生活保護費には、生活保護受給者の状況に応じた加算項目があります。該当する場合は、申請する事で、生活保護費が増額されます。この記事では、夏季加算などの加算項目について詳しく解説します。
1.生活保護費には加算項目がある
生活保護制度では、毎月の生活費として生活保護費が支給されます。生活保護費は、厚生労働省の基準によって過不足がないように、住居のある地域や世帯人員の構成を考慮し、厳密に計算されています。※1
しかし、状況により必要な生活費は変動するため、生活保護費には、必要に応じて増額するための加算項目が定められています。項目は9つあり、自身の状況が該当する場合は、申請することで生活保護費の加算額を受け取ることができます。
増額される金額は、生活保護制度に定められている級地によって変わります。※2
加算項目の種類は以下の9つです。※3
①妊産婦加算
妊産婦加算は、妊娠が分かった場合に対象となります。加算額の受給は、妊娠が分かった翌月からとなります。
1級地及び2級地の場合の支給額は、妊娠6ヶ月未満9,130円、妊娠6ヶ月以上13,790円、産婦8,480円です。
②障害者加算
障害者加算は、以下の条件に該当する場合に申請できます。申請の翌月から受給が可能です。
1-障害等級表の1級若しくは2級の場合又は国民年金法施行令別表に定める1級のいずれかに該当する障害のある者
該当する場合は1級地26,810円、2級地24.940円の増額となります。
2-障害等級表の3級又は国民年金法施行令別表に定める2級のいずれかに該当する障害のある者
該当する場合、1級地17,870円、2級地16,620円の増額となります。
③介護施設入所者加算
介護施設入所者加算は、生活保護受給者が介護施設に入所している場合に加算されます。しかし、障害者加算や母子加算の対象となっている場合には受給できません。
受給額は、月額9,880円の範囲内となります。
④在宅患者加算
在宅患者加算は、生活保護受給者が在宅で療養に専念している場合に対象となります。結核や3ヵ月以上の治療が必要な患者で、栄養の補給が重要と認められる場合に1級地13,270円、2級地13,270円が加算されます。
⑤放射線障害者加算
放射線障害者加算は、原子爆弾被害者で放射線障害が認定されている場合や、放射線を大量に浴びた事が原因の障害が認定されている場合に対象となる加算です。
原子爆弾被害者は44,620円、原子爆弾以外による放射線障害者は22,310円が加算されます。
⑥児童養育加算
児童養育加算は、生活保護受給者が児童を養育している場合に加算されます。世帯に児童がいる場合は、18歳の誕生日を迎えた後の最初の3月31日まで受給対象となり、1人につき10,190円が加算されます。高校に進学していない児童も3月31日まで対象となります。
⑦介護保険料加算
介護保険料加算は、生活保護受給者が介護保険の第1号被保険者である場合に、納付する介護保険料の実費が加算されます。
⑧母子加算
母子加算は、母子家庭と父子家庭が対象になる加算です。1人目は1級地18,800円、2級地17,400円が加算されます。2人目は1級地4,800円、2級地4,400円となり、3人目以上は1級地2,900円、2級地2,700円の加算です。
⑨冬季加算
生活保護世帯には、冬季に冬季加算があります。冬季加算とは、気温が低い冬季の暖房費用など、光熱費の増加に対して加算されるもので、11月から3月の生活扶助基準に上乗せされます。※4
支給額は各地域の気温に影響を受けるため、全国をI区からVI区に区分し、世帯の人数に応じ金額が加算されます。I区やII区は北海道や新潟などの寒冷区のため金額が高く設定されており、期間も長く10月から4月にかけて加算されます。
例えば、寒冷なI区の青森市は、単身世帯の場合 22,080円、温暖なVI区の水戸市の場合は、単身世帯で2,800円と、気温により大きく変わります。
⑩夏季加算
2024年6月現在、夏季加算という加算項目はありません。
しかし、夏の気温が上昇していることや、光熱費の値上がりなどを考慮し、現在自治体などから創設が求められています。※5
※1出典:厚生労働省「生活保護制度」参照:2024.06.27
※3参考文献:荘村明彦(2023.10.30)「生活保護手帳」中央法規出版(pp294-316.)
※4出典:厚生労働省「冬季加算について」p.3参照:2024.06.27
※5出典:大和郡山市「生活保護制度に夏季加算創設の検討を求める意見書」参照:2024.06.27
2.申請するにはどこに相談したらいい?
生活保護の加算項目に該当する場合は、市役所の福祉課や福祉事務所、ケースワーカーに相談し申請します。特に以下に説明する妊産婦加算や障害者加算は必要書類を用意し、早めに申請することをおすすめします。
①妊産婦加算を申請する場合
妊産婦加算を希望する場合は、母子手帳や医師の診断によって申請できます。妊娠が分かった場合には申請した翌月から受給できるため、早めに申請しましょう。
②障害者加算を申請する場合
生活保護の障害者加算を申請する場合には、手続きに証明書が必要になります。障害の程度が分かる書類や手帳を確認して用意します。証明書として使用できるものは以下の5つです。
- 特別児童扶養手当証書
- 国民年金証書
- 身体障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)
- 福祉手当認定通知書
- 医師の診断書、その他の障害の程度が確認できる書類
3.加算項目に該当する場合他の保護費は減る?
生活保護費の加算は保護が必要な状況にある生活保護受給者に、不足する金額を支給するための施策のため、基本的には受給したことで生活保護費が減額されることはありません。しかし、以下に説明するような、重複して受給することができない加算項目や障害等級により金額が変わるケースがあるため注意が必要です。※
①生活保護の重複調整
生活保護の加算項目には、重複調整があるため、障害者加算と母子加算を同時に受給することができません。その際は、いずれかの加算額が高い方を選択し受給します。
また、介護施設入所者加算も障害者加算や母子加算の対象となっている場合には受給できません。
②障害等級
障害者加算を申請する際には、認定されている等級に注意します。
障害等級は、障害年金の等級と障害者手帳の等級が異なる場合があります。その場合は、申請する際に障害年金と障害者手帳の等級を比較し、等級が高い方で申請します。申請が通らなかった場合には、再度低い方の等級で申請することが可能です。
障害等級が高いほど、生活や移動にかかる費用も高くなる傾向があるため、自身の障害等級に合った加算額を得られるよう、等級の確認は必ずしましょう。
※3参考文献:荘村明彦(2023.10.30)「生活保護手帳」中央法規出版(p316)
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