1.生活保護で受給できる「生業扶助」とは

「生業扶助」とは、日本の生活保護制度の一環として設けられた支援策で、生活保護受給者が自立した生活を送るための支援を目的としています。

具体的には受給者の就労能力を高めるための職業訓練や就職活動に関わる費用を補助するものです。

①生業扶助の目的

生業扶助の主な目的は、生活保護受給者が経済的に自立することを支援することです。

これには、職業訓練を受けるための費用、就職活動に伴う経費、または自営業を始めるための初期投資などが含まれます。

生業扶助は、受給者が自分の能力を活かし、持続可能な職に就くことを促進するために重要な役割を果たします。

②生業扶助の種類と支援内容

生業扶助にはいくつかの種類があり、具体的な支援内容は以下の通りです。

1-職業訓練支援:

生業扶助の重要な要素の一つは、職業訓練費用の支援です。

受給者が職業能力を向上させるために必要な訓練や教育プログラムへの参加費用は、この扶助を通じて負担されます。

これには、専門学校の学費、資格取得のための講習費用、またはその他の職業訓練に関連する費用が含まれます。

2-就職活動支援:

就職活動に必要な交通費、面接時の服装購入費用、履歴書作成費用など、就職に向けた活動をサポートするための費用も支給されます。

この支援は、受給者が就職活動を効果的に行い、適切な職に就くための負担を軽減します。

3-自営業開業支援:

事業を始めるための初期投資や、事業開始に伴う具体的な経費も、一部サポートの対象となります。

4-高等学校等就学費:

生活保護世帯の子供が高校に通う際に必要となる「授業料」「教材費」「学用品」などの購入費が負担されます。全日制の高校に限らず、定時制や通信制、高等専門学校等でも適応されます。

参考:生業扶助及び一時扶助について(平成25年度資料・2024年2月閲覧)

