2015年に実施された住宅扶助の引き下げにより、生活保護受給者のお部屋探しがさらに困難を極めることとなりました。

当時を振り返るとともに、今後住宅扶助が引き下げられた場合にどのような影響があるのかを解説します。

1.住宅扶助が引き下げられた理由

すべての国民に認められている「健康で文化的な最低限度の生活を送る権利」に基づき、生活が困窮している人に対して必要な保護をおこなうための生活保護の一つである住宅扶助ですが、その引き下げの背景にはいくつかの理由がありました。

①住宅扶助の基準が高すぎる

まず一つ目が、生活保護受給者の住宅扶助の基準が一般の低所得世帯の家賃と比べて高すぎるというものです。

住宅扶助で受ける援助額が、自身で家賃を支払っている低所得世帯の支払よりも高いとなると、それは不平等感を生む原因となってしまいます。

②悪質なビジネスを耳にすることがある

続いて二つ目が「貧困ビジネス」の問題です。

貧困ビジネスとは、困窮している人の弱みに付け込んで、利益を得るという悪質なビジネスのことを指します。

生活保護受給者もそのターゲットとなっており、救済の手助けをするように見せかけて生活保護費を搾取したり、貧困から脱却できないような環境に追い込まれるということが問題となっています。

実際に、一部屋に生活保護受給者を数人住まわせて、生活保護費を受給するというケースや、重度障害者に対して過度な手すりやスロープの設置、高額な改装費などを請求するなどの悪質な生活保護費の搾取がおこなわれています。

「住居提供団体は全国各地にありますが、質を判断するうえで月々の生活保護費からの手残りや住環境は重要な判断材料といえるでしょう」

2.住宅扶助の引き下げによって行われる「転居指導」

こういった状況を改善するために新たな基準として設けられた住宅扶助の引き下げですが、住宅扶助について書いた別記事でも触れた通り、実際に住宅扶助の金額が引き下げられることになると多くの生活保護世帯で転居指導を受けることになることになったのです。

転居指導とは、現状よりも安い物件への引越しを命じられるというものです。

ただでさえ、急に住まいを変えるように言われることは大変なことであるのに、それが生活保護受給者の場合には大家様やオーナー様から利用に関する条件を設けられたり、通常よりも入居のハードルが高いなどする場合があり、より難しいものになってしまいます。

そうなると、すぐには物件が見つからなかったり、住宅扶助内で借りることのできる物件に複数の生活保護受給者が集まるなど、新居探しに困ってしまう人が増えるという問題が発生します。

すなわち、本来生活に困っている人を救うための制度であるはずが、制度の見直しにより、路頭に迷う生活保護受給者が増える可能性が高まってしまうということです。

たとえば、これまで住宅扶助の上限額が50,000円で家賃50,000円の家に住んでいた人の場合、家賃の全額を住宅扶助内でまかなうことができていました。

しかし、住宅扶助の引き下げにより、上限額が40,000円となってしまった場合、家賃との差額10,000円を自己負担しなければならないということになります。

毎月の10,000円も自己負担が増えてしまうのは、生活保護受給者とっては死活問題となり、生活を維持することが難しくなったり、同じ物件に入居し続けられないという方がでてくることでしょう。

3.転居指導が行われる理由

また、住宅扶助の上限を超える物件に住むことはそもそも生活保護という観点からするとふさわしくないのではないかという見解から、自身の意思に関係なく、転居指導がなされる場合もあることは先にもお伝えしました。

実際にケースワーカーからすぐに退去するように言われたという話や、大家さんに家賃の減額交渉をおこなうように言われたという話が上がっており、住居を失う不安に苛まれている生活保護受給者が後を絶ちません。

何故なら、貸主側は減額された分だけ賃料を下げなければなりませんが、多くの大家様・オーナー様は現在の賃料を下げることに少なからず抵抗があるからです。

これでは本来、生活に困窮している人たちを救うことを目的としている、住宅扶助の意味が果たされなくなってしまう可能性がでてきてしまいます。

中には、生活保護受給者は住宅扶助として行政からお金が支払われるので家賃滞納リスクが低いと判断し優先的に提供してくださるオーナー様もいらっしゃいますが、他方で騒音や近隣トラブル、保証会社加入のリスクなども考慮する必要があるため、一般の方と比べて生活保護受給者を自分の物件に住まわせるのはメリットがないと感じてしまう方が増加する恐れもあります。

実際に、生活保護受給者を入居させる場合には通常の家賃よりも少し高めに設定して、リスクヘッジを図っているという大家様・オーナー様もいます。

そうなれば、今より生活保護受給者入居可物件は減少するにもかかわらず、引越しを必要とする生活保護受給者は増加することになります。

最悪の場合、入居できる物件が見つからないまま住居を退去後、悪質な「貧困ビジネス」の餌食となり、新たな社会問題になる可能性も考えられます。

4.住宅扶助の引き下げにかかわるその他事項

住宅扶助の引き下げに伴い、変更された事項及び該当となるケースについて確認していきましょう。

①冬季加算減額

冬季加算とは、寒い時期にかかる暖房費や被服費を追加で加算して支給するというものです。期間は11月から3月までの5か月間であり、加算金額は地区区分に基づき世帯人数、級地別に応じて決定されます

