1.生活保護とは

生活保護は日本における社会保障の根幹をなすとともに、生存権を保障する最後の砦として極めて重要な役割を担う制度です。

生活保護の内容や実施方法は生活保護法(以下「法」)を根拠に、制度の趣旨とともに定められています。また関係法令や各種通知などで規定される制度の詳細は、社会情勢に応じて随時改正されています。

2.生活保護の4つの基本原理

生活保護は日本国民が享受できる生存権を確保するため、法第一条から第四条で制度の基本原理が定められています。どの原理も極めて重要なので、改めて確認しておきましょう。

①国家責任の原理

法第一条では法の目的として、「生存権の理念を具現化するため、生活に困窮する国民に対して国が責任を持って生活保護を実施する」ことが定められています。

また最低限度の生活を保障することに加え、困窮する国民の自立を助長するという、生活保護制度におけるもうひとつの重要な目的にも触れています。

②無差別平等の原理

生活保護は、全ての日本国民にとっての基本法である憲法で定める生存権を保障する制度です。

そのため法で定める要件さえ満たしていれば、性別や生活困窮に至った事情に差別されることなく平等に保護を受けることができる、という無差別平等の原則が、法第二条で定められています。

③最低生活保障の原理

法第三条では「保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない」と、最低生活保障の原理が規定されています。

生活保護制度では保護を要する人の状況に応じた細かい基準が定められており、基準にもとづき算定された最低生活費が保障されるというものです。

④保護の補足性の原理

生活保護を受けるには、資産や能力などあらゆるものを活用しなければならない「保護の補足性の原理」が適用されます。

そこには民法で定める扶養義務者の扶養や仕送り、他法による支援も含まれています。この原理が、「生活保護は社会保障の最後の砦」と言われている理由になります。

3.生活保護4つの基本原則

生活保護を実施するにあたって基本となる原則については、法第七条から第十条で内容が規定されています。いずれも「必要な人を必要最低限保護する」という考えが反映されていると言えるでしょう。

①申請保護の原則

日本の行政手続きのほとんどは申請主義が原則であり、生活保護も要保護者やその扶養義務者などの申請にもとづき行われます。

急迫した状況下では職権で保護を開始することも可能ですが、申請を拒否する人を無理矢理保護することはできません。

②基準及び程度の原則

法第八条の基準及び程度の原則では、世帯全体の収入が最低生活費に満たない場合に不足分を補うという生活保護の実施方法が定められています。

最低生活費の基準は世帯員の年齢や世帯構成、居住地によって異なり、最低限かつそれを上回らないものとされていま

③必要即応の原則

法第九条では、「保護は…個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して、有効且つ適切に行うものとする」という必要即応の原則が定められています。

支給する保護費は世帯ごとに異なるため、額が決まっている手当とは異なることがわかります。

④世帯単位の原則

法第十条には、「保護は、世帯を単位としてその要否及び程度を定めるものとする」と世帯単位の原則の規定があります。一部例外はあるものの、日本国内の多くの各制度と同様、生活保護も世帯単位を基本に要否判定や保護を実施します。

4.生活保護を構成する8つの扶助

生活保護は国が定める最低生活費と世帯収入の合計を比較し、不足分を補う形で実施します。具体的には生活の場面に応じた8つの扶助で構成されており、それぞれ居住地によって基準額が異なります。

①生活扶助

生活扶助は生活費に関する扶助として、食費や衣服代など個人的消費にあてるⅠ類と、光熱水費をはじめ世帯全体でかかる経費に相当するⅡ類で構成されています。

具体的な額は居住地によって異なり、Ⅰ類は世帯員の年齢により、Ⅱ類は世帯員の人数により基準が定められています。特別な事情がある世帯には、母子加算や障害者加算などが算定されます。

②教育扶助

教育扶助は、子どもが義務教育を受けるために必要な経費として、教科書代や給食費、通学用品購入費などを支給するというものです。

義務教育ではない高等学校の進学経費は、生業扶助の高等学校等就学費が対応します。しかし大学や専門学校などになると、保護を受けながらの進学は原則として認められていません

世帯分離をすることによって大学進学は可能になりますが、進学する子供のみが生活保護の対象から外れることになるため世帯全体で受け取れる生活保護費が減ったり、対象外になった人は国民健康保険に加入して健康保険料を支払う必要があります。

