「生活保護を申請したいけど、入院中だから対応できない。」
「認知症を患っている母の生活保護を申請したいけど、家族が申請しても良いの?」
生活保護は日本国憲法第25条で制定されている「健康で文化的な最低限度の生活」を保証するための最後のセーフティーネット(行政サービス)です。しかし、この制度はどんなに生活に困窮していても(国が定める最低生活費以下でも)申請しない限り利用することはできません。
特に病気や障がいなどで本人による申請が難しい場合、誰がどのように手続きを進められるのかを知っておくことはとても大切です。
生活保護の制度は複雑に見えるかもしれませんが、正しい知識と準備があれば、誰でも手続きを進めることができます。このページでは、申請の流れ、代理申請の条件、必要書類の整え方などを具体的にわかりやすく解説し、不安を抱える方の背中を押す情報をお届けします。
1.生活保護の申請は代理人でもできる?

生活保護を申請したくても出来ない事情もあります。冒頭のように入院中であったり、病気のために判断や申請作業ができない場合です。
そんな時は代理人が申請することができます。しかし、誰でも代理人になれる訳ではありません。代理人になれる人には条件があります。生活保護法第7条(※1)に基づき、申請は本人に限られず、家族や扶養義務者、成年後見人等によっても行うことができます。
※1生活保護法第7条
https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000144#Mp-Ch_2-At_7
①代理申請が認められる背景
厚生労働省が示す「生活保護問答集(※2)」等においては、やむを得ない事情により本人が申請できない場合、次のような場合に代理人による申請が認められるとしています。
- 医療機関に入院しており本人が外出できない場合
- 認知症や精神障害などにより本人の判断能力が低下している場合
- 身体障がいなどにより窓口での説明や書類作成が困難な場合
- 成年後見制度の後見人が代理して行う場合
※2「生活保護問答集について」の一部改正について https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000831722.pdf
2.まずは申請の大まかな流れを確認しておく

この章では生活保護の申請をする時の大まかな流れをご説明します。本人が申請する場合も代理人が申請する場合も、大まかな流れは変わりません。
①福祉事務所で相談
まずは最寄りの福祉事務所へ行って生活保護を申請したい旨を相談しましょう。最寄りの社会福祉事務所の場所が分からない場合は、今暮らしている自治体の役場に行って聞いてみましょう。
中には住民票の住所と居住地が異なっている方もいるかもしれません。しかし、生活保護は住民票の住所に関係なく、居住地の社会福祉事務所で申請できます。公園で暮らしていたり(ホームレス)ネットカフェで暮らしているなど、住居がない場合でも申請できます。
また、福祉事務所では申請前の「事前相談」というステップが設けられていることが多く、ここで生活状況や収入、資産、健康状態などについてヒアリングが行われます。この段階での説明に不備があると、本来受給対象である人でも“申請前の門前払い”を受けてしまうケースがあるため、事前に要点を整理しておくことが重要です。本人が来所できない場合は、電話による事前連絡や、代理人による訪問でも対応が可能です。
②申請書及び関係書類の提出
保護申請書や提出する関係書類(※3)を用意しましょう。次の書類が必要になります。
(※3)生活保護申請書類
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/
seikatsuhogo/seikatuhogo/index.html
- 保護申請書:住所、保護を受けたい世帯全員の氏名、扶養の有無、申請したい理由などを記載
- 資産報告書:現預金、土地・建物、株式・債権などの資産情報を記載
- 収入報告書:給与明細など保護を受けたい世帯全員の収入が分かる書類を元に記載
- 同意書 :社会福祉事務所が調査のために収入や資産を関係先に問い合わせることへの同意書
関係書類は社会福祉事務所へ相談へ行くときに予め用意しておくと、申請がスムーズに進みます。保護申請書は社会福祉事務所でももらえますが、フォーマットは自由なので予め作っておくこともできます。
書類の記載内容に誤りや漏れがあると、再提出や審査の長期化につながるため、第三者に見てもらうなどして丁寧に準備することをおすすめします。また、申請書の控えは必ず自分用にコピーして保管しておきましょう。トラブルが生じた場合の証拠として活用できます。
③福祉事務所による調査
保護申請書と関係書類を提出すると、社会福祉事務所による調査が行われます。調査内容は二つあります。
一つ目は申告された収入や資産が正しいか確認する調査です。申請者の家庭訪問を行い、現在の収入や生活の状況をヒアリングします。また、自治体の税務課や金融機関、それに勤務先に対して調査を行います。
二つ目は他に扶養(生活の援助)ができる親族がいないか確認する調査です。生活保護は申請者の努力や他の社会福祉制度を活用しても、最低限度の生活ができない場合に利用できます。親族の扶養もこれに該当します。そのため、扶養できる親族がいないことを確認する為に調査が行われます。
この調査の際、過去に預金を引き出した履歴や生活費の使い道について質問されることがあります。調査内容に虚偽があると、不正受給と見なされるリスクがあるため、誠実に答えることが求められます。
④生活保護の決定
生活保護の審査は申請から14日以内に行われます。遅い場合でも1ヶ月以内には審査結果が分かります。しかし、残念ながら審査に通らない場合もあります。その時は却下された理由が記載された通知が届きます。この内容に納得できない場合は不服申立てをすることもできますが、その時は専門家に任せることをおすすめします。
なお、却下通知には不服申立てが可能な期限(通常3か月以内)が明記されています。期限を過ぎると申し立てができなくなるため、早急な対応が必要です。不服申立てを行う際は、弁護士や社会福祉士など専門家の支援を受けることで、書類作成や論点整理が的確に進められます。(※4)
(※4)引用:http://www.saibanren.org/welfare/004-litigation.html
⑤受給開始とその後の対応
受給が決まったら生活保護費を受給することができます。しかし、生活保護の受給が始まっても気を付けることがあります。ケースワーカーと呼ばれる社会福祉事務所の職員が、生活実態調査のために定期的に家庭訪問に訪れます。家庭訪問を拒否するなど非協力的な場合は、生活保護が停止・廃止される場合があります。
また、保護開始後は「生活状況届」の定期提出が求められ、生活実態に変化があれば速やかに報告する義務があります。代理人申請の場合でも、保護開始後は原則として本人との面談が行われることが多く、本人確認や生活支援の方向性について福祉事務所と調整する必要があります。
さらに、生活保護を受けながら就労を目指す場合には、「就労指導」が行われます。就労可能と判断された場合、職業安定所(ハローワーク)への通所や、求職活動の記録提出などが求められます。正当な理由なく就労指導に従わない場合は、保護費の減額や停止の対象となるため注意が必要です。
3.自分以外が申請することはできる場合とできない場合がある