地区区分については、寒い地域ほど金額が高く設定されています。最も支給金額が高いⅠ区には北海道、青森県、秋田県が該当します。

冬季加算という名目ではありますが、お金の使途は基本的には自由であり、特にレシートや領収書で使い道の提示をするというようなことはありません。

冬季加算の減額に関しては、特に寒冷地に住む生活保護受給者にとっては命に関わる重大な事態であり、ある意味住宅扶助の減額以上に問題視される事項です。

近年の灯油代や電気代の高騰に伴い、ますます冬の生活が大変になっているのは紛れもない事実です。

そのため、光熱費を削ったり、食費を抑えたりして何とか生活を維持しているという人も多いでしょう。

しかしながら、こういった状況は生活保護受給者のみにあてはまるものではありません。

多くの国民が、冬の光熱費の高騰に四苦八苦し、さまざまな方法で節約を試みたり光熱費を抑える努力をしています。

実際に、北海道や東北地方の一部の地域で生活保護の冬季加算が低所得者の光熱費よりも数千円上回っているという指摘があったことが冬季加算の引き下げを検討するきっかけとなりました。

住宅扶助同様に、生活保護受給者への支給に関しては、低所得者の支払額を超えるようなことがあっては、仕組みにひずみが生じてしまいます。

そのため、その時の実態に合わせた支給額の検討が求められるのは自然の流れだと言えるでしょう。

②2人でも減額

住宅扶助の減額は、単身世帯だけでなく2人世帯の場合にも引き下げられています。

そもそも、住宅扶助の限度額は自治体によって異なります。たとえば、同じ東京であっても市区町村によって等級が決められており、その等級および世帯人数によって支給額が決定となります

そのため、あらかじめ該当する住宅扶助の金額を確認しておくほか、引き下げ金額の詳細などについては該当の自治体に問い合わせてみると良いでしょう。

③対象は賃貸のみ

生活保護受給の条件の一つに、即時現金化できる資産がないことというものがあります。

住んでいない家や土地がある場合には、処分しないと生活保護を受けることは難しいものの、現在居住している持ち家がある場合には、原則持ち家に住みながら生活保護を受けることができます。ただしその場合には、住宅扶助の対象とはなりません。

したがって、住宅扶助が引き下げとなった場合に、影響を受けることはありません。

5.まとめ

現状、福祉事務所を経由して即入居できる住居は無料低額宿泊所やグループホームといった施設が中心であり、一般的なアパートに入居しながら生活保護を受給するには自分で不動産業者を回って物件を探してもらったりする必要があります。

しかし現実的な問題として、生活保護の受給を必要とするほどに収入の落ち込んでいる方は家賃の滞納リスクや前述の騒音トラブルなど何らかの危険性を孕んでいるとみられ、対応してもらえないことも少なくありません。

リライフネットは預貯金が無いため生活保護を検討されている方や既に受給中の方でも入居可能な住居を提案出来る居住支援団体ですので、お問い合わせ頂くことで住居探しの解決出来る可能性があります。

新たな住居を探すにあたっては、家賃だけでなく引越し費用や敷金礼金の問題も出てきますが、住宅扶助ではそのような必要経費に関しても援助を受けることが可能です。

ただし、そのような場合にも複数の引越し業者に見積もりをしたうえで一番安い業者を選定したり、契約書や領収書の提出等の手続きが必要となってきます。

生活保護受給者が入居する際は、本人のほか管理会社との話し合いや信頼性も大きくかかわってくるものだといえます。

住居を探すには、大手不動産会社に相談したり、インターネットで条件に該当する物件を検索するなど自分でできることもありますが、なかなか思うように進めることができないということもあるでしょう。

そのような場合には、ぜひ一度リライフネットにご相談ください。

一人で進めるには不安や知識不足という場合であっても、リライフネットであればしっかりとしたフォローやサポートのもと、二人三脚でより良い未来形成に向けたご提案を行っていくことができます。

住宅扶助の引き下げにより、どの程度影響が出てくるのかは未知数な部分も多いですが、リライフネットでは長年培ってきた提携している大家様やオーナー様、協力会社様との信頼関係を基に、これからも住居にお悩みの方に向けた交渉や支援活動を行なっていきたいと思います。

まとめ
リライフネットでは身元保証や預貯金などを理由に一般の不動産会社に断られてしまった方、生活保護を必要とされている方、既に受給中の方でも入居可能な住居をご案内可能です!