1.生活保護受給者はなぜ賃貸契約を断られることが多いのか
生活保護を受けているというだけで賃貸を借りられないという合理的な理由はありませんが、不動産会社や大家さんの中には保護受給者の入居を断る人がいるのも事実です。
その理由として考えられるものを、いくつか紹介します。
①家賃を滞納されることが心配なため
生活保護受給者が賃貸契約を断られやすい理由としてまず考えられるのは、家賃滞納を不安視されているというものがあります。
生活保護を受給しているかどうかを問わず、家賃の取りっぱぐれは不動産会社や大家さんにとって大きな痛手となります。生活保護では家賃補助にあたる住宅扶助が支給されるのですが、滞納されたときのリスクをおそれて入居を断るのではないでしょうか。
②契約まで時間がかかるため
生活保護受給者が賃貸契約を結ぶ場合、条件にあう物件でも即日契約ができないというデメリットがあるため、この点も保護受給者の入居が敬遠される理由として考えられます。
基本的には入居希望者とのやり取りで手続きを進めることになりますが、生活保護受給者が契約を結ぶには生活保護の継続や費用支出の観点から、福祉事務所へ事前に相談し、物件契約に係る合意(実質的には実質的には許可に近いものです。)を得なければなりません。保護開始決定ほどの日数は要しないものの、物件を見つけた旨をケースワーカーに伝えてから、許可が出るまでは数日から1週間ほど余裕を持たせておかなければなりません。
保護を受けていない人が同じ物件を即決で希望する場合もあるので、不動産会社や大家さんが入居を断るケースは珍しくないかもしれません。
③近隣住民とのトラブルを懸念するため
年齢や性別、職業を問わずどんな入居者でも、住民同士のトラブルは不動産会社や大家さんから嫌われます。
生活保護を受けている人であっても生活状況は変わらないのですが、ごく一部の受給者が起こすトラブルが目立つため、受給者に対して「生活保護=トラブルの種」という偏見が生じます。
本来あってはならないことですが、トラブル予防という観点から生活保護受給者の入居を断る事例も少なくありません。
2.生活保護でどこまで支援が受けられる?
生活保護は生活実態に応じた8種類の扶助があり、住まいに関する扶助として住宅扶助があります。アパートなど賃貸暮らしの世帯に対しては一定の基準内の範囲で家賃相当分が支給されますが、居住地や世帯員の人数により基準額は異なります。
例えば東京23区では、単身世帯で5万3700円(面積により上限は異なる)、2人世帯で6万4000円、3~5人世帯では6万9800円が上限となり、大阪府大阪市ではそれぞれ4万円、4万8000円及び5万2000円が上限です。一方同じ県庁所在地でも、宮崎県宮崎市では2万9500円、3万5000円、及び3万8300円と、大きく差があることがわかるでしょう。
場合によっては家賃と管理費、共益費などを一緒に支払う賃貸もありますが、家賃以外は住宅扶助の対象には含まれません。
3.生活保護受給者が賃貸を借りるときの手続きの流れ
生活保護を受けている人が賃貸を借りる場合、ふらりと不動産会社に行き物件を見つけ即日契約、というわけにはいきません。
福祉事務所には生活状況が変わるという報告と同時に、賃貸契約や引っ越し時にかかる費用を扶助してもらうための申請をしなければなりません。これは賃貸契約に限った話ではないので、生活上の変化があるときは随時ケースワーカーに相談する、ということを念頭に置きましょう。
①ケースワーカーに相談して福祉事務所からの許可を得る
生活保護受給者が賃貸契約を結ぶには、引っ越しや費用の扶助などが「世帯の自立につながる」ということを福祉事務所に認めてもらう必要があります。具体的な物件探しを始める前に、あらかじめ担当ケースワーカーへ相談しましょう。
また家賃補助にあたる住宅扶助は上限があるので、許可を得る際基準額も改めて確認しておきたいところです。
②不動産会社などで希望の物件を探す
家賃が住宅扶助の基準内に収まることを中心に、希望する条件にあう物件を探したり内見をしたりして、入居するアパートの候補を決めます。
契約前に再度福祉事務所から許可を得なければならないので、見積を作成してもらいケースワーカーに物件情報を報告しましょう。物件によっては入居審査を受ける必要が生じるため、どのタイミングで申込み手続きをしてよいかの確認も必要です。
また引っ越しにあたって扶養義務者や知人からのサポートが得られない場合、引っ越し作業は業者へ依頼することになります。引っ越し費用の扶助も必要な人は、引っ越し費用の見積も同時にしておきましょう。
③賃貸契約を結ぶ
福祉事務所からの許可が出たら、正式な契約を結びます。契約時に初期費用の支払いが必要となるので、一時扶助の支給日をあらかじめ確認した上で契約日を決めておきましょう。
