
生活保護を受けていても車を持ちたい、または現在持っている車を手放さなければならないのか不安に感じている方は多いでしょう。車は日常生活や就労にとって重要な移動手段ですが、生活保護制度においては原則として資産と見なされるため、慎重な判断が必要です。
この記事では、生活保護受給中の車の取扱いについて、どのような場合に保有が認められるのか、どのような手続きが必要なのかを具体的に説明します。リライフネットでは関東一都三県で多くの生活保護受給者の方をサポートしており、車の保有に関する相談も数多く受けています。
1.生活保護受給中の車保有に関する基本原則

生活保護制度では、受給者の資産について基準が設けられています。車についても例外ではなく、原則として生活保護法第4条の「補足性の原理(資産活用の原則)」に基づき、まず自分の資産を活用することが求められます。※1
しかし、すべての車が一律に処分対象となるわけではありません。生活や自立のために真に必要と認められる場合には、保有が認められることがあります。この判断は、福祉事務所が個別の状況を総合的に検討して行います。
車の保有が認められるかどうかは、その車が単なる贅沢品なのか、それとも生活に欠かせない移動手段なのかという視点で判断されます。地域の交通事情、受給者の身体状況、就労の必要性などが重要な判断材料となります。
①資産性の判断基準
福祉事務所では、車の資産価値を評価する際に複数の要素を検討します。車の年式、走行距離、市場価格などから総合的に判断し、処分価値が著しく低い場合には保有が認められる可能性が高くなります。
一般的には、処分価値が比較的低い車両については保有が認められる可能性があります。ただし明確な金額基準があるわけではなく、地域や福祉事務所の判断によって運用が異なる場合があります。
②生活必需品としての判断
車が生活必需品として認められるには、公共交通機関の利用が困難な地域に住んでいることが重要な要素となります。バスや電車の便が悪い地方部では、車がなければ買い物や通院、就職活動に支障をきたすため、保有が認められやすくなります。
都市部であっても、身体障害がある方や高齢者の場合は、移動手段として車の必要性が認められることがあります。医師の意見書や診断書が必要となる場合もあります。
※1出典:e-Gov法令検索「生活保護法 第4条(補足性の原理)」2025.10.01
2.車の保有が認められる具体的な条件

車の取扱いは、生活保護制度の運用上、個別の事情を踏まえて判断されます。車の保有が認められるかどうかは、就労や通院など生活上の必要性があることに加え、維持費を含めた家計が無理なく成り立つかどうかも含めて検討されます。
車の保有は原則として認められていませんが、就労や通院などに真に必要である場合や、公共交通機関の利用が難しい地域で日常生活に支障が生じる場合には、例外的に保有が認められることがあります。
①就労に必要な場合
就労のために車が不可欠と認められる場合には、例外的に保有が認められることがあります。具体的には、勤務先への通勤に公共交通機関を利用できない場合や、勤務形態(早朝・深夜など)の都合で公共交通機関では通勤が難しい場合などが該当します。
また、最寄り駅やバス停から勤務先まで距離があり、始発では間に合わない勤務形態である場合には通勤手段として車が必要と判断されるケースがあります。あわせて、ガソリン代や保険料、車検費用などの維持費を含め、保護費の範囲で家計が成り立つことが前提となります。
②通院に必要な場合
慢性的な疾患や身体障害がある方で定期的な通院が必要となり、公共交通機関の利用が難しい場合には、例外的に車の保有が認められることがあります。特に、透析治療や抗がん剤治療など、通院頻度が高く体調の変動も大きい治療を受けている場合には、移動負担への配慮がなされることがあります。
例えば、週に複数回の通院が必要で、通院後に体力が低下して公共交通機関の利用が困難となるケースでは、車が通院手段として必要と判断されることがあります。この場合、治療内容や移動上の支障を示すために、主治医の意見書や診断書の提出を求められることがあります。
③身体障害がある方の移動手段として必要な場合
身体障害により公共交通機関の利用が著しく困難な場合、車の保有が認められることがあります。車椅子での移動や歩行困難な方、視覚障害の方の付添いの方が運転する場合なども対象となります。

