
生活保護を受給中に、母親の介護が必要になる場合があります。介護によって就労時間が短くなったり、介護サービスの利用に不安を感じたりすることもあるでしょう。
母親の介護が始まった場合には、介護扶助の申請や収入変動の報告など、必要な手続きを適切に進めることが重要です。
この記事では、生活保護受給中に母親の介護が必要になった際の具体的な手続きの流れと、利用できる支援制度について詳しく解説します。
1.介護扶助の申請手続きと必要書類

①福祉事務所への相談から始める
母親に介護が必要になった場合は、まず福祉事務所の担当ケースワーカーに状況を報告することから始まります。介護が必要になったタイミングや母親の身体状況、現在の生活環境などについて状況を伝えることになります。この初回相談では、介護扶助を受けるための要件や手続きの流れについて案内が行われます。
福祉事務所では、母親が介護保険の認定を受けているかどうかを確認します。65歳以上の場合は介護保険が優先され、介護保険で賄えない部分について介護扶助が適用される仕組みです。40歳から64歳の特定疾病による介護についても、同様に介護保険との調整が行われます。※1
②介護扶助申請に必要な書類
介護扶助の申請にあたっては、申請内容に応じて、主治医意見書や要介護認定に関する書類の提出を求められることがあります。すでに介護保険の認定を受けている場合は、要介護認定書または要支援認定書の写しを提出することになります。
そのほか、介護サービスの利用調整にあたっては、ケアマネジャー等による聞き取りやケアプラン作成が行われることがあります。世帯の生活状況や母親の介護状況、利用を希望するサービス内容について聞き取りが行われますので、日頃の介護の状況を整理しておくと、手続きの際に説明しやすくなります。これらの情報をもとに、福祉事務所で介護扶助の支給可否が決定されます。
③申請から決定までの流れ
生活保護の実施機関による決定は、原則として申請日から14日以内、調査に日時を要する場合でも30日以内を目安とされます。緊急性が高い場合は、仮決定として先にサービス利用を開始できることもあります。決定通知書を受け取った後は、指定された介護サービス事業者との契約手続きに進むことになります。※2
介護扶助が適用される場合、介護保険サービスにかかる自己負担分は、介護扶助の対象となります。費用は福祉事務所から事業者へ直接支払われる現物給付として取り扱われます。利用時の確認方法については、福祉事務所や事業者の案内に従うことになります。※3
※1出典:厚生労働省「介護保険制度の概要」参照:2025.07
※2出典:e-Gov法令検索「生活保護法 第24条」参照:2025.10.01
※3出典:厚生労働省「生活保護制度」
2.母親の介護で収入が変わった時の手続き

①勤務時間短縮による収入変動の報告
母親の介護のため勤務時間を短縮したり、転職したりした場合には、福祉事務所へ報告する必要があります。収入に変動があった場合には、勤務先からの証明書や給与明細などの提出を求められることがあります。提出時期や提出方法については、福祉事務所の案内に従うことになります。こうした報告を行わなかった場合には、支給額の変更や返還を求められる可能性があります。※1
また、勤務時間の変更理由や今後の勤務予定について、勤務先に確認書類の作成を依頼することがあります。介護を理由とする勤務時間の短縮が生じた場合でも、収入額の変動に応じて生活保護費の支給額が調整される仕組みです。
②介護離職した場合の就労指導との調整
母親の介護を理由に離職した場合であっても、就労可能と判断される状況であれば、就労に関する支援や指導の対象となることがあります。ただし、介護の状況や母親の要介護度などを踏まえ、求職活動の頻度や内容について配慮が行われる場合があります。求職活動にあたっては、介護と両立しやすい勤務形態の仕事を中心に検討していくことになります。
ケースワーカーとの面談では、介護の負担状況と求職活動の両立について相談することになります。デイサービスやショートステイなどの介護サービスを活用することで、就労可能な時間帯を確保できる場合もあります。就労と介護の両立に向けては、利用できる支援やサービスを踏まえながら、無理のない形で今後の見通しを整理していくことが大切です。
介護と仕事の両立には負担を伴うこともありますが、介護サービスの利用や収入変動に関する適切な手続きを進めることで、生活の安定を図りながら介護を継続しやすくなります。
③在宅介護手当や交通費の扱い
母親を在宅で介護している場合、自治体によっては家族介護に対する手当などが支給されることがあります。こうした収入がある場合には、福祉事務所への申告が必要です。また、病院への付き添いや介護サービス事業者との打ち合わせに伴う交通費については、個別の事情に応じて取扱いが判断されるため、事前に福祉事務所へ確認することが必要です。
交通費については、利用目的や金額が確認できる資料の提出を求められることがあります。たとえば、領収書や支出内容を記録した家計簿などを整理しておくことで、手続きの際に状況を説明しやすくなります。定期的な通院介助や介護サービスの利用に伴う交通費の扱いは、個別の事情によって判断が分かれることもあるため、詳細は福祉事務所に確認することになります。
※1出典:e-Gov法令検索「生活保護法 第61条」参照:2025.10.01
3.利用できる介護サービスと自己負担

