日本社会では見えにくい問題の一つが「生活困窮」です。失業や病気、家庭環境の変化など、さまざまな要因で経済的に追い詰められる人々がいます。本記事では、「生活困窮者」とはどのような人を指すのか、またどのような支援制度が存在するのかをわかりやすく解説します。

1.生活困窮者とは何か?

①法律上の定義と厚生労働省の見解

「生活困窮者」とは、収入が不十分で、日常生活を安定して送ることが難しい人を指します。厚生労働省では、「最低限度の生活を維持することが困難な状態」にある人々を生活困窮者と定義し、「生活困窮者自立支援制度」の対象としています。この制度は、生活保護に至る前の段階で支援を行い、自立を促すことを目的としています。

②「貧困」との違いと重なり

生活困窮と貧困はしばしば混同されがちですが、厳密には異なります。貧困は主に経済的な状態を表す一方、生活困窮は生活そのものが成り立たない状況を指します。つまり、生活困窮は貧困を含みつつ、就労の有無、住居の不安定さ、家庭内問題、社会的孤立など、複合的な困難を伴うことが多いのです。

③誰でもなり得る?生活困窮の実態

かつては「特別な事情のある人が対象」と思われていた生活困窮ですが、現在では誰にでも起こり得る身近な問題となっています。非正規雇用の増加、コロナ禍による経済的打撃、突然の病気や離職、家庭の事情など、様々な理由で生活の基盤を失う人が後を絶ちません。そうした中で、行政や民間団体による早期支援の重要性が高まっています。

2.生活困窮に陥る原因とは?

①失業・収入減少による経済的困難

生活困窮の最も一般的な原因の一つが、失業や収入の減少です。景気の悪化や企業のリストラ、非正規雇用の不安定さなどが要因となり、安定した収入が得られなくなると、生活費や家賃、公共料金の支払いが困難になります。特に単身者や子育て世帯では、突然の収入途絶が生活基盤を大きく揺るがすリスクを伴います。

②病気や障がいによる就労困難

病気や障がいによって働くことができなくなり、生活困窮に陥るケースも少なくありません。精神的な不調や慢性的な疾患は、外見からは分かりにくいため周囲の理解が得られにくく、孤立を深めやすい傾向があります。また、病気の治療費がかさむ一方で収入がない、もしくは減少してしまうことから、経済的にも深刻な状況に陥る人が増えています。

③家庭環境・DV・ひとり親世帯の影響

家庭内の問題も生活困窮の大きな引き金になります。特に、配偶者からの暴力(DV)やモラハラを受けている人が家を出た場合、住居・収入・子どもの生活など多くの面で困難が生じます。ひとり親世帯もまた、育児と仕事を両立するハードルが高く、非正規雇用になりがちであるため、安定した収入を得にくい現実があります。このような背景から、女性や子どもが生活困窮のリスクを抱えやすい社会構造になっていることも問題視されています。

3.生活困窮者自立支援制度の内容

①自立相談支援事業とは?

生活困窮者自立支援制度の中心となるのが「自立相談支援事業」です。この事業では、困窮状態にある人が抱える課題に応じて、相談支援員が一緒に生活再建のプランを立て、必要な制度やサービスにつなげていきます。相談内容は就労、住まい、健康、家計管理など多岐にわたっており、「どこに相談してよいかわからない」という段階から対応可能です。支援は無料で、全国の市区町村で実施されています。

②住居確保給付金の支援内容

仕事を失い、住居を失うおそれがある人には「住居確保給付金」が支給される場合があります。この制度では、一定の条件を満たすことで、原則3か月(最長9か月間)、家賃相当額が自治体から大家や不動産会社に直接支払われます。失業だけでなく、シフト減などによる収入減少も対象となることがあり、コロナ禍をきっかけに利用者が大幅に増加しました。

