住む家を失った場合、どうすればよいのでしょうか。現在、行政には様々な支援制度や相談窓口が用意されており、家の問題を一人で抱え込む必要はありません。この記事では、住宅に困窮している方が、今すぐ利用できる制度や申請方法について解説します。
1.住居を失ったときに利用できる公的支援制度
住居を失った場合や失うおそれがある場合に、利用できる公的支援制度を解説します。
①住居確保給付金
住居確保給付金は、仕事を失った場合や、やむを得ない休業等により経済的に困窮し、住居を喪失した、または喪失するおそれのある方が対象となる給付金です。家賃相当分の給付金を支給することにより、住居及び就労機会等の確保に向けた支援を行います。※1
住居確保給付金の概要
- 主たる生計維持者の離職・廃業から2年以内である等の要件を満たす必要がある
- 原則3か月間(最大9か月まで延長可)、生活保護の住宅扶助基準額を上限に家賃額が支給される
- 支給額は、世帯収入額と生活保護の住宅扶助基準額を比較して決定
例えば東京都特別区の場合、1人世帯で月53,700円が支給上限額 - 現在住んでいる地域の福祉事務所が相談・申請窓口となる
②総合支援資金貸付制度
総合支援資金貸付制度は、生活困窮者自立支援制度における支援メニューの一つで、生活の立て直しを図るために必要な生活費用の貸付を行う制度です。離職等により経済的に困窮し、日常生活全般に困難を抱えている世帯が対象となります。※2
総合支援資金貸付制度の概要
- 住宅入居費として、敷金・礼金等に対し40万円以内の貸付が可能
- 生活再建までの間に必要な生活費として、生活支援費では単身世帯には月15万円、複数世帯には月20万円以内の貸付が可能。貸付期間は、初回の場合3ヵ月以内(状況により延長可)
- 一時生活再建費は、生活を再建するために一時的に必要な費用を60万円以内の必要額で貸付
- 現在住んでいる地域の市町村社会福祉協議会が相談・申請窓口となる
③臨時特例つなぎ資金貸付制度
臨時特例つなぎ資金貸付制度は、住居を失った離職者の方で公的給付制度や貸付制度を申請中で、その制度の貸付けや給付が始まるまでの生活費として資金を貸付ける制度です。当座の生活費がない場合は、こちらの申請も同時に行いましょう。※3
臨時特例つなぎ資金貸付制度の概要
- 公的給付・貸付制度の開始までの生活費を貸付
- 貸付限度額は10万円以内、無利子、連帯保証人不要
- 生活困窮者自立支援法に基づく支援を受ける必要がある
- 現在住んでいる地域の市町村社会福祉協議会が相談・申請窓口となる
④生活保護制度
生活に困窮する方に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的とした制度です。※3
- 世帯収入が生活保護制度で定められた基準以下である場合、資産や能力を活用してもなお生活に困窮する等の要件を満たす必要がある
- 住宅扶助として、地域の実情に応じた住宅費が支給される
- 現在住んでいる地域の福祉事務所が相談・申請窓口となる
住居を失った際は、これらの制度を組み合わせて利用することで、住まいの確保と生活再建に向けた支援を受けることができます。
※1出典:厚生労働省「住居確保給付金」参照:2024.09.02
※2出典:社会福祉協議会「総合支援資金のご案内」p.5
※3出典:岐阜県社会福祉協議会「生活福祉資金 臨時特例つなぎ資金貸付制度」参照:2024.09.02
※4出典:厚生労働省「生活保護制度」参照:2024.09.02
2.民間団体による住居支援
住居を失った方々を支援する民間団体は、公的支援を補完する重要な役割を果たしています。これらの団体は、緊急的な住居提供から長期的な生活再建支援まで、幅広いサービスを提供しています。
①NPO法人による支援
NPO法人は、住居を失った方々に対して緊急的な宿泊施設の提供、障害を抱える方への就労支援、DV被害者など緊急性の高いケースへの対応などの支援を行っています。これらの団体は、公的機関では対応しきれない細やかなニーズに応えることができる点が特徴です。
②居住支援全国ネットワーク
