生活保護を受給するにあたり、前提の1つとして資産を活用することが求められます。
資産には不動産も含まれるため、基本的には売却して生活費に充てるよう福祉事務所に指導されます。
しかし例外もあり、手放すことで最低限の生活の維持に支障が出てしまうと判断された場合は所有が認められることもあります。
この記事では生活保護を受給する際の、不動産の所有の可否を中心に解説します。
1.生活保護を受給しながら不動産を所有できる?
生活保護を受給するには、前提として4つの条件を満たす必要があります。
- 資産の活用
- 能力の活用
- 扶養義務者の扶養の活用
- その他あらゆるものの活用
です。
不動産はこの中の資産に当てはまります。厚生労働省によると不動産については原則として売却すること、とされています。
参考データ:不動産の保有の考え方
「平成16年 生活保護制度の在り方に関する専門委員会」(厚生労働省)
そのため、基本的には不動産は売却して資産として活用することになるでしょう。
ただし例外的に不動産の所有を認められることもあります。例えば既に居住している家屋の場合は、処分価値が利用価値と比べて著しく大きいと判断されない場合や、高齢者世帯が所有している自宅の場合などは、所有が認められることがあります。
また事業用の建物、田畑や山林に関しても同様で、規模が受給世帯に見合っていて生活に必要と判断された場合、所有が認められることもあります。
つまり「健康で文化的な最低限度の生活」の維持に必要と判断される場合は、不動産の所有が認められるケースもあるという事です。
あくまでも資産の「活用」ですので、必ずしも売却しなければならないということではありません。空き部屋のある家屋の場合は一部を貸し出して収入を得る、田畑や山林を使い事業を行うことで利益を得るなど、所有しつつも色々な方法で上手く活用するよう指導されることもあるでしょう。
いずれの不動産にしても所在地や規模によって価値は異なりますので、この不動産の場合はこう判断されるとは一概には言えません。
各自治体の福祉事務所によって最終的な所有の可否も分かれることがありますので、注意が必要です。
2.生活保護を受給しながら不動産を所有できないケース
①資産価値が著しく大きい不動産である
仮に自宅であっても例えば都市部の一等地であったり、世帯の人数に対して大きすぎる家・土地などであるなどの場合、売却して資産として利用する価値が自宅として利用する価値などよりも著しく大きいと判断され、所有が認められないこともあります。
この場合は福祉事務所によって、不動産を売却するよう指導をされます。
この資産価値が著しく大きいと判断される基準としては、厚生労働省によると「標準3人世帯の生活扶助基準額に同住宅扶助特別基準額を加えた額の概ね10年分(約2千万円程度)を目処。」とされています。
参考データ:不動産の保有の考え方
「平成16年 生活保護制度の在り方に関する専門委員会」(厚生労働省)
実際に約2千万円を超えるかは調べてみなければ分かりません。そのため、各自治体の福祉事務所で担当の方としっかり相談や確認をする必要があるでしょう。
②住宅ローンが残っている不動産である
住宅ローンが残っている不動産の場合も所有が認められません。
支給された生活保護費を住宅ローンの返済に充てられる、という状況が起こってしまう可能性があるためです。
家や土地は財産であり、住宅ローンが払い終わると個人が財産を得るということになります。
生活保護費は税金によって賄われているものです。あくまでも「健康で文化的な最低限度の生活」を送るために支給されるものであって、個人の財産を得るために支給されるものではありません。そのため仮に生活保護費が住宅ローンの返済に充てられた場合、税金によって個人の財産を得る手助けをしている形となってしまいます。
そのため住宅ローンが残っている不動産を所有している場合は、売却して住宅ローンを完済するように福祉事務所に指導が行われます。居住している自宅だとしても住宅ローンが残っている場合は、生活保護を申請することができません。
例外として住宅ローンの返済期間が短く、返済金額も大きくない不動産の場合は所有が認められることもあります。
こちらも各自治体によって判断は異なりますので、必要な場合は事前に各自治体の福祉事務所に確認を行う必要があるでしょう。
3.居住以外の不動産の場合は生活保護を受給していても所有できる?
基本的に居住用以外の不動産に関しては、資産の活用という面からも売却して生活費に充てるという事が求められます。
貸家としてマンションやアパートを所有している場合、これらを他者に貸し出して利益を得ることは不動産投資にあたり、税金から支払われている生活保護を受給しながら行うのは、あまり適切とは言えません。
例外として、貸家としての規模が生活保護受給世帯に見合っていて、約3年以内の家賃合計が売却代金よりも高いと認められた場合は、所有できることもあります。
参考データ:資産の活用
平成 30 年度 生活保護実施要領等(厚生労働省)第3 資産の活用-2 家屋-(2) その他の家屋
この場合は収益を出すように活用することを指導され、生活保護費は賃貸収入を差し引いた額が支給されます。
事業用の田畑や山林は自宅などの扱いと似ていて、売却して資産として利用する価値が所有して利用する価値よりも著しく大きいと判断された場合は、売却するよう指導されることがあります。
田畑や山林の場合は植林事業以外の事業用または、薪炭の自給用や採草地用として利用していることが前提となっています。
これらの不動産は、所有することによって周辺の低所得者層の方々と比較したときに収入に大きな差が出てしまう場合は、所有が認められないこともあります。
4.不動産の売却をしなければならない時の対処法
もしも不動産の売却を行わなければならない場合は、なるべく高く売却できるように複数の不動産業者の査定を受けましょう。
この際に一括査定を行える無料のサイトなどを利用すると、費用がかからず一度に複数の不動産業者の査定を確認することができます。
また実際に売却活動を行っていることが福祉事務所にしっかりと伝わるよう、不動産査定を取った後は不動産会社と契約を行い、売却活動報告を受けましょう。
5.まとめ
今回の記事では生活保護を受給する際の所有の可否や居住用以外の不動産を含めた扱いや売却時の流れなどについて解説を行いました。
基本的には不動産にも資産の活用ということが求められますが、必ずしも所有している不動産の売却を行わなければならないということではなく、状況によっては所有を認められるケースもあるようです。
とはいえ、実際に生活保護の受給を希望する方によって環境や状況は様々だと思いますので、必ずしもこうなるとは一概には言えません。
なので1人で悩まず、不動産の所有の可否など分からない点は、事前に福祉事務所の担当の方としっかり相談や確認を行うようにしましょう。
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新たに住居を探さなければならないといった状況になってしまった場合でも、1人で悩まずお気軽にお問い合わせください。