③就労準備支援や学習支援も

生活困窮からの脱却には、就労支援も重要です。自立支援制度の中には、「就労準備支援事業」があり、すぐに働くことが難しい人に対して、生活リズムの整え方や職業訓練などを通じたステップアップを支援しています。さらに、子どもを対象とした「学習支援事業」では、家庭の経済状況によって教育機会が制限されないよう、学習の場や進学支援を提供しています。

4.生活保護とは?制度の概要と活用法

①生活保護の基本理念と目的

生活保護は、憲法第25条に基づき、すべての国民に「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するための制度です。経済的に自立が難しい人に対して、国と自治体が必要な援助を行う仕組みであり、単なる「お金の支給」だけでなく、自立に向けた支援もセットになっています。誰でも困窮すれば申請できる権利があり、決して恥ずべきものではありません。

②支給される8つの扶助の内容

生活保護には、状況に応じて以下の8つの扶助があります。

  • 生活扶助:食費や日用品など、日常生活に必要な費用
  • 住宅扶助:家賃や地代などの住居に関する費用
  • 教育扶助:義務教育を受ける子どもの学用品費など
  • 医療扶助:診察・治療・薬代など医療にかかる費用
  • 介護扶助:介護サービスの利用に必要な費用
  • 出産扶助:出産に伴う医療費や入院費
  • 生業扶助:就職に必要な技能習得費や学費
  • 葬祭扶助:やむを得ず死亡した場合の葬祭費用

これらは申請者の状況に応じて組み合わせて支給されます。すべての人に全ての扶助が適用されるわけではなく、個別に判断される点に注意が必要です。

③申請の流れと利用時の注意点

生活保護の申請は、市区町村の福祉事務所で行います。申請にあたっては、収入や資産、扶養関係などの確認があります。申請が受理されると、ケースワーカーが生活状況を把握し、支援方針を決定します。また、働ける能力があると判断された場合には、就労支援が並行して行われます。なお、資産が一定以上ある場合や、親族からの扶養が現実的に可能な場合は、生活保護の対象外になることもあります。

5.困ったときの相談先と支援の受け方

①自治体の福祉窓口・社会福祉協議会への相談

生活に困ったとき、最初に頼るべきは、お住まいの市区町村の福祉窓口や、地域の社会福祉協議会です。福祉窓口では、生活保護を含む公的支援の申請や相談が可能です。一方、社会福祉協議会では、貸付制度や緊急的な食料支援、ボランティアの紹介など、行政とは異なる柔軟な支援が受けられることもあります。いずれも予約不要で利用できる場合が多いため、まずは足を運んでみることが大切です。

②支援を受けるまでの流れと必要な準備

公的支援を受けるには、相談から申請、審査、決定という流れを経ることになります。相談時には、本人確認書類、家計の状況がわかる通帳や給与明細、家賃の契約書などを持参するとスムーズです。特に生活保護の場合は、収入・資産・扶養義務などが厳密に調査されるため、正確な情報を伝えることが重要です。相談は無料で、秘密も守られますので、不安な場合でも一度相談してみる価値はあります。

③支援を受けた後の生活再建のステップ

支援が始まった後も、生活を立て直すには時間がかかることがあります。福祉事務所では、ケースワーカーが継続的に状況を確認し、必要に応じて就労支援や医療・福祉サービスへのつなぎも行われます。また、生活困窮者自立支援制度では、社会復帰や就労準備のための支援も受けられるため、段階的な回復が可能です。一人で抱え込まず、担当者と二人三脚で取り組む姿勢が、再出発への近道になるでしょう。

6.まとめ

生活困窮は誰にとっても身近なリスクです。しかし、制度を知り、適切に支援を受けることで再スタートを切ることができます。「ひとりで抱え込まないこと」が最も大切な第一歩です。生活に困ったときは、ためらわずに地域の相談窓口に足を運んでください。

この記事では、生活困窮とは何か、生活困窮者となった場合はどうしたらいいかをご紹介しました。もし生活困窮者になった場合には、一人で悩まずにリライフネットへご相談ください。

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