契約手続きや引っ越しが済んだら、ケースワーカーにその旨を報告します。契約書や領収書を呈示して、一連の手続きは完了となります。
4.審査の時にどんなことが聞かれるのか
生活保護を受けているか否かに関わらず、アパートを借りる前には入居審査が行われます。不動産会社や大家さんがどのような点を気にしているのかを知っておくと、十分な対策を練ることができるでしょう。
特に生活保護を受けている人は、以下の事項をしっかりと整理しておきましょう。
①生活保護を受けるまでの経緯
入居審査では、家賃を確実に納めてもらえるのかという点に加え、申込者が信頼できる人なのかという点も考慮されます。
そのため保護受給に至った経緯を聴き取り、一時的に保護を受けているのかという点や長期間保護を受ける人なのかという点などを判断材料にすることがあります。後日トラブルの原因にならないよう、聞かれた際は状況を正直に伝えておきましょう。
②引っ越しをする理由
生活保護受給者が引っ越しできるのは福祉事務所がその必要性を認めた場合に限られ、入居審査でも似たような観点からの評価が行われます。
就労先や通院先に近いところに引っ越すなどやむを得ない理由があれば、入居審査でも福祉事務所と同様審査に通りやすくなるでしょう。
しかし不動産会社や大家さんとのトラブルが原因の場合は、先に触れたような信頼性の問題に関わります。特に家賃滞納をはじめとした金銭的トラブルがあると、入居を断られる可能性が高まります。
③連帯保証人の有無
確実に家賃を納めてもらうため、連帯保証人がいるかという点も審査ポイントのひとつになります。
生活保護受給者は住宅扶助による家賃補助が保障されていますが、経済的に困窮するという点から家賃滞納があった場合のことも判断材料になります。
後で述べるように、連帯保証人を立てられない場合の対処法もありますが、原則は信頼できる人に連帯保証人を頼むことになります。しかし生活保護受給者の場合は、そもそも連帯保証人となってくれるような強い信頼関係のある親類等とは縁が切れている状況が多いかと思いますので、保証会社を利用せざるを得ないことがほとんどです。
5.賃貸契約ではチェックポイントがたくさん!
新たに部屋を借りる際は、契約前に確認しておくべきポイントがいくつかあります。いずれもあらかじめわかっている事項なので、いざというとき慌てないためにも、あらかじめ条件のチェックや対策をとっておきましょう。
①連帯保証人が見つからないとき
契約時にどうしても連帯保証人が見つからない場合は、家賃保証会社の保証を受けなければなりません。ただし利用のため審査があることや、保証会社の利用料がかかる点などは頭に入れておきましょう。また保証会社の利用が認められない物件もあるため、保証についての事前確認は必須です。
家賃を確実に回収したい大家さんの場合、連帯保証人が見つからなくても自治体の代理納付を利用することで入居を認めてもらえることがあります。原則として住宅扶助は受給者に支給されますが、受給者本人を通さず家賃を直接振り込む代理納付に対応する自治体もあります。
全ての自治体が代理納付を行っているわけではないので、転居をケースワーカーに相談する際、代理納付をしてもらえるか確認しておきましょう。
②家賃が変わるとき
引っ越しを伴わない場合でも、契約更新などで家賃が変わることを想定しておかなければなりません。住宅扶助の支給額が変わることに加え、変更後の家賃が宅扶助の基準をオーバーする場合は転居指導を受ける可能性があります。
不動産会社や大家さんから家賃変更の連絡があった際は、必ずケースワーカーに対処法を相談しましょう。
③別の都道府県や市に引っ越すとき
自治体をまたいで転居する場合は、基本的に管轄する福祉事務所が変わります。
転居前と転居先の福祉事務所同士でいわゆるケース移管の手続きで完結することが一般的ですが、ケース移管の調整ができない場合は、転出時にいったん保護が廃止されます。
その場合は転出先で再度保護申請をする必要がありますが、再申請は却下されることもあるので注意が必要です。
6.不安なら煩雑な手続きをサポートしてくれる場所へ
生活保護を受けている人が賃貸を契約する場合は、生活保護法第六十一条で課せられている届出の義務があるため福祉事務所へ報告しなければなりません。住宅扶助の支給がからむという点からも、ケースワーカーへの事前相談は必須です。
しかし契約手続きはサポートしてもらえないため、自分で全て対応するのが難しいという人もいるのではないでしょうか。そのような人にご紹介したいのが、リライフネットのサービスです。
リライフネットは生活困窮者を総合的に支援しており、生活保護制度も熟知しています。特に住まいに関するサポートは得意分野で、生活保護受給者にも対応する物件を紹介してもらうことができます。
生活保護受給者が賃貸物件を探す場合は、リライフネットへ相談することをおすすめします。