心身の不調などで経済的に困窮している人の生活を支える大変重要な福祉制度です。困っている人の手助けになる生活保護ですが、基準額が改定されるのをご存じでしょうか?

生活保護を受け取ったことがない方にとっては、基準額の改定がどういった内容なのか、どのような影響があるのかわからないということも多いはずです。

この記事では、

  • 生活保護の基準額とは
  • 基準額の改定について
  • 現在、受け取ることのできる生活保護支給額はいくらなのか

を中心に解説していきます。生活に困窮している方や極端に収入が低い方にとっては有益な情報になるため、ぜひ最後までお付き合いください。

1.生活保護の基準額とは?

生活保護を受ける際には、基準額というものを基準に生活保護費が支給されます。ここでは、生活保護はどういった内容なのか、受けるための条件や基準額とはどういったものかを解説していきます。

①生活保護

生活保護は、さまざまな理由により、生活に困窮している人に対して、「最低限度の生活の保障」と「自立を助長すること」を目的にした援助のことを指します。

1-最低限度の生活の保障

「衣食住」はもちろんのこと、「教育」「医療」「福祉」も給付の対象になるため、広く適用されるのが特徴です。

それぞれに現金もしくは現物やサービスといった形での扶助があります。

2-自立を助長すること

現時点で生活保護が必要なほど困窮状態にある生活から、将来は就職して自らの力で生活ができるように支援することが含まれています。なかには生業扶助のように就職に必要な技能習得費を給付する支援もあるなど、幅広い支援を受けることが出来ます。

生活保護は労働能力や資産を活用しても最低生活費を捻出できない世帯が受給の対象になるので、これから申請される方はもちろんのこと、既に生活保護受給中の方も覚えておきましょう。

②生活保護を受け取るための条件

生活保護を受け取るためには以下の条件が必要になります。

  • 利用できる資産を持っていない
  • 働くことができない状況である
  • 国からの公的な融資を受けていない
  • 家族からの援助を受けられない状態

利用可能な資産がある場合は、原則的に売却の必要が出てきます。貴金属や高級家具、高級絵画はもちろんのこと、自動車も売却対象です。住宅に関しても、住宅ローンが残っている住宅の場合は売却の対象になるので気をつけましょう。

③基準額とは

生活保護は、最低限度の生活ができる費用、いわゆる「最低生活費」を算出し、最低生活費から収入を引いて、不足する額を生活保護費として援助する仕組みです。その最低生活費のことを「基準額」といい、生活保護費用を算出するためにはこの基準額が非常に大切になってきます。

生活保護は、世帯の収入が国の定める最低生活費に満たない場合に支給される支援のため、収入が基準額(最低生活費)を超える場合は、生活保護が受けられないことを覚えておきましょう。

2.生活保護の基準額の改定とは?

生活保護の基準額を決定する際、生活保護を受けている「生活保護世帯」と保護を受けていない「一般低所得層」の消費不公平をなくすことが必要です。そのため、生活保護の基準額を5年に1度の間隔で見直しすることで、不公平をなくすような動きをとっています。

生活保護を受けるためには、最低生活費という考え方が非常に重要です。最低生活費の内訳は以下の8種類になります。

この度、上記8つの中の「生活扶助」に関して、基準額の見直しが行われ、新たな基準額が決定しました。そして、令和5年10月に新たな基準額へと変更される予定となっています。

また、生活保護費は居住地や年齢などによって変わってくる特徴がありますが、居住地や年齢についても見直しが入っているため、自身が対象になっているかどうかは厚生労働省のHPを見るようにしましょう。

近年、物価高騰が続いている経済状況ということもあり、生活保護費はさらに重要なものになってきます。生活保護を受けられるのにもかかわらず、確認不足で受けられなかったということがないよう、自身が対象になっているのか確認することが大切です。

