1.生活保護を受給している時に確定申告は必要?

生活保護制度は、最低限の生活を保障するために経済的に困窮している個人や家庭に対して支給されます。

しかし、受給者が生活保護とは別の所得がある場合、その所得によって生活保護の受給資格や受給額が調整されます。所得があるということは、年末調整もしくは確定申告の必要があるということです。

確定申告は、受給者が得た所得を正確に申告し、税務上の処理を適切に行うために必要で、一般に所得税の計算や納税、還付申請のために行われますが、生活保護受給者にとっては、所得による生活保護受給資格への影響を明確にするための手段となるのです。

たとえば、フリーランスとして働いている受給者がいる場合、その年に得た収入を確定申告を通じて申告することで、生活保護の受給資格に影響を及ぼす所得があるかどうかを確認することができます。

また、確定申告を行うことで、適切な税金の還付を受けることが可能になる場合もあります。所得が一定額以下の場合、所得税が還付されることがあり、これにより受給者の実質的な収入が増加することになるのです。

2.生活保護受給中に働いたことによる収入がある場合の申告について

生活保護受給中に働いたことによる収入がある場合、その申告は生活保護の受給資格や受給額に直接影響を及ぼします。

日本の生活保護制度は、受給者が最低限の生活を維持できるよう支援することを目的としていますが、受給者が就労などによって外部から収入を得た場合、それが受給額の調整につながります。

生活保護受給者が働いたことによる収入は、生活保護費の算定において考慮される必要があります。収入があることを隠さずに正確に申告することが重要であり、申告された収入に基づいて、生活保護の受給額が調整されることになります。

働くことによって得られた収入が生活保護基準を上回る場合、その超過分によって生活保護費が減額されることがあります。しかし、労働による収入が生活保護基準に達しない場合でも、その収入は申告する必要があり、受給額の計算に影響を与えます。

また、働いたことによる収入の申告は、福祉事務所に対して行う必要があります。申告は、収入が発生した月の翌月に行うのが一般的ですが、収入の申告を怠ると、後に生活保護の受給資格の喪失や返還請求の対象となる可能性があるため、収入の種類や額によっては、その都度、社会福祉課や担当ケースワーカーに相談することがおすすめです。

届け出の際は、担当のケースワーカーに収入申告書や資産申告書といった収入が分かるものを提出することが必要です。

3.生活保護受給中に働いたことによらない収入がある場合の申告について

生活保護受給中に働いたことによらない収入、例えば贈与や遺産相続などの非労働収入がある場合の申告については特に注意が必要です。

生活保護制度は、経済的に困難な状況にある人々が最低限の生活を送ることができるように設計されていますが、受給者が一定額以上の収入を得た場合、その収入は生活保護の受給資格や受給額に影響を及ぼす可能性があります。この時の収入は就労による収入に限らないのです。

厚生労働省の生活保護基準によると、生活保護受給者が収入を得た場合、その収入は原則として生活費に充てるものとされています。非労働収入も例外ではなく、これらの収入についても受給資格の見直しの対象となり得ます。

非労働収入がある場合、受給者はその収入を福祉事務所に申告する必要があります。この申告は、生活保護の受給額の適切な計算を行い、受給者が引き続き生活保護の資格を有しているかを確認するために重要です。

計算には得た金額だけでなく、収入が一時的なものであるか、継続的なものであるかによっても判断され、その先の取り扱いが異なる場合があります。

非労働収入が生活保護の基準額を超える場合、生活保護の受給資格を失う可能性があります。しかし、これは一時的な収入である場合や、特定の条件下で受けられる収入の場合、例外的な取り扱いがなされることもあります。

重要なのは、受給者が透明性を持って収入を申告し、必要に応じて相談を行うことです。

4.不正受給とならない為にすべきこと

不正受給に対しては返還金・徴収金が発生したり、悪意性が高いと判断された場合は生活保護法違反による懲役または罰金刑、刑事告訴により詐欺罪に問われることもあるため、結果的に大きな不利益に繋がってしまいます。

不正受給を防ぐためには、受給資格、所得、資産などに関する情報を正確に、かつ、透明性を持って申告することが必要です。

生活保護の適正な受給のためには以下の点が重要です。

①全ての所得を申告する

 生活保護申請時および受給中において、労働所得、不動産所得、年金、その他あらゆる所得について正確に申告することが求められます。

②資産状況を正確に報告する

現金、預貯金、不動産、車両など、あらゆる資産について正確な情報を提供する必要があります。

③変更があった場合は速やかに報告する

受給資格に影響を及ぼす可能性のある所得や資産状況の変更があった場合は、直ちに福祉事務所にその旨を報告することが必要です。

④指導・勧告に従う

生活保護の受給中に市町村から提供される指導や勧告がある場合、それに従うことで不正受給のリスクを低減できます。

厚生労働省は、不正受給を防ぐためにガイドラインの遵守を強く推奨しています。不正受給は、必要な支援を受けることができるべき人々に対する不公平を生み出し、社会保障制度全体の信頼性を損なうため、非常に重要な問題です。

適切な申告と透明性の確保は、生活保護制度の公平性と効率性を維持するために不可欠です。生活保護を受ける資格がある個人が適切な支援を受けられるように、また、制度の持続可能性を保つために、受給者および申請者はこれらの責任を認識し、積極的に行動する必要があります。

ガイドラインは担当のケースワーカーや福祉事務所、各市町村のホームページなどで確認するようにしましょう。

不正受給は百害あって一利なし。正直に申告し、相談し、指示を仰ぐようにしましょう。

5.生活保護受給者の税金について

生活保護受給者が支払うべき税金については、受給者の所得や資産、受け取る支援の種類によって異なります。日本の税制下で、生活保護受給者にも一定の条件下で税金の支払い義務が生じる場合があります。