③住宅扶助

生活に欠かせない衣食住という三要素のうち、住まいに対する扶助として住宅扶助があります。

賃貸暮らしの世帯に対しては、居住地や世帯員の人数により定められる基準額の範囲内において家賃相当分を給付します。

また自宅が戸建ての世帯に対しては、住まいの修繕や雪下ろしなど維持に必要な経費が、基準内かつ必要最低限支給されます。

④医療扶助

医療扶助は医療機関に治療費を支払うことなく、通院や入院治療を受けることができるというものです。必要性が認められた場合、通院に必要な移送費や訪問看護の費用などが一時扶助として支給されます。

原則として通院や入院前に福祉事務所へ申請しなければなりませんが、緊急時や継続して通院する場合は申請が不要なこともあります。

⑤介護扶助

介護扶助は医療扶助と同様現物給付を受ける扶助で、介護保険の自己負担がかからなくなるというものです。

保護を受けていない人と同様に要介護認定を受ければ、ケアマネジャーが作成する介護支援計画にもとづき居宅介護や施設入所などの介護サービスを受けることができます。

⑥出産扶助

子どもの出産は一部例外を除いて医療行為と見なされていないため、国民健康保険や社会保険の出産育児一時金に相当する費用を出産扶助として支給します。扶助対象となる費用は、分娩介助や処置、ガーゼをはじめとした衛生材料に限られます。

⑦生業扶助

法第十七条で定める生業扶助は、生業や就労により自立を図る人を対象として、器具の購入代や技能習得費などを支給するものです。

また将来的な就労や自立につながるという判断のもと、義務教育ではない高校に進学するための高等学校等就学費も生業扶助に含まれています。

⑧葬祭扶助

葬祭扶助は、生活保護を受けている人が葬祭を執り行う場合、一定の基準内で必要な経費を扶助するというものです。

葬祭扶助については誤解が多く、保護を受けている人が受給できる扶助であるという点には注意が必要です。生活保護を受けている人が亡くなった場合、保護を受けていない親族が葬祭を行っても葬祭扶助は支給されません

5.生活保護を受給する条件は厳しい?

生活保護を受給するには、法第八条で定める基準及び程度の原則が適用され、世帯収入が最低生活費に満たないという最大の条件を満たす必要があります。

受給を申請する前に、資産や自分の能力などあらゆるものを活用しなければなりません。生活保護は社会保障制度の「最後の砦」と言われていることから、特に価値の高い不動産や自動車といった資産を処分しなければならない点は、受給するにあたって厳しい条件と言えるかもしれません。

6.申請から受給までの流れと準備する書類

ここで生活保護の申請から受給まで、一連の手続きについて改めて解説します。申請時に必要な書類は福祉事務所によって多少違うことがありますが、申請を要する事項は共通しているので確認しておきましょう。

①保護の申請

生活保護は実施機関として、居住する市区や都道府県に設置され、市区及び町村を所管する福祉事務所に申請します。

申請できるのは要支援者や扶養義務者、その他同居親族に限られていますが、それ以外の人がサポート役として同席することは特に禁止されていません

②申請時に必要な書類

保護の申請時には、やむを得ない場合を除き

・要保護者の氏名及び住所または居所

・申請者が要保護者と異なるときは、申請者の住所氏名及び要保護者との関係

・保護を受けようとする理由

など必要事項を記載した保護申請書を提出しなければなりません。

また添付書類として、資産申告書や収入申告書など、保護の要否判定に必要な情報を記載した書類を添付する必要もあります。戸籍や住民票といった本人確認ができる書類や申告書の証憑書類の呈示を求められる場合があるので、可能であれば事前に問い合わせておきましょう。

③保護の要否判定

保護申請を受けた福祉事務所は、資産や収入、生活状況など要否判定に必要な事項を調査します。収集した情報を総合的に判断して要否判定を行い、申請から14日以内に申請者に通知します。ただし調査に時間を要する場合は30日以内の通知となり、保護開始決定通知書もしくは申請却下通知書が送付されます。

④保護費の給付

生活保護は月単位で給付されますが、支給日や支給方法は福祉事務所により異なります。保護開始時にはケースワーカーが自宅訪問などで説明を行うので、不明な点は確認しておくことをおすすめします。

7.生活に困ったら行くべき場所

生活に困窮した場合は生活保護を実施する福祉事務所だけでなく、NPOをはじめとした生活支援団体、弁護士や司法書士など法律の専門家である士業など、様々なところに相談することができます。

そのひとつがリライフネットで、生活に困窮する人をトータルで支援します。中でも住まいの提供と生活保護申請サポートに力を入れており、ワンストップで無料のサポートを受けられる点は頼りになるのではないでしょうか。

生活に困窮した場合の相談先として、リライフネットも是非覚えておいてください。