一般社団法人居住支援全国ネットワークは、全国の居住支援団体をつなぐ役割を果たしています。居住支援に関する情報交換や相互啓発、調査研究や啓発活動や災害時の被災者向け居住支援事業を実施するなど、地域を超えた支援の連携や知見の共有が可能となっています。
③民間団体の支援の特徴
民間団体の支援の特徴として、柔軟性が挙げられます。公的支援では対応しきれないケースへの迅速な対応や、特定のニーズ(例:障害者、DV被害者)に特化した支援の提供が可能です。民間団体による支援は、公的支援と連携しながら、住居を失った方々の多様なニーズに応えるセーフティーネットの一翼を担っています。支援を必要とする方は、これらの団体に相談することで、より包括的な支援を受けられる可能性があります。
3.住居確保のための相談窓口
自治体には、住居を失った、または失う可能性がある方のための相談窓口が用意されています。状況に応じた適切な支援を受けられるよう、以下の窓口を活用しましょう。
①社会福祉協議会
社会福祉協議会(社協)は、住居を失った方や生活に困窮している方々のための重要な相談窓口です。住居確保給付金の申請支援、総合支援資金の窓口となります。社会福祉協議会は、地域の福祉ニーズへ対応し、福祉サービスの提供と適切なサービス利用の支援を目的としています。
②福祉事務所
福祉事務所は、生活に困窮している方々を支援する重要な公的機関で、社会福祉法第14条に規定された「福祉に関する事務所」です。
住居確保給付金や生活保護制度の窓口となります。
4.生活保護の申請方法
生活保護の申請は、以下の手順で行います。※1
①相談
生活保護の申請は、地域の福祉事務所に相談に行くことから始まります。事前に電話で相談し、必要書類を用意しておくこともおすすめです。
福祉事務所では、面接相談員が世帯の生活状況や困窮状態などを詳しく聞き取り、生活保護制度について説明します。この段階で、生活保護以外の支援制度が適している場合は、そちらを案内されることもあります。
②申請
生活保護を受けるには本人の意思で申請する必要があります。申請できるのは、本人もしくは扶養義務者、同居している親族です。申請書類を提出しますが、この時点で全ての書類が揃っていなくても申請は可能です。
③必要書類の準備
申請時に必要な主な書類は以下の通りです。※2
- 認め印可(印面がゴムでないもの)
令和2年から厚生労働省による押印の見直し(※3)が推進されているため、自治体によっては印鑑が不要な場合があります。※4 - 身分証(本人確認書類1点)
マイナンバーカードまたは通知カード
運転免許証
パスポート
健康保険証
障害者手帳
雇用保険受給資格者証など - 収入関係書類(給与明細、年金証書など)
- 預貯金通帳(現在の金額が記帳されたもの)
- 住居関係書類(賃貸借契約書、家賃の領収書など)
必要書類は、申請する際の状況によって変わる場合があります。
④調査
申請後、福祉事務所の調査員が生活状況、資産状況などを調査します。
⑤審査と決定
調査結果をもとに、生活保護による支援が必要かどうか審査されます。基本的には申請から14日以内(※5)に決定され、結果は郵送もしくは電話で通知されます。
⑥保護開始
生活保護が決定すると保護費の支給が始まります。また、ケースワーカーによる自立に向けた支援も開始されます。
生活保護の申請は国民の権利です。生活が困窮した状態にある場合は、ためらわずに福祉事務所に相談しましょう。
※1出典:厚生労働省「生活保護制度」参照:2024.09.02
※2出典:蒲郡市「生活保護の申請で必要になることがある書類について」2024.09.09
※3出典:厚生労働省「押印を求める手続の見直し等のための厚生労働省関係政令の一部を改正する政令(令和2 年政令第 367 号)(概要)について」2024.09.09
※4出典:白岡市「令和4年1月から押印の義務付けを廃止する申請書等」p.40(561)2024.09.09
※5出典:厚生労働省「生活保護制度に関するQ&A」Q3参照:2024.09.02
5.まとめ
今回は、住居を失った場合の対処法について解説しました。日本では、公的な支援制度や民間の支援制度を活用することで、住居の確保と生活の再建が可能です。
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