生活保護制度は、経済的に困窮している人々を支援するための重要なセーフティーネットです。しかし、貯金がある場合に生活保護が受給できるのかどうか不明確で、申請に躊躇する人も少なくありません。この記事では、生活保護を受給する際の条件と貯金の取り扱いについて詳しく解説します。
1.貯金があると生活保護は受給できない
生活保護を申請する際に、一定額の貯金は認められています。ただし、貯金額が一定額を超える場合は、まずその資金を生活費に充てることが求められます。
①生活保護申請時の貯金
生活保護の申請前に貯金を保有している場合は、その貯金を活用して生活することが求められます。保有していることが許容される貯金額の目安は、厚生労働省が定めた「最低生活費」です。最低生活費の金額は生活保護制度に定められている方法で算出されます。
生活保護の受給を申請する際に、なぜ「最低生活費」が基準になるのかは、生活保護制度の理念と仕組みによります。
②生活保護受給中の貯金
生活保護制度では、生活保護の受給審査の際だけでなく生活保護受給中に貯金をすることはできないとされています。しかし、貯金することへの妥当性が福祉事務所に認められた場合についてはその限りではありません。福祉事務所に認められた場合は、貯金することが可能です。主に以下の目的での貯金が認められています。
- 自立のための資金
- 子供の教育費
- 将来の生活必需品の購入費用
- 急な出費への備え
貯金をする場合は、事前にケースワーカーへ相談してから貯金するようにしましょう。
③生活保護制度の仕組み
厚生労働省が定めた最低生活費を超える貯金がある場合、生活保護制度では、生活保護を開始決定できません。生活保護制度は、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的としています。そのため生活保護制度では、最低限度の生活の維持に必要な金額を厳密に計算し、基準額を算出します。この最低生活費以上の貯金がある場合、最低限度の生活は維持できると判断されるため、生活保護が受給できないケースが多くなります。
1-生活保護の条件
生活保護を受けるための条件の一つとして貯金などの資産を保有していないことがあげられます。
この資産の範囲は、幅広く不動産から株式債券などに加え、自動車やパソコンなども場合によっては含まれます。そして、もちろん貯金も資産の中に含まれます。
生活保護制度では、貯金を含めた保有する資産を活用し、生活を維持することが前提です。すべての貯金や資産を活用しても、生活が維持できない場合に生活保護が検討されるため、貯金がある場合は生活保護を受給できません。
2-許容される貯金額
生活保護を受けるためには1円も貯金を持っていてはいけないという訳ではありません。少額の貯金額ならば所有したままでも、生活保護の対象になります。
生活保護の対象になる範囲の貯金額は、世帯の最低生活費以内となっています。
たとえば、東京都23区内など1級地-1に住む60代の単身世帯の場合、最低生活費が約13万円です。この場合13万円以内の貯金は許容されます。※1
3-最低生活費とは
最低生活費は、厚生労働省が定める計算方法で算出されます。
最低生活費を計算する場合は、最初に厚生労働省「生活保護制度」の公式ページ(※2)にある「お住まいの地域の級地を確認」(※3)から自身の「級地」を確認します。
次に、「生活保護制度」の公式ページの「生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法」※(前掲1)に沿って計算します。一覧表では、自身の級地と年齢が交わる箇所に記載されている金額が生活扶助第1類の基準額となります。記載内容に沿って金額を確認し、加算します。子供の有無、介護、病気による通院などの項目に、自身の状況が該当する場合は、その項目の金額を加算します。AからFまですべての項目を確認すると、最低生活費が算出されます。
4-生活保護費
実際に支給される生活保護費は、算出された最低生活費から、世帯の収入を差し引いた差額分です。そのため最低生活費以上の収入や、貯金がある場合、生活保護の対象となる差額がないため受給できません。
※なお、貯金が最低生活費未満の状態であっても、申請後に前職の給料が生活保護費を上回る金額が振り込まれる見込みがある場合は却下される可能性があるのでご注意下さい。
しかし、世帯の最低生活費よりも大幅に高額の貯金も認められたケースもあります。例えば、子供の将来の学費や、介護・入院の付き添いに必要な費用のための貯金などです。