①訪問介護サービスの利用方法
母親が要介護認定を受けている場合、訪問介護サービスを利用できる場合があります。ホームヘルパーによる身体介護や生活援助を受けることで、介護者の負担軽減につながることがあります。介護扶助が適用される場合には、訪問介護サービスの自己負担分が扶助の対象となることがあります。
サービス利用にあたっては、ケアマネジャーがケアプランを作成します。母親の身体状況と介護の必要性、世帯の生活状況を総合的に考慮して、適切なサービス内容と頻度が決定されます。サービスの利用回数や利用時間は、要介護度や生活状況に応じて個別に判断されます。
②デイサービスとショートステイの活用
デイサービスを利用することで、母親が日中を施設で過ごせるようになり、介護者が就労や用事のための時間を確保しやすくなる場合があります。送迎サービスが付く場合もあり、介護の負担軽減につながることがあります。利用回数や利用時間は、要介護度や生活状況、ケアプランの内容に応じて個別に調整されます。
ショートステイは、一定期間施設に宿泊しながら介護を受けられるサービスです。介護者が体調を崩した場合や、冠婚葬祭などで一時的に在宅での介護が難しい場合に利用が検討されます。介護扶助が適用される場合には、自己負担分が扶助の対象となることがあります。利用にあたっては、事前の予約やケアマネジャーとの調整が必要になるほか、必要に応じて福祉事務所への確認が求められることもあります。
③介護用品と住宅改修の支援
介護に必要なベッドや車いす、歩行器などの福祉用具は、介護保険の給付対象となる範囲でレンタルを利用できる場合があります。生活保護受給者については、レンタルにかかる自己負担分が介護扶助の対象となることがあります。おむつなどの消耗品については、自治体の制度や個別の事情により取扱いが異なるため、事前に福祉事務所へ確認することが必要です。
住宅改修についても、介護保険と介護扶助の対象となる範囲で支援が行われる場合があります。たとえば、手すりの設置、段差の解消、滑りにくい床材への変更などが対象となることがあります。利用にあたっては、事前に福祉事務所やケアマネジャーに相談し、必要性や対象範囲を確認したうえで手続きを進めることになります。
4.介護と生活保護受給の両立で注意すべき点

