1.生活保護受給者でも引越しはできる?
「生活保護受給中でも引越しできるの?」
「費用は支給されるの?」
生活保護受給中の引越しは、費用、物件探し、手続きなどの不安が多く、諦めてしまう方も多い傾向です。
今回は、生活保護受給中にスムーズな引越しをするためのコツをご紹介します。
①生活保護受給中でも引っ越しはできる
住まいの場所を選ぶことそのものは憲法で保障された権利であり、自由に行うことが可能です。ただし、生活保護受給中はケースワーカーの指導に従う必要があり、生活保護の受給を続けながら引越しする場合には、ケースワーカーに相談し、許可を得る必要があります。
②引っ越し費用は条件に該当すると支給される
生活保護受給中の引越し費用は、条件に該当する場合にのみ支給されます。
支給される条件は17項目あり、この条件に1つでも該当し、福祉事務所が認めた場合に、引越し費用の支給対象となります。
現在の住宅で問題なく生活できている場合の引越しは、自己都合と判断され全額自己負担となります。
③問題点をまとめて相談しよう
現在の住宅が原因で日常生活に支障がある場合は、ケースワーカーに相談してみましょう。
引越しで問題を解決することで、自立への一歩を進めることができます。
ケースワーカーに相談する前には、住宅に関する悩みや問題点をメモにまとめておくことがおすすめです。引越しを希望する市や町、引越すことで節約できる交通費などのメリットも調べてみましょう。
問題点を明確にしておくことで相談がスムーズになり、場合によっては引越し以外の方法で問題を解決できる可能性もあります。
2.生活保護受給者の引越しの初期費用は支給される
生活保護受給中は、引っ越しの初期費用が支給されます。
初期費用が支給される条件は17項目あり、そのうち1つでも該当すれば支給対象になります。
①引っ越しの初期費用が支給される条件
1.病院を退院する際に、帰る住居がない場合
2.福祉事務所の指示により、規定以上の家賃の住居から規定以内の住居へ転居する場合
3.国や自治体から、土地の開発などによる立退きを強制された場合
4.退職したため社宅から転居する必要がある場合
5.社会福祉施設から退所する際に、帰る住居がない場合(退所する施設へ入所する際の目的を達した場合に限定)
6.一時的な住居として無料低額宿泊所や施設を利用していたが、転居が可能と認められた場合
7.勤務先が遠方のため、通勤が著しく困難な場合。会社近くへの転居が交通費の減少、身体的な負担減少、収入増加などメリットが大きく、転居が自立助長に効果的と認められる場合
8.火災や水害などにより住居が消滅、もしくは居住できない状態になった場合
9.住居の老朽化や破損により、居住できない状態になった場合
10.世帯人員に対し住居が著しく狭い、もしくは劣悪な状態で居住が困難な場合
11.病気の療養に著しく環境条件が適さない場合、または身体に障害があるため住宅の構造が生活に適さない場合
12.住居がなく、親戚や知人の家に寄宿していたが、転居が可能になった場合
13.家主から契約の更新を拒絶されるなど、居住が継続できなくなった場合
14.事実婚や婚姻関係の解消により転居が必要になった場合
15.自身が介護されることを目的とした扶養義務者の近隣への転居、もしくは、双方生活保護者受給者で扶養義務者が介護をするために介護を受ける側の近隣へ転居する場合
16.やむを得ず生活保護受給者の状態に対応した構造の法定施設(有料老人ホームや社会福祉各法に規定されている施設)へ転居する場合
17.同居家族からの暴力、犯罪被害など、生命や身体の安全を確保する必要がある場合
②初期費用はいくら支給されるのか
引越しの初期費用は、住宅扶助の基準額から計算します。
住宅扶助の基準額は、厚生労働省が定める級地区分によって変わります。
級地区分は、1級地、2級地、3級地の3種類です。
お住まいの級地区分については厚生労働省の級地区分をご覧ください。
厚生労働省「級地区分」平成30年10月1日時点
https://www.mhlw.go.jp/content/kyuchi.3010.pdf
住宅扶助の家賃、間代、地代の基準額は、厚生労働省が平成25年に提示した資料によると、1級地及び2級地で月額13,000円以内と定められています。(※1)
しかし、13,000円の家賃で物件を探すことは困難なため、居住地域に応じた特別基準上限額が別途適用されます。
東京23区の単身世帯の場合、1級地となるため、特別基準上限額は53,700円です。
引越しに必要な敷金や礼金などの初期費用は、単身世帯の場合、特別基準上限額の3倍(※2)の範囲内で支給されます。
世帯人員が複数人の場合(6人以下)では、複数人世帯等の特別基準 として、限度額×1.3(※3)を上限とする金額が支給されます。
世帯人員が7人以上の場合の特別基準は、限度額×1.3×1.2(※4)を上限とする金額が支給されます。
つまり、複数人世帯(6人以下)の場合は、特別基準額の3.9倍、複数人世帯(7人以上)の場合は、特別基準額の4.68倍の範囲内での支給になります。
※1~4出典:厚生労働省 社会・援護局保護課「住宅扶助について」平成25年11月22日 資料4
③支給される費用
1-初期費用
初期費用は、一人暮らしの場合いくらになるのか試算してみましょう。
東京23区で一人暮らしの場合、1級地の単身世帯となり、住宅扶助基準額は53,700円です。
支給される初期費用は、単身世帯のため、3倍の161,100円です。
- 仲介手数料50,000円(家賃1ヶ月分)
- 敷金50,000円(家賃1ヵ月分)
- 礼金50,000円(家賃1ヵ月分)