生活保護の申請は原則生活保護を申請する本人が行うものですが、それが出来ない場合もあります。この章ではそんな時に代理人となれる人についてご説明します。
①本人以外に申請できるのは、原則扶養義務者と同居の家族だけ
本人以外で生活保護の申請をできると認められているのは原則扶養義務者と同居の家族だけです。扶養義務者とは直系血族と兄弟姉妹のことです。直系血族とは本人と直接血縁関係のある家族です。父母や祖父母、子や孫やひ孫がこれに該当します。義父母や子の配偶者などは直系血族には該当しません。
代理人となる際は、申請者本人の意思をできる限り確認したうえで書面に残すことが望ましく、福祉事務所側の判断によっては本人への聞き取りが別途行われる場合もあります。
②弁護士や行政書士ができるのは、申請者本人の意思で記載した書類の代理提出
弁護士や行政書士ができるのは申請書類を代わりに提出することです。あくまで本人や前述の申請が認められている人の意思が必要です。しかし、弁護士に依頼するメリットはあります。それはケースワーカー等が法律から逸脱する発言や指導を行ったときに、是正(反論)してくれるという点です。生活保護を理解するには法律の知識が必要です。しかし、社会福祉事務所の職員も全てを把握している訳ではありません。
場合によっては生活保護受給者を増やさないために、担当窓口で意図的に違法な指導が行われる場合があります。本来なら受給できるはずの生活保護を断られることのないように弁護士に依頼するメリットは大きいです。また、前述の生活保護の審査結果に対する不服申立てをする際も、弁護士に依頼することをおすすめします。
「弁護士に依頼したいけど、どこに問い合わせたら良いか分からない。」という場合は東京弁護士会(※5)等に問い合わせれば、弁護士を紹介してもらえます。
(※5)東京弁護士会 https://www.toben.or.jp/bengoshi/syoukai/
③成年後見人は申請可能(2021年10月1日以降)
厚生労働省の『「生活保護問答集について」の一部改正について』(※6)によると2021年10月1日以降は成年後見人も申請可能となりました。
(※6)「生活保護問答集について」の一部改正について https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000831722.pdf
成年後見人は「財産に関する全ての法律行為」を代理で行う権利を有することや、要保護者(本申請者人)の判断能力を考慮して代理で申請することが認められています。しかし、この場合でも本人の意思があることが望ましいとされています。
4.1人で申請する時には事前にしっかり調べておく