3.福祉事務所への申請手順と必要書類

車の保有を希望する場合は、福祉事務所への事前相談と正式な申請が必要です。無断で車を購入したり保有を続けたりすると、受給状況の確認が行われ、場合によっては保護費の返還を求められるなど、受給に影響が出る可能性があるため、事前に福祉事務所へ相談し、手続きの案内を受けたうえで進めることが大切です。
①事前相談の重要性
車の保有を検討している場合は、まず担当のケースワーカーに相談することが重要です。この段階で、保有の可能性や必要な書類について詳しく説明を受けることができます。
事前相談では、なぜ車が必要なのか、どのような車を予定しているのか、維持費はどの程度かかるのかなどを具体的に説明する必要があります。ケースワーカーからのアドバイスを受けながら、申請に向けた準備を進めましょう。
②必要書類の準備
車の保有申請には、目的に応じてさまざまな書類が必要となります。就労のための車であれば雇用証明書や勤務先の所在地がわかる資料、通院のための車であれば医師の診断書や意見書が必要です。
車両に関する書類として、車検証や自動車税の納税証明書、任意保険証書なども準備する必要があります。中古車を購入予定の場合は、販売店からの見積書や車両の状態がわかる資料も求められることがあります。
③申請から決定までの流れ
申請書類を提出した後、福祉事務所では書類審査が行われ、必要に応じて車両の状況や使用目的について追加の確認が行われる場合があります。例えば、車両の状態や利用の必要性について聞き取りが実施されることがあります。
審査期間はケースにより異なり、数週間程度かかることもあります。この間の取扱いについては、福祉事務所の指示に従いましょう。
詳しくは「生活困窮者が受けられる支援とは?種類や申請方法、活用のポイントを徹底解説」で解説しています。
4.車の維持費と生活保護費の関係

車の保有が認められた場合でも、維持費については、原則として保護費の範囲でやりくりすることになります。ガソリン代、自動車保険料、車検費用、修理費などは、原則として自己負担となるため、家計管理が重要です。
①維持費の算出と家計への影響
車の維持費は、車種や走行距離、保険内容、駐車場の有無などで大きく変わります。一般的には、軽自動車の方が維持費を抑えやすい傾向があります。この金額には、自動車税、自賠責保険、任意保険、車検代、燃料代、駐車場代などが含まれます。
生活保護費から維持費を支出する場合、他の生活費を圧迫する可能性があります。食費や光熱費など必要最低限の支出を確保した上で、車の維持が可能かどうかを慎重に検討する必要があります。
②就労収入がある場合の取扱い
就労のために車が必要と認められている場合、一定の範囲で必要経費として考慮されることがあります。これにより、実質的な手取り収入が増える効果が期待できます。
ただし、維持費として認められる範囲には限度があり、過度に高額な維持費は認められません。妥当な範囲での維持費のみが控除の対象となります。
詳しくは「生活扶助の基準額を正しく理解するために知っておくべきこと」で解説しています。
5.車を購入する場合の注意点

生活保護受給中に新たに車を購入する場合は、事前に福祉事務所へ相談し、申請手続きを行う必要があります。無断で購入した場合、受給状況の確認が行われ、保護費の返還を求められるなど、受給に影響が出る場合があります。
①購入価格と処分価値の考慮
車を購入する場合、その価格が適正かどうかが重要な判断基準となります。制度の趣旨に照らして適切な価格帯の車を選ぶ必要があり、高級車や新車の購入は原則として認められません。
中古車であっても、市場価値が高い車種は避ける必要があります。実用性を重視した、維持費の安い軽自動車などが推奨されることが多いです。
②購入資金の出所
車の購入資金がどこから捻出されるかも重要な審査項目です。生活保護費を長期間貯めて車を購入することは、一般的には認められない場合が多いため、就労収入や親族からの援助など、適正な資金源を明確にする必要があります。
ローンでの購入を検討する場合は、月々の返済が家計を圧迫しないか、返済能力があるかどうかが慎重に審査されます。
6.車の保有が認められなかった場合の対処法

