今回は、生活保護受給者が利用できる住宅支援サービスについて解説します。また、住宅支援サービスを利用する際の注意ポイントもまとめました。ルールを守りつつ、理想的な住居を探しましょう。
1.生活保護の住宅扶助制度について
生活保護の住宅扶助は、生活保護受給者の住居費用を支援する制度です。この制度は、生活保護受給者が安定した住まいを確保し、最低限度の生活を維持するために重要な役割を果たしています。
①住宅扶助の概要
住宅扶助は、家賃、地代、住宅の補修費、維持費などの住居に関する費用を対象としています。支給額は、地域や世帯人数によって異なり、一定の上限が設けられています。※1
②住宅扶助の基準額の決定方法
住宅扶助の基準額は、地域ごとに設定された「級地」(※2)を基に決定されます。日本全国は1級地から3級地に分類され、都市部ほど基準額が高く設定されています。この級地と世帯人数によって支給額が決まります。例えば、島しょなどの一部地域を除いた、東京都の単身世帯では、53,700円です。※3
③住宅扶助の対象外となる費用
住宅扶助は家賃や地代など、住居にかかわる費用が主な対象です。共益費や電気代、水道代などは原則として対象外となるため、これらの費用は生活扶助から支払う必要があります。
※1出典:厚生労働省「住宅扶助について」p.1参照:2024.09.02
※3出典:厚生労働省「最低生活費の算出方法 住宅扶助基準」参照:2024.09.02
2.リライフネットの住宅支援サービス
リライフネットは、生活に困窮している方々に対して総合的な支援を提供する組織です。特に住居の確保と生活保護サポートに力を入れており、生活保護受給中も利用可能です。以下のような特徴的なサービスを提供しています。
①緊急住居提供サービス
リライフネットは、現在住む家がない緊急性のある人にも対応できる、迅速な住居提供が特徴です。急に引越しが必要になった場合などにも対応できます。概要としては以下のような住居提供が可能です。
- 最短で相談翌日からマンションやアパートの提供が可能
- 初期費用なし、保証人や保証会社不要の物件あり
- 家具家電付きの物件も用意
②総合的なサポート
リライフネットでは、住居提供後に生活再建や日用品の支給などのサポートを実施しています。
提携先オーナー様のご理解とご協力の上、布団や食器類など最低限の身の回りの日用品も入居時にご用意しております。
③幅広い対象者
リライフネットでは、生活保護受給中の方以外に、現在家がない方、今後住居を失う可能性がある方、生活保護の申請をしたい方など、問題を抱えた幅広い方を対象にサポートしています。主に対象となる相談者は以下の通りです。
- 現在住居がない方
- ネットカフェ生活者
- 寮から退去しなければならない方
- 生活保護受給者や受給予定者
- 路上生活を強いられている方
④連携ネットワーク
リライフネットは、行政、不動産事業者、職業紹介事業者、NPO、ボランティア団体などと連携し、専門的なサービスの紹介や適切な機関への橋渡しを行っています。
⑤無料相談サービス
すべての相談は完全無料で行われ、専門的な回答やサポートを提供しています。
リライフネットは、生活困窮者に対して、住居の確保から生活再建までをワンストップで支援する総合的なサービスを提供しています。
3.その他の住宅支援サービス
生活に困窮した場合の住宅支援サービスは、リライフネット以外にも存在します。生活保護を受給していない場合は、以下の支援も選択肢となります。
①住居確保給付金
住居確保給付金は、生活が困窮した際に利用できる、住居を確保するための行政からの給付金です。家賃相当分の給付金を受給できます。※1
離職から2年以内などの要件を満たした場合に申請が可能です。受給期間は、原則3か月間(最大9か月まで延長可)で、生活保護の住宅扶助基準額を上限として、家賃額が支給されます。最寄りの福祉事務所が相談・申請窓口となります。
②総合支援資金貸付制度
総合支援資金貸付制度は、生活困窮者自立支援制度に含まれる行政支援の一つで、生活費用の貸付を行います。※2
この制度では、以下の3種類の資金貸付を行っています。
1.住宅入居費:住宅の賃貸契約を結ぶために必要な費用として、40万円以内の貸付を行います。
2.生活支援費:生活再建までに必要な生活費として、以下の金額を貸付します。
- 単身世帯:月15万円以内
- 複数世帯:月20万円以内
3.一時生活再建費:家財道具の購入費や滞納家賃等、生活再建に必要な一時的な費用として、60万円以内の貸付を行います。
地域の社会福祉協議会が窓口となります。
③臨時特例つなぎ資金貸付制度
臨時特例つなぎ資金貸付制度は、住宅支援制度を申請した後、支援の給付が始まるまでの当座の生活費がない場合に資金を貸し付ける制度です。
当座の生活費が必要な場合は、こちらの申請も同時に行います。条件として、生活困窮者自立支援法に基づく支援を受ける必要がありますが、無利子、連帯保証人不要で10万円以内の貸付を申請することができます。※3
※1出典:厚生労働省「住居確保給付金」参照:2024.09.02
※2出典:社会福祉協議会「総合支援資金のご案内」p.5
※3出典:岐阜県社会福祉協議会「生活福祉資金 臨時特例つなぎ資金貸付制度」参照:2024.09.02
4.住宅支援サービス利用の流れ
ここでは、行政による住宅支援サービスを受ける際の、一般的な流れを解説します。
①住居確保給付金を利用する場合
住居確保給付金を利用する場合は、以下の流れで手続きを行います。
1-申請の準備
お住まいの自治体のホームページや厚生労働省のウェブサイトで、最寄りの自立相談支援機関(相談窓口)を確認します。※1必要書類を準備します。一般的に以下の書類が必要です。