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000030045.pdf

③生業扶助の重要性

生業扶助は、単に経済的な支援を行うだけではなく、生活保護受給者に対して、より広い意味での自立への道を開くことを支援するものです。

職業訓練を通じて、受給者は新しい技能や知識を習得し、就職市場での競争力を高めることができます。

また、就職活動の支援は、受給者が自分に合った仕事を見つける上での大きな助けとなります。

2.生業扶助を受給する条件

生業扶助の対象者は、生活保護を受給している家庭または個人であり、一定の就労能力を有していなければなりません。

これは、実際に働く能力がありながら、失業やその他の事情により適切な就労ができていない場合を指します。

具体的には、就職活動を行っているが仕事が見つからない、あるいは職業訓練を受けてスキルを習得しようとする人々が該当します。

生業扶助を受給するためには、受給者が現在の職業状況や職業訓練の必要性を示すため、所定の申請手続きを行う必要があります。

また、生業扶助の申請は、受給者が居住する市区町村の福祉事務所を通じて行われます。

生業扶助の対象には、就職活動に関連する交通費、面接や就業に必要な服装の購入費用、必要な資格取得や技能習得のための職業訓練費用などが含まれます。

これらの費用は、受給者が就職に向けた準備や職業訓練を受けるための経済的負担を軽減し、より良い就職機会を得るための補助になります。

重要なのは、生業扶助が受給者の短期的な生活支援にとどまらず、長期的な自立と社会への再統合を目指すための支援であるという点です。

生業扶助を通じて、生活保護受給者は自己能力の向上や新たな就職機会を経て、最終的には生活保護からの脱却を目指すことができます。

この制度は、受給者が自立した生活を送るための重要なステップであり、社会全体の福祉の向上にも寄与します。

生業扶助の申請と受給には、適切な情報収集と計画が必要です。

受給者は、自分の職業的ニーズや目標を明確にし、必要な支援を得るために地域の福祉事務所や専門家に相談することが重要です。

また、生業扶助の利用は、受給者の現在の生活状況と将来の目標に適した形で行うべきであり、個々の受給者に合わせた柔軟な対応が求められます

3.生業扶助で負担してもらえる費用と支給額

職業訓練や就職活動など、生業扶助でカバーされる費用とその支給額は、具体的な費用や必要性に基づいて決定されます。

各生業扶助の上限は以下の通りとなります。

①技能修得費

技能修得費は、内容によって基準額が異なります。

1-基準額

技能修得費の基準額は、75,000円となります。ただし何らかの事情がある場合は124,000円まで支給されることがあります。

また修得に2年以上かかる場合は2年を期限として年1回上記の金額が支給され、1年に複数回の技能修得がある場合は上限額が199,000円以内まで上がる事もあります。

2-特別基準

下記に該当する場合は上記基準額とは異なり、最大で380,000円まで支給されます。

・自動車運転免許を取得する場合

・専修学校もしくは各種学校において技能を修得する場合で、世帯の自立助長に資することが確実に見込まれる場合

・厚生労働大臣の指定する教育訓練講座を受講する場合であって、世帯の自立助長に効果的と認められる場合(原則講座修了によって世帯の自立助長に効果的と認められる公的資格が得られるものに限る)

3-技能修得費の返還

支給期間中に退学・休学や他の就業支援金の受給、本来使用すべき目的以外で利用している場合などは支給の停止や返還金が発生する事もあります。

②就職支度費

就職支度費の上限は28,000円で、社会保険に加入することが条件となります。非正規雇用の場合も社会保険に加入していれば支給の対象です。

③生業費

生業費の上限は45,000円です。ただし、生業費は他の生業扶助とは異なり、新規事業を始めるというリスクを伴う内容となるため、申請に対して納得させることができるだけの明確な事業計画や根拠が必要となります。

ただし、生業費として認められる経費が、やむを得ない事情で基準額では足りないと判断される場合に限っては、特別基準額75,000円以内が適用される事もあります。

④高等学校等就学費

高等学校等就学費については他の生業扶助と異なり、費用の上限に地域差があります。

1-内容と上限

扶助項目と金額については以下の表のとおりです。

項目金額
基本額5,300円(月額)
教材費実費(正規の授業で使用する教科書や教材)
授業料無償化
入学金・受験料・入学準備金都道府県立(市町村立立高校の場合は市町村立)の高校授業料相当額
交通費実費分(必要最小限)
学習支援費(部活動費)5,010円(月額)

2-教育扶助との違い

義務教育に関する教育扶助とは異なり高校進学は必ずしも必要という訳では無いため、最低限度の保障するという生活保護の制度上は高校進学の費用を教育扶助で賄うことはできません

よって「仕事に就くために必要な技能を修得するための扶助」である生業扶助で高校生活にかかる費用を賄うのです。

ただし生業扶助で支援できるのは高校卒業までで、その先の大学や専門学校への進学は奨学金制度の利用などで賄うこととなります。

生業扶助を受けるためには、就業に関連する具体的な計画や、費用の見積もりなど、必要な情報を提示することが求められます。

また、受給者の就業に向けた取り組みや進捗状況が定期的に評価され、支援の継続が決定されます。

このように、生業扶助は、個々の受給者のニーズに応じて柔軟に運用されています。

4.申請方法と受給までの流れ

生業扶助の申請においては、どのような理由で何の費用が必要なのかを正確に申告する必要があるため、

  • 申請書
  • 生活保護受給証明書(生業扶助受給証明書)
  • 振込先口座

が必ず必要になります。

受給証明書に関しては、手元に無ければ福祉事務所で発行してもらうことができます。

技能修得費と就業支度費など2つ以上を同時に申請することはできません。

まずはケースワーカーに相談してから申請の準備に取り掛かるようにしましょう。

5.まとめ

生活保護制度の一環として、生業扶助は受給者が安定した生活を営むための支援を行います。

この扶助は、就労に必要な資格取得や訓練、就職活動にかかる費用を補助するもので、受給資格は現在の収入や資産、就労への意欲などに基づいて判断されます。

支給される費用は、訓練費用や資格取得費用、移動費など就労に直接関連するもので、支給額は個々の状況に応じて異なります。

申請は最寄りの市町村役場で行い、必要書類の提出と面接を経て審査が行われ、承認されれば支給が開始されます。

この制度を通じて、生活に困窮された方が自立した生活を築くためのサポートが行われます。

リライフネットでは、生業扶助の前提となる生活保護の受給や住宅の確保をサポートすることができます。

無料相談も行っているので、お気軽にご相談ください。