申請したにも関わらず車の保有が認められなかった場合、まずはその理由を詳しく確認することが大切です。不明な点があればケースワーカーに質問し、決定理由について説明を受けることが大切です。
①審査請求という手段
決定に不服がある場合は、都道府県知事に対して審査請求を行うことができます。これは法的に認められた権利であり、決定の妥当性について再度審査を求めることができます。
審査請求には期限があり、決定通知を受けた日から3か月以内に行う必要があります。請求書の作成や証拠書類の準備など、専門的な知識が必要な場合もあるため、支援団体や専門家(弁護士など)に相談することも検討してください。
②代替手段の検討
車の保有が認められなかった場合は、代替の移動手段を検討することも一つの方法です。自治体によってはタクシー券の支給や通院等乗車券の発行など、他の支援制度を案内してくれることがあります。
地域によっては、生活困窮者向けの移動支援サービスや、NPO団体による送迎サービスなども利用できる場合があります。
詳しくは「生活困窮の相談窓口とは?相談方法・支援内容・利用のポイントを徹底解説」で解説しています。
7.車を手放す必要がある場合の手続き

現在車を所有しているが生活保護の申請を検討している方、または保有が認められなかった方は、適切な手続きを経て車の処分を検討することになります。
①売却時の注意点
車を売却する場合は、適正な価格で売却することが求められます。故意に安価で売却したり、親族に名義変更したりすることは認められない場合があります。複数の業者から査定を受け、適正価格での売却を心がけてください。
売却代金は収入として認定されるため、福祉事務所に報告する必要があります。この収入により一時的に生活保護が停止される可能性もありますが、再度保護の必要性が認められれば、受給が再開される場合があります。
②処分までの暫定的な使用
車の処分を決定してから実際に売却するまでの期間、車の使用について福祉事務所と相談することができます。就職活動や緊急時の使用など、合理的な理由がある場合は暫定的な使用が認められることがあります。
8.よくある質問

①生活保護受給中に車を無断で購入するとどうなりますか?
無断で車を購入した場合、受給状況の確認や、保護費の取扱いに影響が出る場合があります。必ず事前に福祉事務所に相談し、手続きの案内を受けたうえで購入してください。
②車の保有申請にはどのくらい時間がかかりますか?
審査期間はケースによって異なりますが、数週間程度かかることがあります。余裕を持って申請することをお勧めします。
③軽自動車と普通車で保有の可否に違いはありますか?
維持費の観点から軽自動車の方が認められやすい傾向がありますが、最終的には使用目的や必要性で判断されます。車種そのもので一律に決まるわけではありません。
④車の保険料も生活保護費から支払えますか?
車の保有が認められている場合には、保険料も保護費の範囲で支払うことになります。ただし、過度に高額な保険は認められない場合があります。
⑤家族の名義で車を使用することは可能ですか?
同居家族の名義であれば使用できる場合がありますが、別居家族の名義車を常時使用することは実質的に車を保有していると判断される場合があります。福祉事務所に事前相談が必要です。
⑥車の修理費が高額になった場合はどうすればいいですか?
修理費が高額になる場合は、修理をするか買い替えるかを福祉事務所と相談してください。修理費が車の価値を上回る場合は、処分を検討する必要があります。
⑦引っ越し先で車の必要性が変わった場合の手続きはありますか?
転居により交通事情が変わった場合には、車の保有の必要性について改めて確認されることがあります。転居の際には福祉事務所に相談し、必要に応じて申請内容を見直すことが大切です。
9.まとめ

生活保護受給中であっても、就労や通院など生活に必要な事情が認められれば、車の保有が認められる場合があります。ただし、車の保有は原則として制限されているため、事前に福祉事務所へ相談し、制度のルールを理解したうえで手続きを進めることが大切です。
また、生活保護の申請や受給にあたっては、住居の確保や生活環境の整備が重要になるケースも少なくありません。生活に関する不安や住まいの問題を一人で抱え込まず、専門の支援機関に相談することで解決の糸口が見つかることもあります。
この記事では、生活保護受給中の車の保有・購入に関する申請手順や認定要件をご紹介しました。なお、現時点で生活保護をまだ受けておらず、生活保護受給の検討や前提となる住居の確保をしたい場合には、お気軽にリライフネットへご相談ください。
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