生活保護を受給されている方にとって、新しい住まいを見つけることは、容易ではありません。入居審査で断られたり、そもそも申し込みを受け付けてもらえなかったりと、物件探しには様々な困難が伴います。
なぜ生活保護受給者は、入居を拒否されるのでしょうか。この記事では、その理由と物件探しを円滑に進めるための対策について解説します。
1.生活保護受給者が賃貸物件の入居を断られる理由
生活保護を受給していると、賃貸物件への入居を断られるケースがあります。家主や不動産会社が入居を拒否する主な理由は、以下の3つです。
①家賃滞納のリスクがある
生活保護受給者は定職に就いていないことが多いため、家賃を滞納するリスクが高いと判断されがちです。過去に生活保護受給者が家賃や退去時の修繕費を滞納したトラブル事例があると、オーナーや不動産会社が敬遠する傾向にあります。
②入居までの手続きが煩雑になる
生活保護受給者の入居には、福祉事務所との書類のやりとりや承認が必要となるため、一般の入居者に比べて手続きが多くなります。手間を避けたい不動産会社では、生活保護受給者との契約を断ることがあります。
③近隣トラブルのリスクがある
生活保護受給者の中には、精神的な不安定さから昼夜逆転の生活を送る人もおり、生活音などで近隣住民とトラブルになる可能性が懸念されます。特に過去にトラブル経験がある場合、オーナー側が入居を拒否するケースがみられます。
以上のように、生活保護受給者は家賃滞納や煩雑な手続き、これまでのトラブル事例などを理由に、入居審査で断られることが少なくありません。
2.生活保護受給者の物件探しの課題
生活保護受給者が物件探しをする際には、入居拒否以外にも課題があります。ここでは、住宅扶助の限度額の制約と、連帯保証人の確保が難しい点について解説します。
①住宅扶助の限度額内での物件探し
生活保護受給者には、家賃として支給される住宅扶助に上限金額が設けられています。地域や世帯人数によって異なりますが、この限度額内で物件を探さなければなりません。
例えば、東京都の一部地域を除く単身世帯の場合、住宅扶助の基準は53,700円です(※)。家賃の相場が高い都心部では、条件に合う物件を見つけることが難しいケースもあります。
②連帯保証人の確保が困難
多くの賃貸物件では、連帯保証人が必要になります。しかし、生活保護受給者の場合、経済的に余裕のある身寄りがいないために生活保護を受給しているケースが多く、連帯保証人を頼める人がいない場合があります。
保証会社を利用することで対応できるケースもありますが、審査に通らないことも少なくありません。
③審査に通過できる物件が限られている
生活保護受給者の場合、入居審査に通る物件が限られています。そのため、選べる物件が少ないことも、物件探しの課題といえます。
※出典:厚生労働省「最低生活費の算出方法(R5.10 )」住宅扶助基準 参照:2024.09.01
3.生活保護受給者の物件探しの方法とコツ
生活保護受給者の物件探しでは、適切な方法とコツを知ることが大切です。ここでは、福祉事務所の協力を仰ぐ方法と、理解のある不動産会社を選ぶコツについてお伝えします。
①福祉事務所の協力を得る
生活保護受給中に転居する場合、まず福祉事務所の許可を得る必要があります。転居を検討していることや、物件を探していることについてケースワーカーに相談しましょう。転居の許可を得られたら、必要書類を準備して申請します。
許可後も物件契約の際は、常に福祉事務所への報告と承認が求められます。手続きごとにケースワーカーと連携を取ることが重要です。
福祉事務所は、物件が生活保護の規定に沿っているかをマイソクなどの資料で確認します。
また、生活保護受給中の引越しは、一定の条件に該当する場合、引越しの初期費用が支給される場合があるため、事前にケースワーカーに相談することがおすすめです。※
②理解のある不動産会社を選ぶ
スムーズな物件探しには、生活保護受給者の入居に理解のある不動産会社を選ぶことが重要です。不動産会社へ来店する前に、生活保護受給者向けの物件を扱っているか問い合わせておくとよいでしょう。
生活保護受給者に特化した不動産会社もあるため、そのような不動産会社であれば、手続きも詳しく、契約がスムーズになる可能性があります。
一般的な不動産会社に相談する際は、最初に生活保護受給者であることを伝えましょう。理解のある物件オーナーを紹介してもらえたり、審査のアドバイスがもらえる可能性が高まります。
また、生活保護の受給が一時的なものであることを伝えるのも効果的です。今後就労予定がある場合や、病気療養中である場合など、状況を正直に説明することで審査通過の可能性が高くなるでしょう。
生活保護受給者の物件探しは難しい面もありますが、福祉事務所と連携を取り、理解のある不動産会社を見つけることで、スムーズになる場合もあります。
※参考文献:荘村明彦『生活保護手帳2023年度版』(中央法規出版2023.10.30)pp.343-345
また、賃料の上限金額もありすべて理想通りの物件に入ることは厳しいため、どうしても譲れない必要最低限の条件以外で妥協できるところは妥協していく心構えも大事です。
4.生活保護受給者の入居後の課題と対策
ここでは、生活保護受給者が入居後に直面しやすい問題と、それを未然に防ぐための対策について説明します。
①家賃滞納のリスクと対策
生活保護費は毎月決まった日に支給されますが、生活費として使ってしまい家賃が払えなくなるケースがあります。家賃を滞納すると、退去を迫られる恐れがあります。
対策としては、家賃分を別口座で管理したり、家賃の代理納付を利用したりするなどして、生活費と混同しないよう工夫することが大切です。
②近隣トラブルの防止策
精神疾患などにより、近隣住民とのトラブルを起こしてしまうこともあります。騒音や生活マナーの問題で孤立してしまわないよう、日頃からコミュニケーションを心がけましょう。例えば、ゴミの分別ルールや地域の決まりなど、基本的なことを守ることも大切です。
困ったことはそのままにせず、ケースワーカーに相談するのも一つの方法です。周囲の理解と協力を得ながら、安定した生活を送れるよう、必要なサポートを受けることが重要です。
③住環境の維持と改善
住宅扶助の限度額内の物件は、老朽化していたりバリアフリーでなかったりと、必ずしも住環境が良好とは限りません。入居後も、掃除や整理整頓を怠らず、快適な生活空間を保つよう心がけましょう。
障害や高齢による生活上の不具合がある場合は、ケースワーカーや大家さん、不動産会社に相談し、必要に応じて改善を求めていくことも大切です。
生活保護受給者が安心して暮らし続けるには、金銭管理や人間関係、住環境の維持など、入居後の生活も見据えた備えが欠かせません。行政の支援制度を上手に活用しつつ、周囲の人々とも良好な関係を築いていけるよう意識することが大切です。
5.まとめ
今回は、生活保護受給中の物件探しについて解説しました。生活保護受給中の物件探しは、困難な場合が多いですが、生活保護受給者に特化した不動産会社であれば、スムーズに契約できる場合があります。
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