生活保護受給中に働くことは可能なのか、働いた場合生活保護費が減るのではないか、などが気になる方も多いのではないでしょうか。生活保護受給中に働く場合、勤労控除、収入認定などの仕組みを正しく理解しておくことが重要です。この記事では、収入認定の仕組みや、勤労控除について詳しく解説します。
1.生活保護を働きながら受給することはできる?
生活保護制度において、就労による自立は重要な目標の一つとして位置づけられており、健康状態や年齢などの条件が整えば、積極的な就労活動が推奨されています。
働いて得た収入は生活保護費から差し引かれますが、全額が差し引かれるわけではありません。就労意欲を促進するため、「勤労控除」という制度が設けられています。例えば、月収15,000円未満の場合は収入と同額が控除され、収入が増えるにつれて段階的に控除額が設定されています。
就労収入がある場合、その収入は「就労収入」として認定され、生活保護の支給額に直接影響を与えます。就労収入の計算では、まず総収入(基本給、時間外手当、交通費など)を計算し、就労に伴う必要経費(交通費、労働関連費用)を控除し、さらに就労奨励のための特別控除が適用されます。
なお、収入については必ず福祉事務所への報告が必要です。この申告を怠ると不正受給となり、返還を求められる可能性があるため、正確な収入報告が重要です。
生活保護を受給しながら働く場合は、収入の報告、収入から控除される項目について、正しい知識を持つことが重要です。
2.生活保護受給中に働く場合の流れ
生活保護受給中に働く場合は、最初にケースワーカーに相談しましょう。就職後は、以下の流れで報告などの手続きを行います。
①収入の報告義務
すべての収入をケースワーカーや福祉事務所に速やかに報告する必要があります。給与明細など収入を証明する書類を必ず提出しなければなりません。この報告を怠ると不正受給とみなされる可能性があります。
②収入認定の計算方法
収入認定額は以下の計算式で算出されます
過去3ヶ月間の平均収入 - 勤労控除 - 実費控除 = 収入認定額
③勤労控除制度の適用
勤労控除制度は、勤労によって得た収入が一定額に達した場合にその一部を控除することで、生活を支援する制度です。
この制度では、世帯の収入額および収入がある人数(世帯における1人目・2人目)に応じて控除額が異なります。
控除の対象金額は、必要最低限の生活費(例:家賃や食費)を考慮しながら調整されます。
勤労控除は収入に応じて段階的に設定されています。※1
- 15,000円未満:収入と同額
- 15,001円~15,199円
世帯の1人目15,001円~15,199円
世帯の2人目15,000円 - 15,200円~18,999円
世帯の1人目15,200円
世帯の2人目15,000円 - 19,000円~22,999円
世帯の1人目15,600円
世帯の2人目15,000円
④生活保護費の調整
収入認定額に基づき、翌月の生活保護費が調整されます。ただし、働いた分が全額差し引かれるわけではなく、勤労控除により実質的な収入増が見込めます。
⑤就労支援制度の活用
就労開始後も以下の支援を受けることができます。
- 職業訓練やキャリアカウンセリング
- 一定期間の生活支援費の継続
- 就労に必要な費用の支援
※1参考文献:荘村明彦(2023.10.30)『生活保護手帳2023年度版』中央法規出版p.398
3.生活保護受給中の収入認定制度とは
生活保護受給中の収入認定制度は、世帯の収入を正確に把握し、適切な保護費を算定するための仕組みです。
収入認定は月額で行われ、収入が確実に推定できる場合はその額を、そうでない場合は前3ヶ月間程度の収入額を標準として定められます。
認定の対象となる収入
認定対象となる収入は、以下のものが含まれます。
- 就労による収入(基本給、勤務地手当、家族手当、超過勤務手当等)
- 社会保障給付(年金等)
- 親族からの援助
- 資産の売却収入
就労収入の場合、以下の必要経費が控除されます。
- 社会保険料
- 所得税
- 労働組合費
- 通勤費等の実費
収入認定の手続きとして、以下の場合に申告が必要です。
- 保護の開始または変更申請時
- 定期または随時の認定時
- 世帯の収入に変動があった、または予想されるとき
