生活に困窮している方にとって、生活保護は生活をしていくうえで非常に重要な制度といえるでしょう。

ただし、生活保護は最低限度の生活を送るための金銭的な支援のため、余裕のある生活ができるとはいえないことが大半です。

生活保護費だけでは厳しい場面や急な出費に対応できないなど、お金に困ってしまうシーンも考えられます。

そういった場合にお金を借りたいと考える方も多いはずです。

「生活保護受給者でもカードローンを利用することは可能なのだろうか」

「生活保護を受給しているけど、急にお金が必要になったときはどうしたらいいのだろうか」

「そもそも生活保護受給者はお金を借りられるの?」

などといった疑問を持つ方のためにこの記事では、

  • 生活保護受給者がカードローンを利用することは可能か
  • 急にお金が必要になったときの対処法
  • 生活保護受給者がお金を借りる方法

などを解説していきます。

1.生活保護を受給しながらカードローンの利用は可能?

ここでは生活保護受給者がカードローンを利用することは可能なのか見ていきましょう。

①カードローンを利用することは難しい

生活保護受給中に急な出費などで、金銭的に余裕がなくなってしまうことが考えられます。そうなった場合、生活保護受給中でもカードローンの利用は可能なのでしょうか。

結論は「カードローンに限らず、金融機関での借入も難しい」となります。

生活保護を受けているからといってお金を借りてはいけないという法律は存在しません。
そのため、法的にはお金を借りることができます。

しかし、生活保護を受給しているということは、あらゆる手段を使っても収入がなく、これ以上はどうしようもないという状況のはずです。
仮にお金を借りることができた場合、生活保護費から返済することになるわけですが、生活保護で受給したお金は借金の返済などに充てることができないため、実質借りる事ができないということです。

あくまで、カードローンや借入は難しいというだけで全く借りられないということではありません。ただし、お金を借りる事自体にもリスクが伴います。

お金を借りられたとしても、収入と判断される可能性が高く、生活保護費が減額されるリスクがあることを忘れないようにしましょう。

②返済能力の有無

一般的にお金を貸す側は、相手に返済能力があるか否かで判断します。特に金融機関では、返済能力の有無をしっかりと調査します。

返済能力があり、貸したお金が返ってくると期待できる方にしか貸さないことがほとんどです。

しかし、返済能力があるのであれば、生活保護の対象にはなることはありません。現在、生活保護受給者であれば返済能力がないと判断される可能性が高いことを覚えておきましょう。

現在、仕事に就いておらず、生活保護を受給している状態では、金融機関での審査に通過する可能性はほとんどないことを理解しておくことが大切です。

いささか厳しい現実ですが、生活保護受給中はカードローンなど借入金を活用することはほぼ不可能と認識しておきましょう。

2.生活保護受給者が急遽お金が必要になった場合の対処法

生活保護受給者が急にお金が必要になった場合はどうしたらいいのでしょうか。

生活保護の受給は、「生活保護以外の制度が利用できない人」に限られます。

そのため、基本的には生活保護法を元に定められた生活保護制度の8種類の扶助を活用することになります。

①生活保護制度に定められた8種類の扶助

「お金が足りない」

「カードローンや金融機関からも借りられない」

「どうしても必要なものがある」

そんなときは生活保護制度の扶助に該当しないかケースワーカーに相談しましょう。

ここでは生活保護制度に定められた8種類の扶助が、どのような出費に該当するのかを説明します。

生活扶助

毎日の暮らしで必要になるお金です。
日用品、食費、被服費、水道光熱費が「生活扶助」で受給できます。
生活必需品である家具什器費(家具や家電の購入費用)を含みます。

住宅扶助

生活に欠かせない住居にかかる費用が受給できます。

家賃、更新料、地代、住宅の修繕費、引っ越しが必要な場合は、条件を満たした場合、引っ越し費用も「住宅扶助」として受給できます。

特に、住居のドアが壊れた、窓ガラスが割れてしまったなどのトラブルや引っ越しの検討は、焦らずにケースワーカーに相談しましょう。

教育扶助

子どもが小学生、中学生など義務教育の間は、学級費、給食費や通学のバス代、教科書やワークなどの教材費が「教育扶助」として受給できます。
予期しない学校からの集金のお知らせがあった場合にも、ワースワーカーに相談します。

