健康で文化的な最低限度の生活を保障するのが生活保護の制度ですが、保護受給中の人はペットを飼うことができるのでしょうか。ペットと暮らしながら保護を受けたい人も含め、生活保護とペット飼育の関係を詳しく解説します。

1.生活保護を受給しているとペットは飼えないのか

生活保護受給者がペットを飼えるかどうか、2022年時点では禁止される規定が存在しません。

生活保護は、国民が健康で文化的な最低限度の生活を保障するための制度で、受給要件のひとつに「原則として保有する資産は処分する」というものがあります。

不動産や自動車をはじめ、資産価値のあるものはお金にして生活しても困窮する場合は保護を受けられることになりますが、ペットに資産価値があるのかどうかという点には疑問があります。

生活保護法第六十三条の条項を適用した処分指導を受けない限り、ペットは飼っても構わないという解釈です。実際、生活保護を受けながら柴犬や雑種の猫などを飼う事例が散見され、ペットを飼いながら保護申請することも問題ありません。

法第六十三条には、「被保護者が、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けたときは、…その受けた保護金品に相当する金額…を返還しなければならない」という条文があります。

同条の適用を受けた資産は保有が認められず、処分して得た費用は既に受けた保護費相当分を返還しなければなりません。状況によって適用される資産は様々で、若い頃盆栽職人をしていた高齢者の盆栽コレクションに適用された事例もあります。

一方資産価値という視点では、血統書付きの品種でお金を払ってでも飼いたいという人がいるようなペットは、飼うことが認められないということもあります。

最終的には福祉事務所の判断になるので、ケースワーカーさえ嫌がらなければ、訪問時に一度ペットと対面させてみるのもいいかもしれません。ケースワーカーはそういう点も観察しているので、「禁止されていない」という消極的理由ではなく大手を振って飼うことができるでしょう。

2.心の支えとしてペットを飼い続けることが可能

前述のとおり、「生活保護を受けている人がペットを飼ってはいけない」という規定はなく、保護を受けながらペットを飼うことに支障はありません。

特に単身者の場合、ペットは寝食を共にする唯一無二の存在です。ペットとの生活による精神的支えは、生活保護のお金で得ることができません。むしろ「健康で文化的な生活」を送るためには、家族ともいえる存在のペットと暮らすことで、より充実した暮らしが期待できるでしょう。

3.飼育費は支給されず、多頭飼いは指導されるケースも

生活保護を受けながらペットを飼うことは禁止されていませんが、ペットを飼う費用が保障されているわけではありません。必然的に、ペットにかかる費用は自分の生活費をやり繰りして捻出することになります。

また具体的な額はケースバイケースですが、飼育する頭数が増えれば飼うための費用も増えます。あまりに頭数が多いと生活費を相当圧迫するため、多頭飼いをしている世帯はペットの処分指導を受ける場合もあります。

日常生活のありのままを見てもらうという意味でも、ケースワーカーが訪問するときはペットの飼育状況も漏らさず報告しておきましょう。

4.ペットと暮らす際に注意すること

生活保護を受けながらペットと暮らす人は、いくつかの点に注意が必要です。

ペットを飼う費用については既に述べたとおりですが、多頭飼いを防ぐために推奨される去勢手術や避妊手術の費用も自己負担となります。

自治体によっては、「犬や猫の不必要な繁殖、周囲に対する危害・迷惑を防止する」という目的で、去勢・不妊手術費用に対する助成金制度を設けているところもあります。こういった助成を受けることで、自己負担額を少しでも減らす工夫も検討しましょう。

しかしペットを飼うことをケースワーカーに隠していると、場合によっては助成金分だけ生活に余裕があるという理由で収入認定されることもあります。ペットに限った話ではありませんが、自分の生活状況はつぶさに報告・相談しておくのがよいかもしれません。

万が一に備えペット保険の加入を検討する際も、収入認定のことを念頭に置く必要があります。保険金を受け取れば収入認定されるため、生活保護を受ける人がペット保険に加入するメリットは全くありません。

だからといって毎月の生活費を貯めて手術費用に充てようとすると、貯めたお金が資産扱いされる場合があるということは覚えておきましょう。

もちろん狂犬病予防法で定められる毎年の狂犬病ワクチン接種を受けさせるなど、保護の受給にかかわらず義務付けられているものは守らなければなりません。

5.課題は「生活保護でも入居できる」「ペット可の物件」を探すこと

原則として、生活保護の制度上ペット飼育を禁止する規定はありませんが、アパートなどの賃貸住宅に住んでいる人は「物件がペット飼育可能か」という点に注意しなければなりません。

この点は保護を受けずにアパート暮らしする人と同じで、大家さんに隠れて飼っていることが判明した場合、最悪契約解除されるというリスクが常につきまといます。保護を受けながらペットを飼いたいという人は、ペット可という条件は外せません。

生活保護とアパート暮らしという点では、家賃のことも気を付けたいところです。家賃にあたる住宅扶助には上限があり、それより高い家賃の物件は推奨されません。基準額は世帯により異なりますが、それでも月額10数万円の物件には住めないと考えておきましょう。

もちろん家賃に関係なく、生活保護受給者お断りというアパートが存在するという事実もあります。これらの点を考慮すると、単独で「ペット可」で「生活保護受給者でも入居できる」という物件を探すのは至難の業ということもできます。

6.もしも一緒に暮らせなくなってしまったら

入院・施設入所などでペットを飼えなくなったとしても、勝手に手放して野良にするのは言語道断です。また保健所に送られ殺処分というのも、一緒に暮らしてきた者としては無責任な対応です。

動物愛護センターや動物愛護団体であれば新しい里親に出会う可能性が高まり、併せて譲渡会を利用したりSNSで里親募集したりということもできます。

これは生活保護受給の有無にかかわらず、単身者がペットを飼うときは常に考えておかなければならない問題です。これからペットと暮らす人はこの点も頭に入れ、一生を添い遂げる覚悟を持つことを忘れてはいけません。

7.ペットとの入居を検討している方はリライフネットへ

受給要件を満たさず生活保護を受けられない人をはじめ、福祉事務所やケースワーカーを敵視する人は少なくありません。しかしほとんどのケースワーカーは、保護を受ける人の「しあわせ」を追求するという理念を持ち、ひとりひとりに寄り添った支援を行っています。

そのことも踏まえ深い信頼関係を築くためにも、ケースワーカーには隠し事をせず何でも相談したいところです。ペットに関してもそれは変わりませんが、「お役人」という先入観が抜けず相談しづらいという人がいるかもしれません。

また生活保護を受給中に転居する場合、「ペットを飼いたいから」という理由だけでは転居が認められないことも十分考えられます。生活保護に対応する物件を扱う不動産会社もありますが、自力で探し出すのは困難です。そこでおすすめしたいのが、リライフネットの利用です。

リライフネットでは、ペット可で住宅扶助基準内に収まる物件も豊富に取り扱い、生活保護のプロフェッショナルとして相談のしやすさも特徴としています。

ペットを飼えるアパートを探している人は、一度リライフネットに連絡してみましょう。