このように認められる貯金額はケースによって大幅に異なりますので、どの程度まで認められるのか気になる方は、福祉事務所で相談してみてください。
※1出典:厚生労働省「生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法」参照:2024.07.08
※2出典:厚生労働省「生活保護制度」参照:2024.07.08
2.生活保護の受給条件
生活保護の受給には、貯金の金額以外にも以下のような条件があります。※
①生活保護は世帯が対象
生活保護の条件は世帯が対象となります。世帯単位での収入や資産で、生活保護が必要かどうかが調査されることがポイントです。世帯の全員が生活保護の条件を満たしている場合に、受給が可能となります。
②活用できる資産がない
世帯に、生活の維持に活用できる資産が何もないことが条件です。必要以上に豪華な家や使用していない土地、ブランドのバッグ、貴金属などの売却が可能な資産は、現金化して生活費に使用することが求められます。そのほか、資産運用となる生命保険や株などの証券についても解約することが求められます。
③働くことができない
世帯の中で、働くことが可能な人がいる場合は、能力を活用して働くことが求められます。しかし、育児や介護により就労できない場合や、高齢、病気、ケガなど働くことができない理由がある場合は生活保護の対象となります。
④生活保護以外の制度が利用できない
生活保護制度は、生活が困窮した場合に頼る最後のセーフティーネットの役割を持つため、生活保護以外の制度が利用できる場合は、そちらを優先的に利用します。年金や障害年金、給付金や貸し付けなどを検討します。
どのような制度が利用できるかは、生活保護の申請を相談した際に相談員から説明される場合があります。
⑤扶養義務者の援助が受けられない
扶養義務者からの援助が受けられる場合は、援助が優先されます。扶養義務者とは、民法第877条第1項に定められている、扶養義務を持つ人です。具体的には、生活保護受給者の父母、祖父母、子、孫、兄弟姉妹などの親族と配偶者で、生計が同一の人を指します。※2
⑥収入が最低生活費に満たない場合
生活保護の条件をすべて満たしており、なおかつ世帯の収入合計が最低生活費未満の場合に、生活保護の受給が可能になります。
※1出典:厚生労働省「生活保護制度」参照:2024.07.08
※2出典:野洲市「扶養義務者の範囲」参照:2024.07.08
3.生活保護の手続き
生活保護は、原則として現在地での申請となるため、通常住所地を管轄する福祉事務所や自治体の福祉課で申請します。生活保護の手続きの流れは以下のようになります。※
①生活保護の相談と申請
福祉事務所や福祉課で、生活保護を希望する意思表示することで、申請が可能になります。申請するかどうかを迷っている場合は相談から始め、他に利用できる制度や給付金、貸付制度などがないか聞いてみることもおすすめです。
②生活保護の調査
生活保護の申請後に、事実確認の調査が始まります。以下のような調査が行われ、承認されると受給の決定通知が発送されます。
1-生活状況等調査
生活状況の事実確認のために家庭訪問などが行われます。
2-資産調査
預貯金、保険、家や土地などを保有していないかを確認する資産調査です。
3-扶養義務者の調査
扶養義務者の有無や、扶養義務者による扶養や援助の可否を確認します。虐待やDVなどの理由があり、扶養義務者の援助が期待できない場合は、申請の面談時にその旨を伝えます。
4-収入の調査
世帯の収入状況が調査されます。年金等や就労収入などの調査です。
5-就労の調査
世帯に就労することが可能な人員がいないかを調査します。
③生活保護の決定
調査の結果、生活保護が必要であると認められると生活保護の決定通知が郵送されます。
生活保護費は、最低生活費から世帯の収入(年金や就労収入など)を差し引いた金額が支給されます。
④収入申告と貯金
生活保護を受給している間は、常に収入申告を行います。世帯の収入が最低生活費以下であることが、生活保護費の支給条件のためです。世帯に収入があったことを申告しない場合、不正受給となり罰せられる可能性があるため、収入があった場合には速やかにケースワーカーへ報告しましょう。
基本的に、生活保護受給中も最低生活費以上の貯金は認められていません。しかし、家電の買い替えやエアコンの修理など、明確な理由がある場合は認められる場合があります。貯金はケースワーカーへ理由を相談してから始めることがおすすめです。
※出典:厚生労働省「生活保護制度」参照:2024.07.08
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