日本国憲法ではいわゆる生存権が保証されており、第二十五条で「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と定められています。

生活保護はこれにもとづいた制度で、国が定める最低生活費に収入が満たない場合、不足分を世帯単位で保護するという内容です。

生活困窮者の中には一定の住所を持たない人も存在しますが、そういった人は生活保護を申請できるのでしょうか。住まいに関する保護の内容とともに、詳しく解説します。

1.定住所が無いと生活保護は申請できない?

生活保護は「居住地主義」という考えのもと、申請時点で居住する場所で保護申請を出すことができます。生活しているという事実があれば居住地とみなされ、住民票の有無は関係ありません。

ホームレスのように決まった住まいを持たない人の場合は、「現在地保護」という考え方が採用されます。

生活保護法第十九条では、「都道府県知事、市長…福祉に関する事務所…を管理する町村長は、次に掲げる者に対して、…保護を決定し、かつ、実施しなければならない」と定められています。

同条第二号の中で現在地保護についても言及されており、「居住地がないか、又は明らかでない要保護者であつて、その管理に属する福祉事務所の所管区域内に現在地を有するもの」という規定があります。

つまり居住地がなく、保護を要する人が今いる場所でも保護申請をする権利が認められているということになります。

現在地保護の例としてはホームレスの方に加え、入院中や介護施設入所中に帰る家がなくなった方などの事例が考えられます。

ときどき相談窓口で「住所がないから申請を受け付けない」と言われたという話も聞かれますが、これは明らかな運用上の誤りです。本人が強く主張できない場合は誰かに付き添いをお願いし、その人から現在地主義の話を切り出してもらうのも一つの方法と言えるでしょう。

2.上手く制度を利用するために何が受給対象か知っておく

生活保護は「日常生活の費用にあたる生活扶助」や「医療費に相当する医療扶助」など、全8種類の扶助で構成されています。多くの世帯では生活扶助・医療扶助・住宅扶助を、高齢者のいる世帯ではそこに介護扶助を加えた4つの扶助を受けることが多いです。

そのひとつに住まいに関する扶助である住宅扶助があり、生活保護法第十四条では「住宅扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して、…行われる」と定められています。

自宅を所有している世帯には維持修繕費用が、自宅を所有していない世帯には家賃相当額が、それぞれ基準額の範囲内で支給されるというものです。

①住宅扶助を受けて住まいを確保しよう

前述のとおり自宅やアパート暮らしをしていない人(世帯)でも生活保護は申請できますが、保護を受けるときは住所のある方が、安定した生活を送れるとともに将来的な自立を図ることも期待できます。

特に生活保護をひとつのステップととらえ就労を視野に入れる人は、実際に求職や就職活動もスムーズに行えるのではないでしょうか。

賃貸住宅をはじめとした一定の住まいを確保するのも、「健康で文化的な」生活を送るための大切な権利です。

生活保護の申請や受給時には住宅扶助の制度を改めて確認し、上手に制度を利用して賃貸住宅を借りることを検討しましょう。

3.生活保護受給者でも借りられる賃貸に強い不動産会社に相談する

生活保護は憲法第十四条でいう「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するための制度ですが、実態は「最低限度」というところに重きが置かれていると感じる人も多いのではないでしょうか。

地域事情は考慮されるものの、特に住宅扶助は支給できる上限額が決まっています。そのため必ずしも支給範囲におさまる物件ばかりではなく、むしろ探すのが困難な場合が多いかもしれません。

また家賃が基準内に収まっていても、住まいとしての体をなさない物件も散見されるのが実情です。

そこでおすすめしたいのが、生活保護に関する知識を有している不動産会社の利用です。住宅扶助の制度や基準額について熟知しており、基準額に収まる家賃の物件も多く取り扱っています。もちろん家賃だけでなく、「健康で文化的な生活」を送れるアパートの情報も豊富です。

中には申請のサポートも行う業者がありますが、アパートの賃貸契約だけ相談する場合でも、制度に理解のある不動産会社に足を運べば不安は少なくてすみます。

自立への道を確実にするという意味でも、保護申請時や受給中に引っ越しを検討する人は、生活保護制度を熟知する不動産会社に相談することをおすすめします。

ただ、既に保護を受けている人はいいのですが、これから生活保護を受給する方は不動産会社から直接紹介してもらうことは困難な可能性があります。

その場合は、生活保護の申請から住宅提供まで無料サポートしているリライフネットに相談してみるのも良いでしょう。

4.1人で生活保護の申請に不安な方は総合的に相談できる窓口へ

生活保護の申請ができるのは一部例外を除き、申請者本人やその扶養義務者、同居親族に限られます。そのため代理人に申請を依頼することができません。

一方同席や付き添いについては制限がなく、申請者本人が希望する人は誰でも付き添いを依頼することが可能です。

自治体によっては同席を嫌がるところもあるのかもしれませんが、「同席させてはいけない」という法的根拠はどこにもないので、可能であれば親族や友人など信頼できる人も一緒についていってもらいましょう。

俗に言う「窓口作戦」で門前払いをする自治体もあるようですが、申請そのものを拒絶することは認められません。もし「保護の基準に該当しない」と言われたら、きちんと申請を出して申請却下の正式な文書を受け取ればいいだけの話です。

①保護申請をサポートしてくれる相談窓口の例

一人で自治体へ相談に行くと、うまく言いくるめられる可能性がありますが、付き添いを頼めばそれを防ぐこともできます。しかしそのような人が近くにいない場合、しっかり主張する自信のない人が相談や申請のため一人で福祉課に行くことは、「言った言わない」の話になる危険もあるためあまりおすすめできません。

そこで保護申請の際は総合的な相談窓口を利用し、相談や申請の付き添いを依頼してはどうでしょうか。生活保護の制度をよく知る専門家が、自らの得意分野を活かしたサポートをしてくれます。

弁護士は法律の専門家として法的知見を活かしたサポートを行うため、前述のような水際作戦を食い止め申請まで持っていくことができます。もちろん法的根拠のない自治体からの応対には、毅然とした対応をしてもらえます。

NPO法人などで生活困窮者支援を行っている団体も、豊富な対応実績を活かし保護申請や生活再建のサポートに対応可能です。

中には賃貸住宅を仲介する不動産業でも、相談や申請時の付き添い、物件探しまでトータルにサポートしてくれる会社があります。

リライフネットでは物件提供と生活保護申請のサポートを両方行っておりますので、是非ご相談を!

5.生活保護をうまく利用して新しい生活を始める!

生活保護は全ての国民が受けられる制度で、決まった住まいを持たない人も申請・受給する権利があります。

しかし健康な日常生活を送るためには住居の存在が欠かせず、「自立」という生活保護の目標を達成するためにも決まった住まいは必要ともいえます。

生活保護には住宅扶助を含め、人が生きていく上で欠かせない要素を支える様々な種類の扶助があります。

保護申請を考えている人や身近にそのような人がいる場合、生活保護の制度をうまく利用して困窮した状態から脱却し、新しい生活を切り拓いていきましょう。