生活保護を受けている方が亡くなった場合、葬儀費用の負担に不安を感じる方も多いのではないでしょうか。実は「葬祭扶助」という制度を利用すれば、経済的負担を軽減しながら尊厳ある葬儀を行うことができます。本記事では、生活保護受給者の葬儀に関する費用負担の仕組みや葬祭扶助の申請方法、自治体ごとの支援制度の違いについて詳しく解説していきます。

1.生活保護受給者の葬儀費用は誰が負担する?

生活保護を受給している方が亡くなった場合、葬儀費用の負担は大きな問題となるでしょう。一般的な葬儀では100〜200万円程度の費用がかかると言われており、経済的に困窮している状況では、このような高額な費用を捻出することは難しいものです。

こうした状況に対応するため、「葬祭扶助制度」が設けられています。この制度は、生活保護受給者が亡くなり、親族や関係者が葬儀を行うことが困難な場合に利用できる支援制度です。葬祭扶助を申請することで、最低限の葬儀に必要な費用が自治体から支給され、ご遺族にできる限り金銭的負担がかからない状態で葬儀を執り行うことが可能になります。

2.葬祭扶助制度の受給対象

葬祭扶助の申請が認められるためには、いくつかの条件を満たす必要があります。

①亡くなった方自身が生活保護を受けていた場合

これは葬祭扶助の中でも最も基本的なケースです。生活保護の受給者が亡くなると、その方には経済的な余裕がなかったという前提があるため、福祉事務所は原則として葬祭扶助を出します。

葬儀を執り行う人(家族や知人など)が費用を立て替える形になりますが、必要な手続きが済めば、国の定める上限額の範囲で支給されます。

「生活保護を受けていた」という事実だけで、葬祭扶助の対象として判断されやすく、申請も比較的スムーズです。

②亡くなった方の身寄りがない

こちらは少し判断が複雑になりますが、以下のようなケースが該当します。

●亡くなった人が一人暮らしで、家族もいない or 疎遠で連絡がつかない。
●友人や施設の職員が葬儀を手配しようとしているが、自費では負担できない。
●遺族はいるけれど、誰も費用を出せないような困窮状態にある(低所得、生活保護受給者など)。

このようなケースでは、葬儀をしなければ火葬もできないため、必要最低限の内容で葬祭扶助が認められることがあります。

ただしこの場合は、「扶助が必要な状況である」ことを証明する必要があります。たとえば、葬祭をする人の収入状況や、他に費用を負担できる親族がいないことなど、具体的に説明・書類提出が求められることもあります。

③葬儀を執り行う人(葬祭執行者)が生活に困っている場合

「葬祭扶助」は、亡くなった人だけでなく、実際に葬儀をする人(葬祭執行者)の経済状況も重要なポイントです。

●親が亡くなったけれど、自分自身が非正規雇用で収入が少なく、葬儀費用が払えない。
●生活保護は受けていないが、貯金もなくて急な出費に耐えられない。
●高齢で年金暮らしの中、親族の葬儀を出すことになり困っている。

こうしたケースでは、「生活保護の受給者ではないけれど、葬儀を出すのは現実的に困難である」と判断されれば、扶助の対象になることもあります。

ただしこの場合も、福祉事務所の判断がカギです。「親族である以上、出せる範囲でやってください」とされることもあるため、あくまで『生活に困っていること』を説明し、必要に応じて通帳や収入証明などを見せることになる場合があります。

3.葬祭扶助の受給金額

葬祭扶助制度は全国共通の仕組みですが、地域によって支給額や条件に違いがあります。ここでは自治体間での主な相違点を解説します。

①生活保護の受給額を決める地域区分とは

生活保護の基準額・受給額は地域によって差があります。これはその地域の物価や生活費の違いを反映させて、全国をいくつかの「級地」という区分に分けて生活扶助の基準額を変えているのです。

葬祭扶助の受給額もこの基準額に則って額が決められます。

②等級ごとの受給額とまかなえる葬儀の内容

葬祭扶助の受給額は地域ごとに設定された「級地」によって異なることは解説しましたが、実際にいくらくらい支給されるのでしょうか。

基準額は1級地及び2級地では大人215,000円以内、小人172,000円以内、3級地では大人188,100円以内、小人150,500円以内が基準となります。※1

この支給額で賄える葬儀は「直葬」と呼ばれる形式で、通夜や告別式は含まれていません。火葬のみを行う簡素なもので、基本的な内訳としては、火葬料、棺、ドライアイス、搬送費、骨壺などが含まれています。よって盛大な式や会場費用、会食などは含まれません。

葬儀社によって料金体系が異なりますが、民間の火葬場より自治体運営の火葬場の方が費用が安い傾向にあります。支給基準額内で収めるためには自治体運営の葬儀場の利用を検討してください。

葬祭扶助を利用する場合は、事前に葬儀社に生活保護受給者であることを伝え、支給額内で対応可能かどうか確認することが重要なポイントです。生活保護受給者向けのプランを用意している葬儀社もありますので、まずは福祉事務所で相談してみてください。

※1出典:2024(令和6)年4月1日施行 生活保護実施要領https://www.mhlw.go.jp/content/001222612.pdf 

4.葬祭扶助の申請手続きと期限

葬祭扶助を受けるためには適切な申請手続きが必要です。ここでは申請の流れと必要書類について詳しく解説します。

葬祭扶助の申請は、原則として葬儀を行う前に行うことが大切なポイントです。申請先は故人または申請者の住所地を管轄する福祉事務所の生活保護担当窓口となります。まずは電話で相談し、担当者の指示に従って手続きを進めていくといいでしょう。

申請に必要な書類はいくつかあります。葬祭扶助申請書(窓口で入手可能)、死亡診断書または死体検案書のコピー、申請者の身分証明書(運転免許証、マイナンバーカードなど)が必要になります。また、申請者と故人の関係を証明する書類(戸籍謄本など)、葬儀社の見積書または請求書、申請者の預金通帳(支給金の振込先)、印鑑(認印可)なども忘れずに準備しておきましょう。

支給が決まると、葬儀を行った方(施主)に対して「実費分の葬祭費用」が支給されます。多くの場合は現金で支給されるというより、葬儀社への直接支払いになるケースが多いです。葬儀社への直接支払いの場合は、申請者の自己負担はありません。もし申請者への振込になった場合は、一度葬儀費用を立て替え、後日支給を受ける形になります。

申請が却下された場合は、その理由について説明を求め、必要に応じて再申請することも可能です。不明点があれば、担当窓口に相談してみてください。

申請期限は原則として「葬儀の前、または直後」という決まりがあります。多くの自治体では「葬儀の翌日から2年以内」と設定されていますが、一部の小規模自治体では1年以内に設定されているケースもあるので注意が必要です。

自治体によって多少柔軟に対応してもらえるケースもありますが、葬儀が終わって時間が経ってから申請すると、「事後申請」として認められないケースがあるので注意が必要です。

5.まとめ

本記事では、生活保護受給者の葬儀に関する重要な情報を解説してきました。葬祭扶助制度を活用することで、経済的負担を軽減しながら尊厳ある葬儀を執り行うことが可能となります。申請の際は事前手続きが必須であり、自治体によって支給額や条件が異なる点に注意が必要です。葬儀費用を抑えるためには、直葬や家族葬といった選択肢も検討しましょう。

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