3.生活保護の基準改定と近年の傾向

厚生労働省が新たに発表した令和5年の10月から変更になる生活扶助の基準額について、例を挙げて解説します。

40代夫婦と子供2人の世帯では、見直し前と比べると地方では11.1%増の157,000円、都市部では1.5%増の181,000円と、どちらも増額になりました。

30代夫婦と子供1人の世帯では、地方では4.9%増の134,000円、都市部では4.2%増の153,000円と、こちらも増額になっています。

また、全国の市区町村でさらに細かく違いが出てくるので、自身の住んでいる地域がどの程度変わるのかを確認しておきましょう。

4.現在の生活保護の支給額はいくらか

生活保護費がいくらになるのかを調べるにあたって、最低生活費を把握しておかなければなりません。しかし、最低生活費の調べ方がよくわからないという人も多いはずです。ここでは、最低生活費や生活保護費の計算方法、実際にどの程度支給されるのか解説していきます。

①最低生活費の計算方法

生活保護は、最低生活費がそのまま生活保護費になりますが、収入があった場合は、最低生活費から収入を引いた差額が生活保護費として支給されることに注意が必要です。

例えば、最低生活費の基準額が13万円で、世帯収入が6万円の場合、差額の7万円が生活保護費として受給することができます。

最低生活費の金額を出すには、

  • 居住地の等級を調べる
  • 生活扶助基準を出す
  • 他の扶助を考慮する

の3つが必要になります。それぞれ見ていきましょう。

1-居住地の等級を調べる

現在住んでいる地域が「都市部」か「地方」のどちらかによって、物価が異なります。家賃などがわかりやすく、地方よりも都心部の方が高くなっているのが現状です。そのため、物価の不公平をなくすために、

  • 1級地-1(東京23区、八王子市、立川市、武蔵野市など)
  • 1級地-2(武蔵村山市、青梅市)
  • 2級地-1(羽村市、あきる野市、瑞穂町)
  • 3級地-1(日の出町、檜原村、奥多摩町など)

と分かれています。実際に住んでいる地域がどの級地に該当するかは、厚生労働省発表の級地区分で調べるようにしましょう。

2-生活扶助基準を出す

生活扶助は0〜75歳まで、細かく分類されているため、同じ地域に住んでいたとしてもその人の年齢によって、金額が変わってくるので自身の状況を考慮して、金額を確認するようにしましょう。

生活扶助基準を出すには、定められた「生活扶助基準第1類」に対して、世帯数に応じた「逓減率」を掛けます。さらに、「生活扶助基準第2類」を足して、①生活扶助基準(第1類+第2類)を出すことが可能です。

同じ手順で、金額の違う②生活扶助基準を算出して以下の計算方式で生活扶助の基準となる金額を計算します。

「①生活扶助基準(第1類+第2類)×0.855」又は、「②生活扶助基準(第1類+第2類)」のどちらか高い方+生活扶助本体における経過的加算』で割り出すことができます。ここでいう、「生活扶助本体における経過的加算」は地域や年齢、世帯数などによって変わってくるので注意しましょう。

3-他の扶助を考慮する

最低生活費は、生活扶助や住宅扶助の他にも、

  • 18歳以下の子供がいた場合の「児童養育加算」
  • シングルマザー家庭の「母子加算」
  • 妊婦期間中の「妊婦加算」
  • 寒冷地に住む人の冬限定「冬季加算」

など、さまざまな扶助を考慮する必要があります。

生活扶助+住宅扶助+その他の扶助』で最低生活費を割り出すことが可能です。

②どの程度支給されるのか

地域によって支給額は変わってきますが、ここでは東京をベースにした世帯別の具体例を紹介していきます。実際に住んでいる地域がどの級地に分類されているかを確認してから見るとわかりやすいです。

1-東京住まいの単身者世帯

単身世帯の人が東京で生活保護を受けると、上記の生活保護費が毎月、支給されることになります。

2-東京住まいの夫婦2人世帯

3-母子家庭世帯

母子家庭や父子家庭の場合、母子加算や児童養育加算などが含まれ、大人2人の場合と比べると大きく変動します。

 算出方法が不明な場合は福祉事務所の相談時にもきいてみましょう! 

5.まとめ

この記事では、生活保護の中身や生活保護の基準額改定について解説しました。

心身の不調によって金銭的に困窮している方にとっては、基準額の改定はとても大きな出来事です。令和5年10月から基準額が改定され、影響を受ける方は非常に多くなります。

生活保護は、地域や世帯数によって受給される金額が異なるため、不安になる方も多いはずです。「申請が不安だ」「生活保護に関してよくわからない」という方は、是非生活保護の申請が得意なリライフネットにご相談ください。