生活保護を申請したらどのくらいの確率で受給できるのか気になっていませんか?今回は最新のデータによる受給率と、生活保護費にどのような地域差があるのかについて解説します。
1.生活保護受給率はどのくらい?
生活保護の全国的な受給率については、厚生労働省が令和6年4月分の概数を、以下のように公表しています。※
①保護率(受給率)
保護停止中を含めた、生活保護受給者(被保護実人員)は、令和6年4月時点で、2,011,281人です。人口100人当たりの保護率は、1.62%で、前年同月と変わりませんでした。
②世帯の人員構成
生活保護を受給している世帯の人員構成は、単身世帯が51.5%と半数以上を占めています。また、高齢者の割合も高く、全体の55.5%が高齢者世帯でした。
③認定率
生活保護の申請件数は20,796件で、保護開始世帯数は18,833件です。認定率は約90.5%となり、申請の9割が認定されています。申請は、かなり高い割合で認定されています。
前年同月との比較では、申請件数が1,163件増加、認定件数が982件の増加となりました。
※出典:厚生労働省「生活保護の被保護者調査(令和6年4月分概数)の結果を公表します」参照:2024.07.07
2.生活保護受給率の地域差が起こる要因
厚生労働省のデータによると、生活保護の受給率は人口100人当たり1.62%でした。しかし、生活保護の受給率は、地域や自治体によって若干差があり、失業者が多い大阪府などは、全国平均の受給率よりも高くなる傾向です。地域差が発生する要因としては、以下のような点が考えられます。
①地域性
大阪、青森、沖縄など失業率が高い県では、生活保護の必要性が高くなるため、受給率も高くなる傾向です。※
②支援団体の活動
支援団体の活動が活発な地域は、ホームレスの生活保護申請のサポートなどにより、支援が活発ではない地域よりも受給率が高まる可能性があります。
③生活保護制度の認知度
生活保護の申請は、原則本人の意思表示によって手続きが開始されます。生活が困窮した場合に、生活保護を申請するという意識や、福祉事務所の認知度が高い地域は申請数が高くなることが考えられます。
④自治体の方針
生活保護は自治体の福祉課や福祉事務所が実施します。申請を受理した後の審査や手続きは自治体ごとに若干差があります。基本的な部分は、生活保護法と生活保護制度に定められていますが、細かな書類の体裁やこまかな審査基準、生活保護受給開始後の指導などは、各自治体の方針により異なります。受給率が平均よりも高い、低いの若干の誤差は、各地域や自治体の状況にもよると言えます。
※出典:埼玉県「労働力率、完全失業率(男女別)上位5都道府県及び埼玉県の順位」参照:2024.07.07
3.生活保護制度の改定と地域差
生活保護制度では、生活保護費の地域差に対する対策を実施しています。具体的には級地や級地を基準にした住宅扶助、気温差に配慮した冬季加算、期末一時扶助などで、格差の是正に努めています。※1
①級地とは
級地とは、日本国内を6つに区分しそれぞれに等級を割り当てたものです。生活保護費は、この等級を基準として算出されます。
級地は地域ごとの生活様式や物価に配慮するための区分であり、生活保護費の基準となる最低生活費の算出に級地区分の金額を反映します。級地を取り入れることで、各地域に適した金額差とすることが目的です。
現在は、1級地-1、1級地-2、2級地-1、2級地-2、3級地-1、3級地-2の6つに区分されており、最大で22.5%の格差が設けられています。
②住宅扶助
住宅扶助は、主に賃貸住宅の家賃として支給されます。住宅扶助の基準額は級地をもとに算出されます。
例えば、東京23区の級地は、「1級地-1」に該当するため、単身世帯の場合の住宅扶助基準額は53,700円です。静岡市の級地は、「2級地-1」のため、単身世帯で、基準額は45,000円となります。家賃の高い東京23区と地方都市の静岡市での地域差が、級地によって反映されます。※2
③冬季加算
気温の低い冬季には、暖房関連や衣服の費用が増加するため地域差を設けた冬季加算が行われます。11月から3月の間に生活扶助額に冬季加算額を上乗せします。
冬季加算の地区区分は、平均気温や平均最深積雪量などを基準に設定されています。I区からVI区まである冬季加算用の区分に、世帯人員と級地を含めて算出します。
④期末一時扶助
年末年始に一時的に増加する食費や被服費、家具などの需要に対応する扶助です。12月に級地をもとに算定され、世帯の人数によって増減します。
現在は、このような地域差によってカバーできない部分に関する対応が協議されており、生活保護制度の級地の改定に向けた動きがあります。
※1出典:厚生労働省「生活保護制度における地域差等について」参照:2024.07.07
※2出典:厚生労働省「最低生活費の算出方法(R5.10 )」参照:2024.07.07
4.地域差が生活保護受給者に与える影響とそれを解消する取り組み
生活保護制度では、支給する生活保護費に関しては地域差が必要であると判断しています。また、その地域差による支給額は多くの場合妥当となっていますが、生活様式や社会的な変化によって妥当ではない例外的な事例も見られることが問題となっています。
①妥当な地域差
冬季の暖房費用や衣服費が、寒冷地ほど高く、温暖な地域ほど低く設定されていることは、需要の大きさに対して妥当だといえます。
家賃も、都心部は部屋が狭く家賃が高いのに対して、地方は部屋が広く、家賃が安い傾向があるため、級地を反映した住宅扶助は地域差に合った支給額の決定に役立っています。
②地域差の例外
現在は、級地による地域差に例外があることが問題です。食品や日用品などを扱うスーパーやドラッグストアの場合、薄利多売が基本となるため人口が多い地域ほど安いという事例も散見されます。また、ガソリンやガスは人口の少ない地域に運ぶことにコストがかかるため、地方の方が都心部より高く、公共交通機関も少ないため移動費用が高いという現実があります。
その一方で全国チェーン店による、地方と都心の価格に違いがないケースもあり、適正な地域差への調整が必要です。
③級地区分の改定
2024年現在、厚生労働省は、級地区分の見直しを検討しています。現行の級地区分が設定された1987年当時と比べると、現在の生活が大きく変化しているためです。自治体からは実態に合わせた新たな級地区分が求められており、国と自治体による実態調査と分析が進められています。※
※出典:厚生労働省「生活保護基準における 級地区分の検討について」参照:2024.07.07
5.生活保護のご相談はリライフネットへ
今回は、生活保護の受給率や認定率、地域差について解説しました。
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