①所得税

労働収入や不動産からの収入など、所得を得た場合、その所得に対して所得税が課税されます。

ただし、生活保護受給者や所得が一定額以下の場合には、税金が減免される場合もあります。

②住民税

所得がある生活保護受給者は、住民税の対象となる場合があります。しかし、住民税には非課税世帯に対する措置が設けられており、所得が低い場合には非課税となることがあります。

③固定資産税

生活保護受給者が不動産を所有している場合、その不動産に対する固定資産税が課税されます。ただし、生活に必要な最低限の住宅に対しては、軽減措置が適用される場合があります。

生活保護受給者に課税される税金は、その受給者の具体的な所得や資産の状況に応じて異なります。生活保護の目的は、受給者が基本的な生活を維持できるように支援することにあるため、税金の課税も受給者の経済状況を考慮した上で適切に行われるべきです。

また、生活保護受給者が税金を支払う義務が生じた場合でも、福祉事務所や税務署は、その人の状況に応じた適切な相談支援を行います。

生活保護受給者の税金に関する正確な情報や支援については、厚生労働省や福祉事務所、税務署などの公的機関から得ることが重要です。

これらの機関は、生活保護受給者が適切な税務処理を行えるように、具体的な指導や相談支援をしています。

生活保護受給者は原則として免除されている税金も多いですが、収入の増加によって廃止になる見込みがある際は予め税金のことも頭に入れておきましょう。

6.確定申告で利用できる控除と生活保護受給の関係

生活保護受給者が確定申告を行う際に利用できる控除とその受給資格との関係については、税法と生活保護法の規定に基づき適切に理解することが必要です。

日本の税制には、所得税の計算時に利用できる様々な控除が設けられており、これらの控除を適用することで税負担を軽減することが可能です。

しかし、生活保護受給者の場合、これらの控除が受給資格にどのような影響を与えるかを理解することが重要です。

生活保護受給者に限らず、その収入や所得に応じて、所得税の確定申告を行う必要があります。確定申告において利用できる控除には、基礎控除、配偶者控除、扶養控除、医療費控除などがあります。

これらの控除を適用することにより、所得税の負担が軽減される可能性がありますが、控除後の所得額が生活保護の受給基準に影響を与えることもあり得ます。

生活保護法の規定通りどのような収入であっても必ず申告する必要があり、確定申告によって発生した還付金も例外ではありません

生活保護受給者が確定申告を行う際には、利用可能な控除を全て検討し、その適用が生活保護の受給資格にどのような影響を及ぼすかを十分に理解するようにしましょう。

また、所得や控除に関する変更が生じた場合は、速やかに福祉事務所に報告することが必要です。

また、確定申告は期間も決まっており内容も煩雑なため、生活保護受給者が確定申告で利用できる控除とその受給資格の関係については、厚生労働省や税務署、専門の税理士などの専門家やケースワーカーからのアドバイスを得るようにしてください。

これにより、適切な税務処理を行いつつ、生活保護の受給資格を維持するための正確な情報と支援を受けることができます。

7.生活保護受給者の確定申告でよくあるご質問Q&A

Q: 生活保護受給中の医療費は確定申告で控除できますか?

A: はい、生活保護受給者が支払った医療費については、一定の条件のもとで医療費控除の対象となることがあります。

ただし、公的な医療保険からの補償を受けた部分は控除の対象外です。年間で支払った医療費が一定額を超える場合にこの控除を利用できます。

Q: 生活保護受給者が受け取る年金は確定申告の必要がありますか?

A: 受給する年金の種類によりますが、年金収入が一定額を超える場合、確定申告が必要になることがあります。年金収入には所得税が課されることがあり、その額を正確に申告することが必要です。

ただし、生活保護受給者の場合、年金収入が生活保護の受給額に影響を与えることもありますので、詳細は専門家に相談することをおすすめします。

Q: 生活保護受給中に副業収入がある場合、どのように申告すれば良いですか?

A: 生活保護受給中でも副業で収入を得た場合は、その収入を確定申告で申告する必要があります。収入額に応じて所得税が課される可能性がありますが、収入が生活保護受給資格に与える影響についても考慮する必要があります。

副業収入も必ず福祉事務所への報告が必要です。

Q: 生活保護受給者が不動産を売却した場合、確定申告はどうなりますか?

A: 生活保護受給者が不動産を売却して得た利益は、確定申告の対象となります。

不動産売却による所得(譲渡所得)には所得税が課されるため、その詳細を申告する必要があります。また、売却益が生活保護の受給資格に影響を及ぼす可能性があるため、売却前後に福祉事務所に相談してください。

8.まとめ

生活保護受給者が確定申告を行う際には、所得の種類やそれぞれの金額、控除の適用など、多くの重要な点を理解し正確に申告することが求められます。

特に、働いた収入、医療費控除、年金収入、副業や不動産売却からの利益など、様々な収入に対して適切な申告を行う必要があります。

かなり複雑に感じられるかもしれませんが、生活保護の受給資格や支給額に影響を与えず、税務上の義務を遵守するためにも、専門的なサポートを受けるようにしてください。

リライフネットでは、上記のような悩みの前段にある「住まいの確保」「必要な方への生活保護のサポート」を行っております。

また、住まいの確保後には「収入」や「確定申告」等のお悩みにも適切な窓口への誘導を行うこともできますので、ぜひご相談ください。