1.一人暮らしの人が受けられる生活保護費はいくら?

生活保護は日本国憲法第二十五条で定める生存権を保障するための制度で、国が定める最低生活費と世帯収入を比較し、収入が最低生活費に満たない場合不足分を支給する、という方法で実施しています。

最低生活費は世帯員の人数や年齢・居住地などで異なり、生活費相当分は食費をはじめ個人消費にあてるⅠ類と、光熱水費など世帯全体の経費をまかなうⅡ類とで構成されます。

居住地による基準は1級地1から3級地2という6つの級地区分ごとで異なり、2つの算式で計算した金額のうち、大きい方が最低生活費として採用されます。

例えば東京23区内は1級地1に区分され、23区内で25歳の人が一人暮らしをしている場合の最低生活費は以下のとおり算出されます。

AよりBの方が多いので、最低生活費は7万6310円になります。

また同じ東京都でも西多摩郡檜原村は3級地1の基準が適用され、25歳の人が一人暮らしをする場合は以下の額となります。

AよりBの方が多いので、最低生活費は6万8430円になります。

なお実際には賃貸の家賃や医療費も算定されるため、最終的な額はケースバイケースになります。

2.生活保護を受ける時、家賃の上限と下限はいくら?

生活保護では賃貸の家賃補助として住宅扶助の支給があり、地域ごとに定められた上限の範囲内で家賃の実費相当を扶助します。

住宅扶助の基準は居住地によって異なり、単身世帯の場合

1級地である東京23区では5万3700円

2級地である東京都あきる野市では4万5000円

3級地である東京都大島町では4万900円

が上限となります。また床面積が15平方メートル以下の物件では、面積によってこれよりも基準額が低くなります。

やむを得ない事情があれば、基準額を超えた家賃の賃貸に住めることもあります。しかし住宅扶助の上限を超えた分は、生活費から捻出しなければなりません。また場合によっては、福祉事務所のケースワーカーから「もっと家賃の安い物件を探すように」と転居指導を受けることも想定しておく必要があります。

一方住宅扶助としての下限はありませんが、収入がトータルの最低生活費を下回るが生活費相当分を上回る場合、上回る額が住宅扶助から相殺されます。生活保護を受けている人が転居する場合は、転居にかかる初期費用を住宅一時扶助として支援してもらうことも可能です。

3.病気療養中の一人暮らしの人は生活保護の受給額は増えるのか?

一人暮らしの人が病気療養をしていても、保護費として受け取る額は変わりません。ただし医療費が高額になっても、医療扶助の現物支給という形で全額生活保護が肩代わりするため、生活保護全体の受給額は上がる、とも言えるでしょう。

保護の要否判定でも、支払っている医療費も最低生活費に含め算定します。その点からすると、通院していない経済困窮者よりは保護受給のハードルが多少下がることになります。

そのためうつ病をはじめとしたメンタル疾患で療養中の人も、条件を満たしていれば当然生活保護の対象になります。

障がいを持っている一人暮らしの人は、条件を満たせば受給額がアップすることもあります。身体障害者手帳の1級または2級を持っている人、身体障害者以外の人は障害基礎年金の1級または2級受給者や同程度の障がいを持つ人には、通常の最低生活費に障害者加算が算定されます。

収入が加算対象でない人と同額であれば障害者加算の分保護費はアップしますが、障がいがある分生活費も余計にかかるという判断でついている加算です。決して保護費が高くなることで生活に余裕が生まれるわけではない、ということは注意しなければなりません。

4.親の収入が高いと生活保護を受けられないって本当?

一人暮らしで収入が低い人でも、親や扶養義務のある3親等内の親族が高収入であれば、生活保護を受けられないことがあります。

生活保護には「世帯単位の原則」が適用され、一人暮らしの場合は基本的に単身世帯と見なし保護の要否判定を行います。ただし世帯認定にあたっては、生計の同一性も考慮されます。住民票上の扱いと異なり、生計の同一性が認められれば同一世帯として認定されます。

一人暮らしの人は、単身で生計を維持していることがほとんどですが、親きょうだいから一時的に離れて生活する場合は、実家と生計が同じという判断をするのが一般的です。実家の親などとあわせて要否判定を行うので、本人も含めたトータルの最低生活費を上回る収入があれば、保護を受けることができません。

完全に独立して一人暮らしをする人でも、実家から経済的援助を受けている場合は支援を受けている額を収入と見なします。この場合親の収入にかかわらず、援助額を含めた本人の収入が最低生活費を上回れば、保護申請をしても却下されます。

もちろん、生活保護を受けるために一人暮らしを希望しても、保護の申請は受け付けてもらえないかもしれません。これから一人暮らしをして生活保護を受けたい場合は、あらかじめ福祉事務所に相談や確認を必ずしておきましょう。

5.実際に生活保護を受けた一人暮らしの生活を紹介

生活保護を受けながら一人暮らしをしている人は、普段どんな生活をしているのでしょうか。ここでは稼働年齢層の人について、いくつか具体例をご紹介します。

①治療に専念しながら自立した事例(30代)

自営業で屋根の板金職人をしている。屋根から落ちて腰を骨折し、生活費の目処が立たなくなったため保護開始。

半年ほど保護受給しながら治療に専念。完治後仕事復帰への不安が残るも、担当ケースワーカーに「困ったらまた保護申請すればいい」と言われ、保護からの脱却を決意。保護廃止後は、従前のように仕事に励むようになった。

②ハローワーク求職活動をしながら保護を受給している事例(50代)

手持ち金がなくなり生活に困窮しているが、反社会的勢力の構成員だった時期があるため、雇用してくれる企業がないという理由で保護開始。

ハローワークに月数回通って情報収集を行っているが、町中心部から車で10分以上離れたところに住んでいるため、条件に合うところがなかなか見つからない。知人の農作業を手伝いながら求職活動を続けているが、年齢的にも新規就労は厳しい状態である。

③アルコール依存症患者(40代)

アルコール依存症で同居家族に暴力をふるうようになったため、全員転出して一人暮らしになる。就労できない状態のため保護開始。

近隣住民との関係がよくないこともあり、普段は孤立した生活を送っている。田畑を所有しているが、病気のため自作ができない。知人に貸して、時々作業を手伝っている。依存症を克服したい意思はあり、通院や断酒会への参加はしている。

しかし孤独感からつい飲酒をしてしまうこと、主治医も「治療に対する強い意思がないと積極的には診ない」と言っていることから、なかなか脱却のきっかけが見いだせない。

6.一人暮らしの生活相談はリライフネットへ

一人暮らしであっても病気治療中であっても、要件を満たしていれば生活保護を受けることができます。だからといって、保護受給を目的に一人暮らしを始めるのはおすすめできません。これから一人暮らしをして保護を受けられるのは、自立へ向け行動する場合に

限られる、と考えるべきでしょう。

また決まった住まいを持たない人が一人暮らしを始める場合は、経済的支援に加え住まい確保のサポートが必要になります。

こういった方々の相談対応をしてくれるのが、生活困窮者を総合的に支援しているリライフネットです。生活保護の申請サポートをはじめとした支援を手がける中、住まい確保のサポートを最も得意としています。

相談は無料なので、生活保護と一人暮らしのサポートを同時に受けたい人は、リライフネットの利用を検討してはいかがでしょうか。