- 火災保険料(15,000円から18,000円)
- 保証料(家賃保証会社を利用する場合、およそ家賃の半額)
初期費用の合計は約193,000円ですが、敷金や礼金ゼロの物件を探すことで、費用を抑えることが可能です。不動産会社の繁忙期である3月から4月や9月から10月を避けると、敷金、礼金ゼロの物件が増える傾向があります。
時間に余裕がある場合は、繁忙期を避けることで希望の物件を選びやすくなります。
2-引っ越し業者費用
引越し業者の費用は初期費用とは別に、福祉事務所が直接引っ越し業者に支払います。
事前に、3社から5社の見積書を用意して福祉事務所に提出します。
引越し料金は、必要不可欠な料金が基本となります。
自分でできる作業や特別なサービスを利用した場合、承認されない可能性が高くなります。
基本的な引越し料金で見積もりを依頼しましょう。
3-家具や家電の費用
引越しの初期費用に、家具や家電の費用は含まれていません。
しかし、冷暖房器具、照明器具、炊事用家電など生活必需品は、家具什器費として追加支給されます。
家具什器費の支給条件に該当する場合、原則現物で支給されます。
4-引越し先での就職に必要な衣類
引越し先で就職することが確定している場合は、生業扶助の就職支度費として、就職に必要な洋服や靴などの購入費用が支給されます。
出典:内閣府男女共同参画局「扶助の種類」
④共益費(管理費)について
共益費は管理費とも呼ばれ、建物の共用スペースの管理維持費です。
不動産会社によって呼び方が異なりますが、どちらも同じような意味で使用されています。
共益費は住宅扶助では支給されないため、生活扶助から支払います。
共益費は建物の入居者で分割して負担するため、入居者が多い建物ほど安くなる傾向があります。
管理費不要の物件もありますが、その場合は家賃に管理費が含まれているケースが多くなります。
3.生活保護を受給しながら引っ越しをする流れ
生活保護受給中の引っ越しは、最初にケースワーカーに相談します。
しかし、何も準備せずに相談した場合、要望を上手く伝えるには時間がかかります。
相談する前に、気持ちと状況を整理してみましょう。
①状況をメモにまとめてケースワーカーに相談
引越しを考え始めたら、悩みや希望をまとめたメモを元にケースワーカーに相談します。
引越しの理由が病気の場合は、許可を得るために診断書も必要になります。
相談の際に、申請に必要な書類についても確認しておきましょう。
②ケースワーカーに許可を得る
ケースワーカーに相談し、許可を得られたら、実際に引越しの準備を始めます。
③引っ越し先を探す
引越し先の家賃は、生活保護の住宅扶助の範囲内の金額になります。
生活保護受給者であることで、不動産会社に契約を断られるケースもあります。
そのようなケースを避けるためにも、インターネットを利用して、生活保護OKなどの記載を目安に問い合わせてみましょう。
連帯保証人がいない場合は、家賃保証会社が利用できる物件もあります。
また、近年は災害も増えているため、住宅周辺のハザードマップなども確認しましょう。
台風などの大雨による浸水、地震や火災での避難が個人で可能か、避難場所までの経路と距離、住宅の周囲の環境も確認しておくことが大切です。
④契約する
引越し先の住居が決まったら、契約する前にケースワーカーに報告します。
ケースワーカーの許可を得た後、契約手続きを始めます。
住宅の契約が完了し受け取った契約書と領収書は、ケースワーカーへ渡しましょう。
⑤引っ越し業者へ依頼
契約後、引越し業者を決めます。
3社以上の見積書を集めましょう。
インターネットの見積もりサイトを利用すれば、無料で一括見積もりが可能です。
4.生活保護受給者の引越しの退去費用は支給されるのか
生活保護受給者の退去費用(原状回復費用)は、自己負担になります。
①入居時に敷金を支給された場合
退去する住居へ入居する際に、初期費用として敷金が支給された場合、原状回復費用は入居時の敷金から差し引かれます。
そのため、敷金以上の費用が掛かった場合のみ、自己負担となります。
②敷金がゼロの物件の場合
退去する住居へ入居する際に敷金がゼロだった場合は、退去時に原状回復費用が請求される場合があります。
この場合は、入居時に初期費用として敷金が支給されていないため、条件を満たした場合に限り必要最小限が住宅維持費として認められることが、厚生労働省によって示されています。
※出典:厚生労働省「生活保護問題集について問7-117」P.157平成21年3月31日
住宅維持費から支給された金額を超える部分は自己負担となります。
③退去費用が足りない場合
退去費用が足りなくなった際に友人から借りたり、消費者金融を利用したりする場合は、借りた金額が収入となります。
金額によっては生活保護支給額が減る可能性もあるため、事前にケースワーカーに相談しましょう。
また、原状回復費用が少なく済み、敷金が返還された場合も収入になるため報告が必要になります。
5.まとめ
今回は、生活保護受給中の引越しについてご紹介しました。
生活保護受給中に快適で予算に合う住まいを探すことは大変です。
しかし、問題を解決するために行動することで、生活はより良く変化します。
また身体的な負担のある住まいは、転倒や体調不良などで自立を先延ばしにしてしまう危険性もあります。
自立への安全性の確保や、収入の増加に役立つのであれば、引越しを検討してみましょう。
リライフネットでは、生活保護受給中でも入居可能な物件の提供や提携事業者と連携してお部屋探しをサポートしています。
引っ越しを諦めたことがある方も、もう一度チャレンジしてみませんか?
ぜひお気軽にお問合せください。