1.生活保護を受けていても保険証はもらえるのか?
公的な医療保険には国民健康保険(以下「国保」)に加え、社会保険とも呼ばれる健康保険健保があります。そのうち国保は生活保護の受給開始と同時に脱退するため、保険証は返還しなければなりません。
一方会社員などが加入している健康保険証は、保護を受けていても退職しない限り、交付されたものを持ち続けることになります。
生活保護は、国が定める最低生活費より収入が少ない場合、足りない分を補う形で行われます。収入のほかにも、活用しうるあらゆる制度や資産を優先しなければならない、とされています。
例外として保険証が交付される国民健康保険(以下「国保」)があり、保護開始と同時に国保は脱退することになります。75歳以上の後期高齢者を対象とする後期高齢者医療も、国保脱退と同時に対象から外れます。
公的な医療保険としてはほかにも社会保険や共済組合などがありますが、これらに加入している会社員や公務員には、保険証もしくは共済組合員証が交付されます。
2.生活保護の受給が保険証でばれるのというのは本当か
国保しか加入していない被保護世帯では、保険証を持つことができません。そのため本人確認等のために保険証の呈示が必要な場合、生活保護を受けていることが他人から知られることもあります。
保護を受けている人への差別はいけないし、受給していることを恥じることもありません。しかし受給者の中には、どうしても後ろめたい思いを持ってしまう人がいるのも事実です。保護受給中の事実がどのような場面でばれるのか、考えうるシーンをいくつか取り上げます。
①病院を受診するとき
詳細は改めて説明しますが、病院や診療所などの医療機関(以下「医療機関」)を受診する際、保険証の代わりに医療券を窓口に提出します。
医療機関側では生活保護を受けているということを医療券で把握しますが、手続き時に他の患者が横にいれば、保険証がないことが知られてしまうこともあり得ます。
②本人確認のため保険証を使うとき
保険証を本人確認の証明用に使っている場合は、保険証がないことから生活保護を受けていることがばれるケースもあります。
例えば子どもが修学旅行に行くときや民間の託児所に預ける際は、保険証がないため生活保護の受給者証や受給証明書などを代わりにせざるを得ず、結果として学校や託児所にばれてしまいます。
ちなみに認可保育所であれば保険証の提出は要しないことが多いものの、市区町村から各保育所には保護を受けている旨の情報が伝わります。
③保護受給者が就職するとき
生活保護を受けている人が就職する際も、受給の事実がばれるケースのひとつです。
一般的な企業や法人に就職する場合は、職場の社会保険へ新たに加入することになります。手続きの際に国保の保険証を提出しなければならないことがありますが、保護を受けている人は国保に加入していないため、保険証がありません。
保険証がない理由の説明が必要になるため、必然的に保護受給の事実がばれるということです。
3.生活保護受給者が保険証を使わず治療を受ける方法
生活保護の扶助には生活扶助をはじめとした8種類があり、そのひとつに医療費を扶助する医療扶助があります。国保を脱退した生活保護受給者は、原則として医療費の10割を医療扶助で医療行為の現物支給を受けることになります。
医療機関を受診したい場合は、事前に福祉事務所へその旨を申請しなければなりません。申請が認められれば医療券が交付されるため、保険証代わりに医療券を窓口に提出して医療を受けることができます。ケースワーカーの訪問時に通院予定がわかっていれば、そのときに申請するのもよいでしょう。
夜間や休日など、緊急的にやむを得ず受診しなければならないケースでは、医療券が交付されなくても受診できる場合もあります。この場合は生活保護受給者証を呈示することで、受診することが可能です。口頭で保護受給中であることを伝えるだけでも、やむを得ないでしょう。
医療券なしで受診した後は、なるべく早く福祉事務所に報告して、改めて申請する必要があります。医療券が必要ない場合もありますが、ケースワーカーへの報告だけは忘れずに行いましょう。
定期的に通院を要する場合は、あらかじめケースワーカーに相談・申請することで、2回目以降の医療券が不要になることもあります。詳細は省略しますが、覚えておくとよいでしょう。
4.生活保護中に他人の保険証を使って治療を受けられるか?
生活保護を受けていようがいまいが、他人の保険証を使って医療機関を受診することは絶対に許されません。
生活保護を受けている人の医療費は、医療扶助により全額補填されます。社会保障や他法の医療費支援を受ける場合は自己負担分だけが保護の対象となりますが、一部の例外を除き自己負担ゼロで医療を受けられる点は同じです。
自己負担なしで受診できにもかかわらず、わざわざリスクを冒して他人の保険証を使う理由はありません。この後触れるように、他人の保険証を使って医療機関を受診するのは犯罪行為にあたるので、絶対にやめましょう。
5.生活保護受給者が他人の保険証を使ったことがばれたら?
生活保護を受けている人も受けていない人も、絶対に他人の保険証を使ってはいけません。
保険証を使用できるのは、保険証に氏名が記載されている人に限られます。他人の保険証を借りるのはもちろん、自分の保険証を他人に貸すことも厳禁です。
これに反して他人の保険証を使って受診すると、刑法第二百四十六条でいう詐欺罪にあたり懲役10年以下の罰則が科せられます。
本人確認のために他人の保険証を使うのも、やってはいけない行為です。他人の保険証を本人確認の証明に使うのは確認書類の悪用であり、刑法第百五十八条で定める偽造有印公文書行使罪として、未遂の場合であっても1年以上10年以下の処罰が下されます。
刑法上の犯罪に問われない場合でも福祉事務所のケースワーカーによる指導対象となり、場合によっては保護が停止されたり廃止されたりと、最終的には自分に不利益が及びます。
このように、生活保護受給者が他人の保険証を使うメリットは全くありません。使い道がどのようなものであれ、他人の保険証を悪用することは絶対しないでください。
6.生活保護受給中だが子どものために保険証が欲しい人はどうすればいい?
生活保護を受けている世帯の子どもの身分証明として保険証が欲しい場合は、社会保険等の保険証を使う方法やマイナンバーカードの取得などが考えられます。
会社などで働きながら保護を受けている人は、会社から交付されている社会保険に継続して加入することになります。生活保護を受給しても会社の社会保険からは抜ける必要がないので、国保ではなく社会保険の保険証を使用することが可能です。
社会保険に未加入の人は、身分証明書代わりに保険証が欲しいというケースがあるかもしれませんが、生活保護では想定されていません。どうしても身分証明書が欲しい場合は、マイナンバーカード取得など、生活保護以外の選択肢を検討しましょう。
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