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど)
- 収入を証明する書類(給与明細など)
- 離職や収入減少を証明する書類
- 預貯金残高がわかる通帳のコピー
2-申請手続き
- 確認した相談窓口に電話をして、面談の予約を取ります。
- 面談で制度の説明を受け、申請に必要な書類の確認をします。
- 申請書類を記入し、必要書類と共に提出します。
- 自治体で審査が行われ、支給の可否が決定されます。
- 支給が決定した場合、給付金は自治体から直接家主さんに支払われます。
3-支給後の手続き
- 原則3か月間(最大9か月まで延長可能)支給されます。
- 支給期間中は誠実に求職活動を行う必要があります。
- 定期的に求職活動状況の報告を行います。
住居確保給付金は、離職や収入減少により住居を失うおそれがある方を支援する制度です。申請の詳細は自治体によって異なる場合があるため、必ず最寄りの相談窓口に確認することが重要です。
②総合支援資金貸付制度を利用する場合
総合支援資金貸付制度を利用する際の一般的な流れは以下のとおりです。※2
1-相談窓口の確認
お住まいの市区町村の社会福祉協議会に連絡し、相談窓口を確認します。
2-初回相談
窓口で制度の説明を受け、申請に必要な書類の確認をします。
3-申請書類の準備
必要書類には以下のようなものがあります。
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 収入を証明する書類(給与明細など)
- 離職や収入減少を証明する書類
- 預貯金残高がわかる通帳のコピー
4-申請書の提出
準備した書類と共に申請書を提出します。
5-審査
社会福祉協議会で審査が行われます。
6-貸付決定
審査の結果、貸付が決定した場合は通知を受け取ります。
7-資金交付
決定後、資金が交付されます。生活支援費の場合は分割で交付されることがあります。
8-継続的な支援
貸付期間中は継続的に求職活動状況について報告が必要です。
9-返済
据置期間後、返済が始まります。ただし、一定の条件を満たす場合は返済免除の可能性があります。
総合支援資金の利用には、原則として生活困窮者自立支援制度における自立相談支援事業の利用が要件となります。この制度を通じて、経済的な支援だけでなく、就労支援や家計指導などの継続的な相談支援も受けることができます。
③臨時特例つなぎ資金貸付制度を利用する場合
臨時特例つなぎ資金貸付制度を利用する場合の一般的な流れは以下のとおりです。※3
1-相談窓口の確認
お住まいの市町村の社会福祉協議会に連絡し、相談窓口を確認します。
2-申請資格の確認
以下の条件を満たしているか確認します。
- 住居の確保が予定されている離職者であること
- 公的給付制度または公的貸付制度の申請が受理されていること
- 給付金等交付までの生活に困窮していること
- 借入申込者名義の金融機関口座を持っていること
3-必要書類の準備
一般的に以下の書類が必要です。
- 借入申込書
- 公的給付制度または公的貸付制度の申請が受理されたことを証明する書類
- 本人確認書類
- 借入申込者名義の金融機関の預金通帳の写し
- 借用書
- 暴力団員に関する同意書
4-申請手続き
社会福祉協議会の窓口で申請手続きを行います。この際、準備した書類を提出します。
その後、社会福祉協議会で貸付審査が行われます。
5-貸付決定
審査の結果、貸付が決定した場合は通知を受け取ります。
6-資金交付
貸付金は借入申込者の口座に一括で振り込まれます。
7-返済
申請していた公的給付または公的貸付の給付金等の交付を受けた日から1か月以内に、原則として貸付金全額を一括返済します。
貸付限度額は100,000円以内で、無利子です。また、この制度は生活困窮者自立支援法に基づく支援を受けることが原則として要件となっています。
※1出典:厚生労働省「住居確保給付金 手続きの流れ」参照:2024.09.18
※2出典:政府広報オンライン『生活にお困りで一時的に資金が必要な方へ「生活福祉資金貸付制度」があります。』参照:2024.09.18
※3出典:福島県「臨時特例つなぎ資金貸付制度のご案内」参照:2024.09.18
5.生活保護受給者の住宅探しのポイント
生活保護受給中に、住宅支援サービスを利用して引越しする場合は、以下のポイントに注意が必要です。
①引越しの許可を得る
生活保護受給中の引越しには許可が必要になります。引越しを検討している場合は、最初に担当のケースワーカーと相談し、許可を得ましょう。
②住宅扶助の上限額を確認
地域や世帯構成によって住宅扶助の上限額が異なります。ケースワーカーに、上限額を確認し、その範囲内の物件を探す必要があります。
③不動産会社の選択
生活保護受給者の入居に理解のある不動産会社を選ぶことで、スムーズな物件探しが可能になります。しかし、生活保護受給中は、通常の物件探しでは、入居を断られるケースが多いため、住宅支援サービスで紹介された物件などを中心に探すことがおすすめです。
④初期費用の支給条件の確認
敷金や礼金などの初期費用は一定の条件を満たした場合に、生活保護から支給されます。事前にケースワーカーに支給条件に該当しているかどうかを確認しましょう。
6.まとめ
今回は、住宅支援サービスについて解説しました。生活保護受給中に引っ越しを検討している場合は、住宅支援サービスへ相談することがおすすめです。
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