収入に関する申告は、収入を得る関係先、収入の有無、程度、内訳等について行い、必要に応じて証明資料の提出が求められます。
4.生活保護の勤労控除とは
生活保護の勤労控除は、受給者の就労意欲を促進し、自立を支援するための制度です。就労によって得た収入から一定額を控除し、その分を手元に残すことができる仕組みとなっています。この制度により、働くことで実質的な収入増が見込め、自立への意欲を高めることができます。
①勤労控除の種類
勤労控除には、以下の控除があります。※2
1-基礎控除
基礎控除は最も基本的な控除制度で、就労に伴う日常的な経費に対応するものです。地域区分によって金額が異なり、収入に応じて段階的に設定されています。
- 月額上限33,190円(1級地)
- 収入8,000円までは全額控除
- 被服費、知識・教養向上費用、職場交際費等の経常的経費を補填
2-特別控除
特別控除は年間を通じての臨時的な出費に対応するための制度です。年末調整のような形で計算され、基礎控除とは別に適用されます。
- 年間勤労収入の1割(上限年額150,900円/1級地)
- 年間の臨時的な経費に対応
3-新規就労控除
就労開始時の初期費用や環境整備のための支出に対応する制度で、就労への第一歩を支援する役割があります。
- 月額10,300円(各級地共通)
- 新たに継続的な職業に就いた場合の6ヶ月間適用
4-未成年者控除
若年層の就労を特に支援するための制度で、教育費や将来への投資としての支出を考慮して設定されています。
- 月額11,600円(各級地共通)
- 20歳未満の就労者に適用
②控除の目的
この制度には就労に伴う必要経費の補填と就労意欲の増進、自立の助長を目的としています。控除制度は単なる経費補填だけでなく、働くことで生活の質を向上させられる実感を持てるよう設計されています。これにより、受給者の自立に向けた意欲を高める効果が期待されています。
※2出典:厚生労働省「生活保護制度における勤労控除等について」p.3参照:2024.11.30
5.収入申告の義務と手続き
生活保護受給者には、以下の場合に収入申告が義務付けられています。収入申告は生活保護制度の適正な運営のための基本的な手続きであり、受給者の権利と義務の両面から重要な意味を持ちます。
①申告が必要な時期
収入申告が必要となる主なタイミングは以下の通りです。
- 保護の開始または変更申請時
- 実施機関による定期または随時の認定時
- 世帯の収入に変動があった、または予想されるとき
収入の変動は速やかに申告する必要があり、変動が予測される場合も事前に相談することが推奨されています。
②申告の内容と方法
収入申告では、以下の事項を明確にする必要があります。
- 収入を得る関係先
- 収入の有無
- 収入の程度
- 収入の内訳
申告書類には給与明細書や振込通知書などの客観的な証明資料を添付し、収入の実態を正確に示す必要があります。
③収入認定の調査
福祉事務所は申告内容について、以下の項目を綿密に調査します。
- 預金、現金、動産、不動産等の資産状況
- 世帯員の生活歴、技能、稼働能力
- 社会保険その他社会保障的施策による受給資格
- 扶養義務者からの援助状況
- 世帯における金銭収入全般
この調査は受給者の自立支援に向けた適切な援助を行うために必要な過程として位置づけられています。
④収入認定の期間
収入の認定は月額で行われ、以下のいずれかの方法で算定されます。
- 収入が確実に推定できる場合は、その額
- 不確実な場合は、前3ヶ月間程度の収入額を標準
- 長期観察が必要な場合は、観察期間の結果に基づく
収入認定の期間設定は、世帯の生活実態に即した適切な保護費算定のために重要な要素となっています。収入申告を怠ったり虚偽の申告を行った場合は不正受給となり、法的措置の対象となる可能性があります。このため、不明な点がある場合は必ずケースワーカーに相談することが重要です。
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今回は、働きながら生活保護は受給できるのか、働く場合はどのような流れになるのかについて解説しました。
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