必要な医療サービスを受けられるようにするための支援制度です。医療扶助は、病気や怪我の治療、薬の処方、入院や手術など、多岐にわたる医療費をカバーします。この支援により、受給者は安心して医療を受けることができ、健康を保つことができます。
①医療扶助の範囲
医療扶助は以下の6つの範囲で実施されます。※1
- 診察
- 薬剤または治療材料
- 医学的処置、手術およびその他の治療・施術
- 居宅における療養上の管理とその療養に伴う世話その他の看護
- 病院または診療所への入院とその療養に伴う世話その他の看護
- 移送
②給付の特徴
医療扶助は原則として現物給付で行われ、生活保護法の指定を受けた医療機関等に委託して実施されます。指定医療機関の診療方針および診療報酬は、国民健康保険の例に準じています。
③医療費の負担
生活保護受給者は国民健康保険の被保険者から除外されているため、ほとんどの受給者の医療費は全額が医療扶助で負担されます。ただし、障害者総合支援法等の公費負担医療が適用される場合や、被用者保険の被保険者または被扶養者である場合は、各制度で給付されない部分が医療扶助の対象となります。
※1出典:厚生労働省「健康管理支援事業及び医療扶助について」p.2参照:2024.11.30
3.生活保護の医療扶助を使用する場合の流れ
国民健康保険の場合は、医療機関に保険証を提出するだけですが、医療扶助の場合は、手続きの流れに違いがあります。ここでは、医療扶助と国民健康保険の利用方法の違いについて解説します。
①医療扶助の利用手順と流れ
医療扶助を利用する際の具体的な流れは以下の通りです。
1-申請から受診まで
生活保護受給中に医療機関を利用する際は、最初に福祉事務所やケースワーカーに相談します。※2
- 被保護者が福祉事務所に医療扶助の申請を行う
- 福祉事務所から要否意見書用紙が交付される
- 医療機関で要否意見書を作成
- 医療機関から福祉事務所へ要否意見書が提出される
- 福祉事務所から医療券が交付される
- 医療機関に医療券を提出して受診
緊急の場合は、医療扶助証で受診が可能です。
2-薬局での調剤の場合
- 医療機関での診察後、処方箋と調剤券を薬局に提出
- 薬局で調剤を受ける
②医療扶助の特徴
医療扶助には以下のような特徴があります。
1-給付の方法
医療扶助は、原則として現物給付で行われ、生活保護法の指定を受けた医療機関等に委託して実施されます。
2-診療内容
診療方針や診療報酬は国民健康保険の例に準じています。医療費は全額が医療扶助で負担されます。
※2出典:厚生労働省「健康管理支援事業及び医療扶助について」p.3参照:2024.11.30
4.生活保護廃止後の国民健康保険への再加入方法
生活保護廃止後の国民健康保険への再加入について、以下のように手続きを進める必要があります。※1
①再加入の基本的な流れ
生活保護が廃止された場合、国民健康保険の手続きを行います。手続きには期限があるため、できる限り早めに手続きしておくことが大切です。
- 生活保護廃止後14日以内に手続きを行う
- 住所地の市区町村の窓口で国民健康保険の加入手続きをする
期限内に手続きを行うことで、医療保険の空白期間が生じることを防ぐことができます。また、生活保護廃止日の翌日から国民健康保険の資格を取得することができるため、継続的な医療サービスの利用が可能となります。特に持病がある方や定期的な通院が必要な方は、切れ目のない医療保障のために速やかな手続きが重要です。
②必要な書類
国民健康保険への再加入には、以下の書類が必要です。
- 生活保護廃止決定通知書
- 本人確認書類
- その他市区町村が指定する書類
書類準備の際は、生活保護廃止決定通知書の原本が必要となります。また、本人確認書類は運転免許証やマイナンバーカードなど、顔写真付きの身分証明書が望ましいとされています。市区町村によっては、所得証明書や年金手帳なども必要となる場合があるため、事前に確認することをお勧めします。
③保険料の取り扱い
生活保護期間中の国民健康保険料については以下のようになります。
- 生活保護受給期間中の保険料は発生しません
- 生活保護廃止決定通知書の提出により、保険料の未納期間が生活保護受給期間であったことを証明します
保険料の算定は世帯の所得に基づいて行われます。生活保護廃止後の収入見込みに応じて保険料が決定されますが、所得が低い場合は保険料の軽減制度を利用できる場合があります。また、分割納付などの支払い方法についても相談可能です。
④注意事項
国民健康保険へ再加入する際は、以下の点に注意が必要です。
- 手続きが遅れると、医療機関での受診に支障が出る可能性があります
- 社会保険に加入する予定がある場合は、その旨を窓口で申し出る必要があります
- 再加入手続きについては、事前にケースワーカーに相談することが推奨されます
就職が決まっている場合や扶養家族となる予定がある場合は、国民健康保険への加入が不要となる可能性があります。このような場合は、市区町村の窓口で状況を説明し、適切な手続きについて相談することが重要です。また、世帯の状況によっては各種減免制度が利用できる場合もあるため、併せて確認することをお勧めします。
※3出典:厚生労働省「国民健康保険の加入・脱退について」参照:2024.11.30
5.生活保護のご相談はリライフネットへ
今回は、生活保護を受給した場合の国民健康保険の取り扱いと医療扶助について解説しました。
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