障害年金は心身に障害をもつ人が受給できる経済的支援のひとつですが、生活保護を受けている人は障害年金をもらうことができるのでしょうか。また障害年金を受給する場合、どんなデメリットがあるのでしょうか。今回は障害年金について、受給要件やデメリットも含め詳しく解説します。
1.生活保護と障害年金は同時に受給できる?
障がいを持つ人がその程度や条件を満たす場合は障害年金を受給できますが、健康で文化的な最低限度の生活を保障する生活保護と同時に受給することは可能です。
生活保護を受ける前にはあらゆる方法や資産を活用しなければなりませんが、障害年金もそのひとつになります。保護開始時に障害年金を受給していない場合でも、受給の可能性があると判断されれば、裁定請求をするよう福祉事務所から指導が入ります。
なお障害年金の受給者は、最低生活費に障害者加算が付きます。しかし障害年金は老齢年金と同様収入認定の対象となるため、受給開始になった場合はケースワーカーへの申告を忘れてはいけません。
2.障害年金を受給できる条件とは
障害年金は老齢年金と同様基礎年金と厚生年金の2種類があり、原則として病気やけがで初めて医師の診療を受けたとき(初診日)に加入している年金を受け取ることができます。
初診日に国民年金に加入している人は障害基礎年金が受給対象で、保険料納付に関する要件を満たした人が、法令で定める障害等級表に該当する場合に受給できます。
また初診日のある疾病により障がいが発生した場合、その時期に厚生年金に加入していれば、障害厚生年金が加入期間に応じ追加支給されます。
障害厚生年金に該当する状態よりも軽い障がいが残ったときは、障害手当金(一時金)を受け取ることができる制度もあります。
①障がい等級は1級から3級まで
障害年金を受給できるのは障がいの重さが一定以上の場合で、国が定める障害等級表の1級及び2級に該当する場合は障害基礎年金を受給できます。
障害厚生年金のみ3級の区分があり、障害の状態が2級に該当しない軽い程度の障害のときは3級の障害厚生年金が支給されます。
なお障がい程度の区分は、他法における定義と必ずしも一致しません。
1-1級に該当する障がい
障がいの程度が最重度の人は1級に該当し、他人の介助を受けなければ日常生活動作のほとんどを行えないというのが目安になります。
寝たきりなどで身の回りのことしかできない人や、入院や在宅介護を必要としベッド周辺に活動範囲が限られる人は、1級に該当すること判断される可能性があります。
2-2級に該当する障がい
2級に該当するのは、1級よりは軽いものの単独の日常生活が極めて困難で、働いて収入を得ることが難しい状態が目安になります。
家の中での軽作業はできるがそれ以上の活動ができない人、また活動範囲が屋内に限定される人と言い換えることもできるでしょう。
3-3級に該当する障がい
3級の区分は障害厚生年金にのみ設けられており、2級には該当しないが一定の障がいが認められる状態です。労働が著しく制限されるかその必要がある程度とされており、具体的には1・2級と同様の判断基準があります。
3.障害年金を受けるメリット
障害年金を受給する最大のメリットは、確実な収入を得ることで経済的な不安を解消できるという点です。また障害年金を受給すれば、国民年金保険料の納付が免除されます。
老齢年金と同様使い道に制限はなく、受給した年金を使って生活支援のサービスや心理カウンセリングの利用といった、生活向上や治療を図ることも可能です。
場合によっては、働きながら障害年金を受けることもできます。就労は日常生活における物差しのひとつになり、就労している人は「日常生活の自立度が高い」として支給の対象外になる場合があります。
しかし障害者雇用など、一定の援助や配慮のもとに就労している人は、働きながら障害年金を受け取ることができる場合もあります。
4.知っておきたい障害年金のデメリット
障害年金を受給すると、生活保護や各種手当金などの給付金に影響が及びます。いずれもデメリットというほどではありませんが、気を付けたいポイントです。
生活保護と直接関係のない項目もありますが、年金制度のおさらいということで改めてご紹介します。