①定期的な状況報告の重要性
母親の介護状況や要介護度に変化があった場合には、その内容を福祉事務所へ報告することが必要です。要介護度が変わった場合には、利用するサービスの内容やケアプランの見直しが行われることがあります。また、本人の健康状態や就労状況に変化があった場合にも、福祉事務所への報告が求められます。
ケースワーカーとの面談では、介護の負担状況について確認が行われることがあります。介護疲れによる体調不良や精神的な負担がある場合には、その状況について相談することになります。必要に応じて、医療扶助による受診や介護サービスの追加利用が検討されることがあります。
②他の家族との扶養義務の調整
母親に他の子どもがいる場合には、扶養義務に関する確認が行われることがあります。ただし、生活保護受給者については、個別の事情を踏まえて扶養能力の有無が判断されます。他の家族から介護費用の負担や援助がある場合には、その内容が扶助の取扱いに影響することがあります。
兄弟姉妹間での介護分担について悩みがある場合には、福祉事務所へ相談することができます。経済的な負担だけでなく、実際の介護負担についても事情を整理したうえで相談することで、必要に応じて今後の対応を検討しやすくなります。家族間での話し合いが難しい場合にも、状況を福祉事務所に伝えることになります。
③介護保険制度との連携
介護保険と生活保護の介護扶助は、それぞれ異なる制度であるため、主な担当窓口も異なります。介護保険に関する相談は地域包括支援センターや市町村の介護保険担当部署が担い、介護扶助については福祉事務所が担当します。実際のサービス利用にあたっては、介護保険による給付を基本としながら、不足する自己負担分等について介護扶助の対象となる場合があります。
ケアマネジャーは、介護サービスの利用調整を進めるうえでの相談先の一つとなります。利用時に必要となる確認書類や費用負担の取扱いは、福祉事務所や介護サービス事業者の案内に沿って確認します。不明な点がある場合には、事前に福祉事務所へ確認しておくことが望まれます。
5.介護を続けるための支援と将来への備え

①相談窓口の活用
介護の負担は大きく、身体面・精神面の双方で疲労が蓄積しやすい傾向があります。地域包括支援センターでは、介護に関する相談窓口として、介護方法や利用できる支援制度、介護者の負担軽減に関する相談に応じています。必要に応じて、適切な支援先やサービスにつなげられることもあります。
たとえば、認知症の母親を一人で介護していた方が、夜間の対応による睡眠不足から体調を崩していた事例では、地域包括支援センターへの相談をきっかけに介護サービスの利用調整が進み、休息時間を確保しやすくなったケースもあります。介護の負担が大きい場合には、早めに相談することで、生活の安定につながる場合があります。
②介護者同士の交流機会
市町村や地域包括支援センターなどでは、介護者向けの集いや交流の機会が設けられている場合があります。同じような立場にある介護者と情報交換を行うことで、介護の工夫や負担軽減につながる考え方に触れられることがあります。介護に伴う悩みや不安について、他の介護者の経験を参考にできる点も特徴です。
近年は、オンラインで参加できる交流の場が設けられることもあり、外出が難しい状況でも参加しやすい場合があります。開催情報は、市町村の広報誌やホームページ、地域包括支援センターなどで確認できます。参加費や交通費の取扱いは実施主体によって異なるため、事前に確認しておくことが望まれます。
③医療的なサポート
介護疲れによる体調不良や精神的な負担がある場合には、医療扶助の対象として受診が認められることがあります。かかりつけ医に介護負担の状況を相談し、必要に応じて精神科や心療内科などの受診につながる場合もあります。睡眠障害や抑うつ状態などの症状がみられる場合には、早めに医療機関への相談を検討することが望まれます。
また、母親が訪問診療や訪問看護を利用している場合には、介護者本人の健康状態について相談できる場合もあります。看護師等から健康管理や生活上の助言を受けることで、介護を継続するうえでの体調管理につなげやすくなります。
詳しくは「うつ病で収入が途絶えたら?働けないときでも利用できる給付金・支援制度」で解説しています。
④介護者本人の就労継続計画
介護と仕事の両立を長期間継続するためには、計画的なサービス利用が欠かせません。働く時間帯に合わせてデイサービスの利用時間を調整したり、残業が必要な場合には延長サービスを利用したりする方法があります。勤務先には介護の状況を説明し、時短勤務や在宅勤務などの配慮について相談することが考えられます。
介護休業制度や介護休暇制度を利用できる場合もあります。これらの制度利用に伴い収入が変動する場合でも、生活保護費の調整により生活の維持が図られる場合があります。長期的な介護と就労の両立については、ケースワーカーと継続的に相談していくことが重要です。
介護は長期間にわたることも多いため、利用できる制度やサービスを活用しながら、無理のない形で介護と生活の両立を図っていくことが望まれます。
⑤緊急時の対応準備
母親の急な体調変化や、介護者本人が病気になった場合に備えて、あらかじめ対応を整理しておくことが重要です。緊急時に利用が検討されるショートステイやレスパイトサービスについては、事前に情報を確認しておくことが望まれます。あわせて、かかりつけ医や訪問看護ステーションなどの連絡先も整理しておくと、緊急時の対応を進めやすくなります。
また、近隣の親族や知人などに、緊急時の連絡先として協力を依頼しておくことが考えられます。地域の見守りサービスや民生委員への相談につながる場合もあるため、必要に応じて福祉事務所へ相談することが望まれます。一人で介護を抱え込まないためにも、利用できる地域の支援やサービスを確認しておくことが大切です。
6.よくある質問

