子供がいる世帯は生活保護を受けられるのか

生活困窮者の救済策として真っ先に挙げられるのが生活保護の制度ですが、子どもがいる世帯であっても要件を満たせば保護を受けることは可能です。

生活保護とは憲法で保障される生存権を確保する制度として、「健康で文化的な最低限度の生活」を送るための支援を行うというものです。世帯の状況に合わせ国が定める最低生活費に世帯収入が満たない場合、不足分を補う形で支給されます。

最低生活費は、世帯員の人数や年齢・居住地により基準が異なります。

例えば東京23区内にある家賃65,000円のアパートで生活する4人世帯(40歳・36歳・16歳・12歳)では、29万円弱が目安となります。また医療機関に定期通院中の人がいる場合は、これに医療費の自己負担額も加算します。

生活保護を受給すると発生する”制限”

生活保護は最低限度の生活を保障する最後のセーフティーネットという位置付けのため、受給する前には生活保護を受けなくてすむよう、あらゆる策を講じなければなりません。

どの手段にも共通するのは「あらゆるものを現金化しなければならない」という点で、それでも生活に困窮してはじめて生活保護を受けることができます。

生活保護の受給が始まっても、「最低限度の生活」を維持するための制約があり、収入があれば扶助額から差し引かれる、ローンやクレジットは利用できない、既存の借金は返済が認められないといった例があります。

また生活保護には「自立の促進」という目的もあるため、働ける人は働く努力をしなければならないなど、自立へ向け最大限の努力をする必要があります。

子育て世帯の保護者の多くはいわゆる稼働年齢層に入るので、保育所やファミリーサポートセンターをはじめ、様々な子育て支援サービスを利用しながら就労する、という指導を受けると考えておきましょう。

子育て世帯が生活保護を受給するときの壁

上記で述べたように、生活保護を受けている人には一定の制約がかかります。子育て世帯が生活保護を受給するからといって特別な制限が追加されるわけではありません。

しかし子育て世帯ならではの特徴から、特に以下の2点が申請や受給のネックになると考えられます。

自動車がないことによる生活上のデメリット

生活保護を受けると資産の保有が制限されますが、特に自動車を使えないという点は子育て世帯にとって決定的なデメリットです。

食品や日用品の買い物が不便になるのはもちろんですが、病院の送迎にも支障をきたします。子どもが通院する場合は親が連れて行くことになりますが、小学生以上は運賃を支払うことが多いため費用的にも厳しくなります。

中学生の子どもがいる人の場合は、部活動の送迎にも制約が加わります。運動部で遠征するときは、自分で送迎することができないため、他の保護者に頼まなくてはなりません。

もちろん通勤手段も限られてくるため、これから就労先を探す場合も不自由が生じます。都市部では公共交通機関が整備されていますが、この後説明する住宅の制限を考慮すると、既に働いている人も通勤が不便になることも想定しておきましょう。

自動車は保有することだけでなく、他の人の車を借りて運転することも禁止されています。真にやむを得ない場合は保有が認められるという建前ですが、実際の運用はそれぞれの福祉事務所になるため、原則として自動車の使用が認められないという前提に立つべきでしょう。

子どもの転校もあり得る

子育て世帯が生活保護を受ける際、場合によっては住環境が変化することも想定しなければなりません。

住宅ローンは返済することで資産形成することになるため、ローン付き住宅に住んでいる場合は売却してからでないと生活保護は受けられません。

ローンを完済し、かつ適正規模の住宅であれば保有が認められますが、子育て世帯の多くは親もまだ若く、住宅ローンは返済中というところが多いのではないでしょうか。そのため多くの子育て世帯が生活保護を受ける場合、賃貸住宅で生活することになります。

家賃相当分は住宅扶助が支給されますが、住宅扶助の基準には上限があります。基準を超える家賃の物件は基本的に借りることができず、既に入居している場合は転居指導を受けることがあります。

物件の場所によってはそれまでの学区をまたぐこともあるため、子どもが転校しなければならない場合も考えなければなりません。

ひとり親世帯で別に加算される扶助がある

いわゆるシングル家庭またはひとり親世帯の場合は、最低生活費に追加計上される母子加算があります。母子家庭だけでなく父子家庭も加算の対象となりますが、以前は母子家庭のみが加算対象だったため、母子加算という名称になっています。

ただし一般的には、女性の方が賃金や就労条件などにめぐまれないことが多いと言われているため、父子家庭で生活保護を受給する事例は少ないかもしれません。

母子加算の額は、東京23区が該当する1級地-1の場合、18歳未満の子どもが1人の場合18,800円、2人の場合23,600円となります。3人以上になると、1人あたり2,900円がさらに加算されます。

母子加算の対象になるのは18歳未満の子どもで、成人した子どもは加算の対象にならないので注意してください。また児童扶養手当を受給している世帯では、加算が計上されるとともに手当分が収入認定されるという点に留意しましょう。

母子加算と併用できる加算、できない加算

母子加算はシングル家庭で18歳未満の子どもがいる世帯が対象となりますが、同時に児童養育加算の対象にもなります。

児童養育加算はシングル家庭であるかどうかに関わらず、18歳未満の子どもがいる世帯に対し、子どもの人数に応じた額が加算されます。いずれも、18歳になる日以降最初の3月31日までが加算対象となります。

また経過措置として、養育する子どもの人数や年齢によってさらに加算される場合もあります。

母子加算は医療や介護に関する加算と同時に算定されることもありますが、障害者加算と同時算定ができません。障がいを持つ人の住環境改善という目的で算定される障害者加算は、母子加算と併給できないという点は注意が必要です。

困窮している状態で引っ越しが必要になったら

生活に困窮する人は単身者に限らず、中には子どものいる世帯やいわゆるシングル家庭・ひとり親世帯も含まれます。

生活保護をはじめ経済的支援が必要なのはもちろんですが、教育や健全育成など子どもならではの支援も欠かせません。特にシングル家庭は親の就労が困難な場合もあり、より手厚いサポートが求められます。

子どもがいる世帯ならではの悩みとして義務教育や高等学校の学区の問題がありますが、自立に必要と判断される場合は引っ越しするよう指導されることがあります。生活保護を受けながら借りられる物件は限られているため、転校せずにすむ物件を探し出すのは困難です。

また安心して子育てをするためには、しっかりした住環境が必須です。リライフネットに相談すれば、生活保護や住まい探しなど、生活困窮者に対する総合的なサポートを受けることができます。

中でもマンションやアパートなど住まいに関する支援が充実しているという強みがあり、最短では相談の翌日から提供できる物件にも対応します。

生活に困窮している子育て中の人は、住まいの提供や生活保護申請などの悩みや困りごとを無料で相談できるリライフネットに連絡を入れてみましょう。