1.生活保護とは何か?

全ての法律の基本となる日本国憲法は、第二十五条第一項で「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と、いわゆる生存権を保障しています。また第二項には「国は…社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」という規定があり、生存権を具現化する制度として、生活保護は日本の社会保障の根幹をなしています。

生活保護の根拠となる法令として生活保護法(以下「法」)があり、同法第一条で生活保護の目的を「最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長すること」と定めています。

法が定める要件を満たす日本人は、生活困窮の原因や性別などを問わず誰でも保護を受けられるという原則については、法第二条に規定があります。しかし法第七条では申請保護の原則を謳っており、条件をクリアしても申請しなければ保護を受けられません

生活保護の実施状況については、国が毎月行っている「被保護者調査」の調査結果が公表されています。

調査結果によれば、2022年12月末時点で164万6686世帯202万6763人が生活保護を受給しています。また同月には1万7706件の申請があり、1万7532世帯が保護開始となっています。

2.生活保護の仕組みを簡単に解説

生活保護の仕組みは、国が定める最低生活費と世帯収入を比較し、収入が最低生活費に満たない場合不足分を支給するというものです。

生活保護は日本国内における多くの社会保障制度と同様、要否判定や保護費の支給を世帯単位で行う「世帯単位の原則」が適用されます。そのため、原則として一部の世帯員だけ保護を受けることができません。

最低生活費は生活場面に応じ、

生活扶助

住宅扶助

教育扶助

医療扶助

介護扶助

出産扶助

生業扶助

葬祭扶助

という8種類の扶助で構成されています。

実際の額は世帯員の人数や年齢、居住する地域によって変わり、ここでは最低生活費の算定例として、50歳・42歳・28歳の3人世帯が

・東京23区内

・東京都西多摩郡奥多摩町

で生活する場合をご紹介します。

具体的には

Ⅰ類*係数1+Ⅱ類の合計に0.855を乗じた算式Aと、異なる基準の算式Bを比較して、金額が高い方が最低生活費として採用されます。

東京23区内は1級地1にあたり、生活費は以下のとおりになります。

BよりAの方が多いので、最低生活費は15万1600円となります。

同じ東京都でも、西多摩郡奥多摩町は3級地1で、生活費は以下の額に下がります。

AよりBの方が多いので、最低生活費は13万2509円です。

上記例は生活費のみの紹介ですが、収入が生活費相当分を上回る場合は住宅費や教育費、医療費などを加算して比較し、要否判定や支給額の決定を行います。

比較する収入は原則として、種類を問わず世帯に入るあらゆる金銭が収入認定されます。しかし例外的な取り扱いとして、一部収入認定されない項目があります。また自立意欲を削がないよう、就労収入は額によって一部が収入から控除されます。

収入認定の詳細は福祉事務所が判断するので、「これは収入ではない」と自己判断せず、逐一ケースワーカーに申告・報告しましょう。

3.生活保護を受給する条件とは

生活保護を受給するためには、世帯収入が最低生活費に満たないという最大の要件がありますが、ほかにも申請前に条件をクリアしなければなりません。それが法第四条第一項でいう「保護の補足性の原理」で、利用できる資産や能力の活用などあらゆる手段を生活維持のために講じる必要があります。

保護費は最低生活費と毎月の収入の比較により算定しますが、申請時の要否判定には手持ち金や預貯金など、あらゆる資産が含まれます。中には不動産や生命保険など即時の現金化が難しいものがあり、この場合であっても金銭換算した額を要否判定で使用します。

また法第四条第二項では、扶養義務者からの不要及び他法の施策を優先する旨が定められています。高齢者や障がい者の年金受給や失業した人の雇用保険手当などが、他法施策のわかりやすい例といえるでしょう。

これらを総称して、実務上「他法他施策の優先」と呼ばれています。生活保護は社会保障の「最後の砦」ともいわれる制度のため、他の施策で救済できない人を救うという仕組みになっているのです。

4.生活保護を受けた人の暮らしぶり

生活保護を受けることにより、「健康で文化的な最低限度の生活」が保障されます。決して贅沢な暮らしこそできませんが、病気や障がいのある人は療養や自立訓練などに集中することができます。

老齢基礎年金しか受けていなかった高齢者の暮らしぶりも、多少は恵まれたものとなります。仕事が見つからず保護を受けている人は、安心して求職活動をしたり様々な職業訓練を受けたりすることで、将来の青写真もはっきりと描けるでしょう。

そのため生活保護は、きちんとした生活を保障する制度として非常に有用です。一方ごくわずかですが、一部の受給者の中には「もらった保護費をパチンコや遊興費に充てたりアルコールで消費したりという人がいる」というのも事実です。

保護費の使い道自体は制限されていませんが、計画的な金銭管理をしないと生活費が足りなくなり、受給者の中には、支給日直前の一週間を数百円の手持ちで生活しなければならないという人もいます。

5.生活保護を受給する人が必ず受けるデメリット

生活保護を受ける人には、必ず受けるデメリットに加え、デメリットと感じてしまう点などがあります。

生活保護は日々の暮らしを保障するものなので、不動産をはじめとした資産の形成は認められていません。特に自動車の保有が認められないというのは、資産という側面だけでなく日常生活で不便さを感じることにもつながります。

子育てをしている世帯なら、子どもの将来に備えた蓄えをしておきたいところですが、高額な預貯金や生命保険も資産として扱われるため、この点は将来的なデメリットといえるでしょう。

またデメリットではないものの、とらえ方によってはデメリットといえる点もあります。

生活保護の受給は憲法で認められる権利の行使にすぎませんが、受給者によっては生活保護を受けているという事実に後ろめたさを感じる人がいるかもしれません。実際一般住民の中に、生活保護受給者に対して偏見を持つ人がいるという事実もあります。

賃貸住宅に住んでいる人は、条件に合う賃貸を探しにくいというデメリットもあります。居住移転の自由は憲法で保障されていますが、家賃の保護にあたる住宅扶助の基準には上限があります。大家さんや管理会社によっては、生活保護受給者お断りという場合もあるため、事実上のデメリットと感じるかもしれません。

生活保護を受給している期間は、実態に即した保護や自立支援をするため、福祉事務所のケースワーカーが定期的に世帯を訪問します。これを苦痛に感じる人がいるかもしれませんが、ほとんどの場合は茶飲み話程度の会話です。むしろ積極的に応対してケースワーカーとの信頼関係を築き、いつでも相談できるようにしておくのがよいかもしれません。

6.生活保護の申請前はリライフネットに相談しよう

生活保護は額が決まっている手当や年金と違い、生活実態に合わせた保護を行うために仕組みは非常に複雑です。また条件や暮らしぶり。デメリットなど、知っておきたいポイントが多いという点から、申請をためらう人もいるのではないでしょうか。

生活困窮者へのトータルサポートを提供するリライフネットでは、生活保護の申請や住まい探しの支援を得意としています。相談は完全無料なので、生活保護の申請を検討している人は一度リライフネットに連絡してはいかがでしょうか。