①生活保護を受けながら母親の介護をする場合、介護扶助の申請はどこで行えばいいですか?
介護扶助については、まず福祉事務所へ相談します。申請にあたっては、主治医意見書や要介護認定に関する書類の提出を求められることがあります。生活保護の実施機関による決定は、原則として申請日から14日以内、調査に日時を要する場合でも30日以内とされています。
②介護のため勤務時間を短縮した場合、収入変動の報告はいつまでに行う必要がありますか?
収入に変動があった場合には、福祉事務所へ報告する必要があります。勤務先からの証明書や給与明細などの提出を求められることがあり、提出時期や提出方法は福祉事務所の案内に従うことになります。報告を行わなかった場合には、支給額の変更や返還を求められる可能性があります。
③介護扶助で利用できるサービスの自己負担額はいくらですか?
介護扶助が適用される場合には、介護保険サービスの自己負担分が介護扶助の対象となり、本人の自己負担が生じない場合があります。これらの費用は、福祉事務所から事業者へ直接支払われる形で取り扱われます。
④母親の要介護度が変わった場合、何か手続きが必要ですか?
要介護度に変更があった場合には、その内容を福祉事務所へ報告することが必要です。要介護度の変化に応じて、利用する介護サービスの内容や利用頻度、ケアプランの見直しが行われることがあります。
⑤介護用のおむつや消耗品も介護扶助で支給してもらえますか?
おむつなどの消耗品は、必要性が認められた場合に介護扶助の対象となることがあります。対象となる範囲や手続きは個別の事情によって異なるため、詳細は福祉事務所へ確認することが必要です。
⑥介護疲れで体調を崩した場合、どこに相談すればいいですか?
地域包括支援センターは、介護者からの相談先の一つです。介護による負担や悩みについて相談することで、必要に応じて支援先や介護サービスの案内を受けられる場合があります。また、体調不良や精神的な負担がある場合には、医療扶助の対象として医療機関への相談や受診が認められることがあります。
⑦他の兄弟姉妹がいる場合、介護の分担について相談できますか?
兄弟姉妹間で介護の分担に関する悩みがある場合には、福祉事務所へ相談することができます。経済的な負担だけでなく、実際の介護負担についても状況を整理して伝えることで、今後の対応を検討しやすくなります。家族間での話し合いが難しい場合にも、状況を福祉事務所へ伝えることができます。
7.まとめ

生活保護を受給中に母親の介護が必要になった場合は、介護扶助の申請や収入変動の報告だけでなく、今後も無理なく生活を続けられる住環境を整えることも重要になります。介護と生活の両立に不安がある場合には、一人で抱え込まず、早めに福祉事務所や関係機関へ相談しながら、必要な支援を受けていくことが大切です。
この記事では、生活保護受給中の介護に関する手続きと支援をご紹介しました。そもそも生活保護をまだ受けておらず、生活保護受給の検討や前提となる住居の確保をしたい場合には、お気軽にリライフネットへご相談ください。
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