頼れる親族もおらず弁護士に代理を依頼することもできない場合もあるでしょう。この章ではそんな時に気を付けるポイントをご説明します。
①必要書類を揃える
必要書類そのものや、記載方法が分からない場合は社会福祉事務所で確認しましょう。初めて社会福祉事務所に訪問する時までに、これらの書類を必ずしも揃える必要はありません。分からないことはその場で社会福祉事務所の職員に相談して、一つずつ丁寧に書類を作成するようにしましょう。
必要書類を作成するためには給与明細や賃貸借契約書などが必要です。紛失した場合は勤務先や不動産屋に依頼してコピーなどを再発行してもらうようにしましょう。いずれも一覧表などを作成すると漏れが少なくなるでしょう。
②扶養照会してほしくない親族を申告する
他に扶養できる親族がいないか調査されることは前述しました。(扶養照会)しかし、DVから逃げているなど現在の居住地や状況を知られたくない親族がいる場合もあります。そんな時は社会福祉事務所にその旨を申し出ましょう。
この際、DV防止法の保護命令や、配偶者暴力相談支援センターなどの証明書があると、より説得力が増します。書類がない場合でも、職員にしっかりと状況を説明すれば、配慮されることも多いため、遠慮せず申し出ましょう。
③生活保護申請前にやるべき“準備”とは?
「申請する=すぐに決定される」わけではないため、可能な範囲で事前に準備しておくことが望まれます。
- 身分証(マイナンバーカード・運転免許証等)の所在確認
- 銀行口座の通帳や残高の整理
- 家賃の契約内容(賃貸契約書・家賃領収書)の確認
- 収入源がある場合の金額と頻度の記録
また、申請当日は自分の生活状況について詳しく聞き取りがされるため、収支や家計簿を簡単にでもまとめておくと、調査がスムーズに進みます。
銀行口座の残高整理以外にも、現在の所持金、不動産などの資産、解約返戻金がある保険、借金・ローンなどの負債も「個人の資産」なので、忘れず整理しておくことが重要です。
5.生活保護の申請前後に受けられる支援制度

生活保護の申請を検討している方にとって、同時に活用できる支援制度を知っておくことも非常に重要です。実際には、生活保護の審査中に生活が厳しくなったり、就労や住まいの支援が必要になるケースが多いため、これらを並行して活用することで生活再建がスムーズになります。
たとえば、緊急小口資金などの貸付制度は、生活保護の審査期間中に一時的な資金が必要な場合に利用できる可能性があります。また、住宅確保給付金は、家賃の支払いが困難な人に対して住まいの維持を目的として支給される制度で、生活保護を申請する前にこちらを優先的に活用するよう指導されることもあります。
さらに、自治体によっては生活困窮者自立支援制度の枠組みの中で、就労支援・家計相談・住居支援などを一体的に提供しているところもあり、生活保護だけに頼らない選択肢を模索することができます。
申請前にこうした制度を活用しておくと、審査においても「自助努力」を行っていると判断され、受給決定に向けて前向きな評価を得やすくなります。制度の併用は、決して遠回りではなく、生活を守るための戦略的なアプローチといえるでしょう。
6.生活保護の申請に迷ったときの判断基準

「自分が申請できるのか分からない」「この状況で申請していいのか迷う」と感じている方も少なくありません。実際、生活保護の申請は心理的なハードルが高く、特に『まだ自分はなんとかなる』『迷惑をかけたくない』といった気持ちから申請を先延ばしにしてしまう人も多いです。
しかし、生活保護制度は『最後の砦』としてだけではなく、『生活再建の出発点』として位置づけられており、早めに申請することで自立のチャンスを掴む人も増えています。自分の収入が最低生活費を下回っている、住居が不安定になってきている、健康状態が悪化して働けない、などの状況がある場合は、まず相談することが第一歩です。
特に扶養義務者からの支援が受けられない、頼れる家族がいないといった場合には、制度を利用することに遠慮はいりません。生活保護は誰にでも認められた権利であり、使うことは決して『甘え』ではないのです。
さらに、生活保護を受給したあとも、就労支援や就職活動支援、社会参加支援など、生活再建のための制度が継続して利用できるため、早期に経済的・社会的自立を目指すことが可能です。生活保護を活用することは、長期的な生活の安定を図るための正当な手段であるという意識を持ちましょう。
7.自分一人で申請するのが不安な時は相談を!

この記事では、やむを得ない事情で本人が書類の準備や生活保護の申請ができない時に本人以外も申請できるのかについてご紹介しました。
生活保護制度を正しく理解し、必要な人がきちんと利用できるよう支援することを目的とした無料相談窓口があります。書類の書き方が分からない、福祉事務所との面談が不安、過去に申請を断られたといった方も、安心して相談ができる場所があることを覚えておいてください。
生活保護の申請には、収入や資産、家族構成の確認など専門的な判断が必要な場面も多いため、専門家による事前アドバイスは大きな助けになります。特に初めて申請を検討する方にとって、制度の仕組みや申請の流れを把握することは、精神的な安心にもつながります。
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