1.年金を受け取る人は生活保護も受けられるのか?

年金を受け取っている人でも生活保護を受けることは可能で、年金と生活保護を同時に受けている高齢者が相当数いるという事実がそれを示しています。

むしろ生活保護制度の趣旨からすれば、年金を受給した上で、なおかつ生活に困窮する人や世帯しか保護を受けられないと言い換えることができます。つまり年金の受給資格がない人以外は、年金を受給していることが保護受給の前提となります。

もちろん緊急時はその限りではないものの、保護開始後には年金受給の手続きをするよう福祉事務所からの指導が入ります。

年金には基礎年金や厚生年金などの公的年金と、個人年金をはじめとした私的年金に分けられます。また公的年金でも、高齢者が受給する老齢年金だけでなく、一家の大黒柱を失った遺族が受給できる遺族年金や、一定程度の障がいがある人を対象とする障害年金などもあります。

遺族年金や障害年金の受給対象は限られているため、この記事では特段の断りがない限り、老齢年金を年金と言い換えて言及します。

2.年金と生活保護のどっちが得か?と考えるのは誤解である

年金と生活保護は、どちらも憲法第二十五条でいう生存権を保障するという目的を達成するための社会保障制度ですが、制度の仕組みは全く異なります。

年金は原則として、現役時代に支払った保険料に応じた金額を継続的に受け取るというものです。一方生活保護は年金のように決まった額ではなく、保護受給者ごとの事情に応じた金額が支給されるという大きな違いがあります。

また年金は「国民生活の安定を共同連帯によって支え合う」という理念のもと、いわゆる現役世代が納める保険料を仕送りのような形で高齢者などに年金として納めるという方式を採用する制度です。

これに対し生活保護は、生活保護法を根拠に国が保護を実施するというもので、年齢に関係なく、現時点における収支や資産状況によって保護の要否が判定されます。

このように年金と生活保護は仕組みや目的が異なるので、どちらが得かという考え自体がナンセンスといえるのではないでしょうか。

3.年金受給者が生活保護を申請できる基準とは?

年金を受給しているかどうかにかかわらず、生活保護の受給要件は「最低生活費に世帯収入が満たない」というものです。

最低生活費は「健康で文化的な最低限度の生活」を送るために必要な額として、世帯員の人数や年齢・居住地により国が定めた基準にもとづき算定します。

74歳と69歳の二人世帯が必要な最低生活費としては、それぞれ家賃や医療費を除き以下のような計算となります。

具体的には、Ⅰ類*係数1+Ⅱ類の合計に0.855を乗じた算式Aと、異なる基準の算式Bを比較して、金額が高い方が最低生活費として採用されます。

東京23区に居住する場合は1級地1の基準が適用され、

AよりBの方が多いため、11万9916円となります。

東京都羽村市に居住する場合は2級地1の基準が適用され、

AよりBの方が多いため、11万2189円となります。

人によって異なる家賃や医療費などを合計した額と収入額を比較して、最終的に保護の要否を判定します。

年金は基礎年金と厚生年金の2階建てとなっており、基礎年金は月額6万6250円(年額79万5000円)、加入期間が短い場合は不足期間に応じて減額されます。

生活費だけを比較すると微妙ですが、家賃や医療費を加えて比較すると、生活保護の基準を満たす可能性があります。

老齢厚生年金は人によって大幅に受給額が異なるため一概にはいえませんが、40年会社員として働いていた人の年金額は、最低生活費を大きく上回る場合が多いのではないでしょうか。

4.生活保護を受給するための手続きについて

生活保護は都道府県や市区役所に設置される福祉事務所が実施機関となるため、町村の住民は前者に、市区の住民は後者の相談窓口で申請手続きを行います。要件を満たした人が代理申請することも可能ですが、ここでは要保護者本人が申請する場合を想定して紹介します。

福祉事務所が定める様式の申請書及びその添付書類には、以下の項目を記載しなければなりません。

申請者の氏名、住所又は居所、性別、生年月日

保護を受けようとする理由

資産及び収入の状況

働いている人は生業や就労の状況

働いていない人は求職活動の状況

扶養義務者の状況(住所氏名、続柄など)

年金受給者が生活保護を申請する場合は、年金証書及び受給額がわかる通知等を準備しましょう。

福祉事務所で申請を受け付けた後、ケースワーカーによる面接や金融機関等への照会など様々な調査により、要否判定に必要な情報を収集します。

申請日から14日以内に保護の要否が決定され、保護開始通知書もしくは申請却下通知書が送られてきます。しかし実際には預貯金調査に時間がかかるため、例外的な扱いとされている30日以内、それもぎりぎりになって通知される場合が多いようです。

初回の保護費支給は通知と別に事務処理を行うことが多く、詳細は開始決定通知書が届いてからケースワーカーに確認しましょう。

5.生活保護を受ける際のデメリット

生活保護を受けていても、日常生活を送る上でのデメリットは、自動車が保有できず公共交通機関で移動しなければならないため、買い物や通院で多少不便を感じるという程度です。

しかし保護の要件として資産の処分があったように、新たな資産を形成することができないというのは大きなデメリットです。年金受給者も資産形成が認められないため、子や孫へ財産を残すのは事実上不可能といえます。

借金が認められないのも、生活保護受給者のデメリットです。特に年金受給者は注意が必要で、交付される年金証書を担保に借金することは禁止されています。

貸金業法第二十条の二第一項では、貸金業者が「年金証書の引渡し若しくは提供を求め、又はこれらを保管する行為」を禁じており、借りることも認められません。証書担保の借金は違法になるだけでなく、業者から法外な利息を要求されることもあるため、絶対にしないでください。

他人が家に入るのを嫌がる人の場合は、ケースワーカーの定期訪問もデメリットに感じるかもしれません。しかし年金受給者への訪問は安否確認も兼ねており、訪問時に人には言えない悩みを相談することもできます。

定期訪問はデメリットと思わず、知人がお茶を飲みに訪問するくらいにとらえておいた方が、お互い気楽に本音を話せるのではないでしょうか。

6.生活保護の相談ならリライフネット

生活困窮者の最終的な救済策である生活保護は、年金を受けながらでも受給できます。むしろ年金の受給資格がない人でなければ、先に年金を受給しなければ保護を受けられないといえるでしょう。もちろん急迫した状況であれば保護を受けることができますが、保護開始後に年金受給の手続きをする必要があります。

経済的に困窮する人が生活保護を申請する前には、他法で定める様々な救済策を活用する必要があります。そんなとき相談先として頼りになる存在が、リライフネットです。

リライフネットでは生活に困っている人からの総合的な相談に対応し、生活保護の申請をはじめ様々なサポートを提供しています。生活保護の原則のひとつは「他法優先」であり、年金制度を含めた他の支援策も熟知しています。各分野の専門家とネットワークを構築しているので、より専門的なサポートも可能です。

年金を受給しながら生活保護を受けたい人も、生活に困窮する場合はリライフネットの無料相談を利用してはいかがでしょうか。