①生活保護や傷病手当金の支給額が調整される
生活保護や傷病手当金を受けている人が障害年金を受給する場合、それぞれの支給額に調整が加えられます。
先に触れたように、生活保護については障害年金が収入認定され、年金相当額が扶助費から差し引かれます。ただし障害者加算が算定されるため、実質的には影響なしと考えてよいでしょう。
傷病手当金を受給している人は、障害年金の減額という形で調整が行われます。こちらの場合、両方を受給する金額的なメリットがないという点に注意が必要です。
②社会保険の扶養から外れる可能性が
社会保険の被扶養者になっている人が障害年金を受給すると、所得制限により扶養対象から外れる可能性があります。
被扶養者になることができるのは直系親族もしくは同居している3親等以内で、60歳未満の場合は年収130万円未満、60歳以上の場合は180万円未満という所得制限条件があります。
障害年金の受給者は、60歳未満でも180万円未満であれば社会保険の被扶養者になることが可能です。障害基礎年金だけでは制限にかからず、障害厚生年金も年額180万円以上という人は多くないかもしれません。
しかし年金のほかにも収入などがあれば合算されるので、就労している障がい者の場合は収入制限を超える場合も想定しておきましょう。
なお障害年金は非課税になるため、税制における被扶養者認定には特段の影響がありません。
③老齢年金の受給額が低くなる場合も
60歳未満の人が2級以上の障害年金に認定された後は保険料納付が免除されますが、60歳までの納付額合計は老齢基礎年金の額が少なくなります。
障害年金は受給原因となる障がいがなくなれば、受給することができなくなります。実際に障害年金が支給停止になることはあまり考えられないのですが、もし障がいの程度が軽くなった場合は障害年金がストップされます。
障がいがなくなった状態で65歳に到達し老齢基礎年金を受ける場合は、過去2年分の保険料未納分をさかのぼって納めることができますが、それ以前は未納期間という扱いとなってしまいます。
この場合、老齢基礎年金を満額受給することができなくなるので注意しなければなりません。
④配偶者加給年金が支給されなくなる
老齢厚生年金や障害厚生年金受給者の配偶者が一定の要件を満たす場合は年額22万3,800円が加算され、受給者の生年月日によってはさらに支給額がアップします。
対象となっている配偶者に障害年金の受給が開始されれば、配偶者加給金の算定対象外となり、もともとの年金受給者は受取額が減額になります。
しかし障害基礎年金の2級は年額777,800円、障害厚生年金3級では最低でも年額583,400円が保障されています。世帯トータルではむしろ受給額が上がるため、さほど気にする必要はないかもしれません。
⑤死亡一時金や寡婦年金が受けられない
障害年金の2級以上に該当する人が一度でも障害基礎年金を受給すると、遺族に対する死亡一時金や寡婦年金などの遺族給付が支給されなくなります。
死亡一時金は老齢年金や障害年金を受給しないまま亡くなった人の遺族が支給対象になるため、支給されません。また寡婦年金も、老齢年金や障害年金の受給歴がある人の配偶者は対象外となります。
5.まとめ
障がいを持つ人の経済的支援のひとつとして、障害年金は重要な役割を担っています。老齢年金よりも受給額が多いため、年金保険料の納付状況に加え一定以上重度の障がいがなければもらうことができません。
生活保護を受けている人が障害年金を受給すると、年金分が収入認定されます。しかし最低生活費に障害者加算がつくため、最低生活費や扶助額に影響はありません。
経済困窮者のサポートを行っているリライフネットでは、生活保護はもちろん、保護の申請前に活用を求められる他法他施策に関する知識を豊富に有しています。障害年金についても制度を熟知しており、必要に応じて他機関へのつなぎ役も担います。
生活保護と障害年金を同時に申請したい人、またどちらか一方を受けている人がもう一方の申請を検討している人は、一度リライフネットに相談することをおすすめします。