医療扶助

病気やケガの治療費、手術費は「医療扶助」として直接医療機関に支払われます。
薬は現物で支給されます。病院までのバス代、電車代などの通院費も受給できます。

介護扶助
「介護扶助」は、生活保護受給者が介護サービスを受けられる扶助です。

介護費用は、直接介護サービスへ支払われます。

出産扶助

出産の際にかかる費用が、「出産扶助」として受給できます。

生業扶助

就職する際に必要な資格の習得にかかるテキスト代や資格試験の費用、仕事に行くために必要な衣服や靴などの費用が、就職支度費用として受給できます。

子どもが義務教育を終え、高校へ進学した場合も「生業扶助」から授業料などが受給できます。

葬祭扶助

葬儀や火葬、埋葬などの費用が受給できます。

②生活保護制度の8種の扶助を活用する

生活保護受給中は生活を立て直すために、必要最低限の条件はありますが、扶助で保護されます。

お金が必要になった場合には、どの扶助が利用できるのかを把握しておきましょう。

また、判断に迷う出費の場合は、状況をメモにまとめケースワーカーに相談することがおすすめです。

厚生労働省の生活保護制度では、基本的な生活の中でのある程度の出費は想定されているため、扶助を活用することで、やむを得ない出費はまかなうことが可能です。

扶助を使用せず、無理な借入をすると、自立のタイミングもその分遠くなってしまいます。扶助の活用は、少しでも早く自立するための手段です。
自立に目標を定め、毎日の生活を計画的に進めましょう。

3.生活保護を受給しながらお金を作る方法

ここでは、生活保護受給中にお金を借りる、作る方法を紹介します。

①あらかじめ貯めておく

突発的にお金が必要になる場合もあります。そんな時にお金を作る方法として、あらかじめお金を貯めておくという方法が有効です。

友人から借りれば問題ないと考える方も多いですが、友人との関係にヒビが入ってしまう恐れもあります。

それだけでなく、借りた金額は収入になるため生活保護費が減額されます。
また、生活保護費から友人への借金を返済することは許されないため、友人への返済は生活保護の受給を終了してからとなります。

生活保護の受給を終了する予定が決まっているのであれば、待ってくれる友人もいるかもしれませんが、トラブルになる可能性が高いため友人からの借入は避けた方が無難です。

また、友人から借りたことを、黙っていればバレないと考えるかもしれませんが、ケースワーカーの訪問調査でバレる可能性が高くなります。

原則として生活保護期間中にお金を借りることは認められない行為になるので、あらかじめお金を貯めておくことがおすすめです。

許容される貯金(累積金)とは

必要最低限の生活を維持するための制度が生活保護です。
そのため生活保護費は、貯蓄できるような余裕を考慮した金額ではありません。

しかし、「常に手元には必要なお金しかない」ということには不安がつきまといます。

中には、さまざまな工夫をして、わずかでも生活保護費から貯蓄をしておきたいと思う方もいるのではないでしょうか。


生活保護では、生活保護受給中でも貯金をすることは許されており、そういった一定の貯蓄は「累積金」として扱われます。

生活保護費からの貯蓄(累積金)が許容されるケースは、以下のような場合です。

このような場合、生活保護受給中でも目的のある一定額の貯蓄が可能です。

お金の計画的なやりくりは、自立後にも役立ちます。

貯金額の明確な上限は定められていませんが、将来的な医療費や介護費用としてなどの特別な理由がある場合は、50万円程度までは認められる可能性が高いとされています。
金利は期待できませんが、まとめ買い割引や年末セールで必需品を買うなど、貯金しておくことで、より節約できるケースもあるため活用しましょう。

しかし、自治体などによっても、基準が異なるため、貯蓄金額の具体的な許容範囲についてはケースワーカーに相談しましょう。

②働いてお金を作る

日払いバイトの方や長期的な就労が困難な方も多いのが生活保護受給者の特徴といえます。

そんな方たちでも取り組みやすいような内容の在宅ワークでお金を作るのがおすすめです。

どうしても就職先が見つからないとき、使える時間を在宅ワークへのチャレンジに使用することは有意義だと言えます。

在宅ワークは、クラウドソーシングサイトに登録することで、簡単に始めることが可能です。スマホだけでもできる案件があるため、最初はアンケート案件などから始めてみましょう。

クラウドソーシングサイトでの売上は、ケースワーカーに収入申告します。

在宅ワークは、勤務先に在籍する雇用契約と異なるため、収入の証明に必要な給与明細が発行されません。

クラウドソーシングサイトを利用した場合は、業務委託の扱いになるため、収入の証明には、売上が振込まれる口座の明細の提示が必要です。

事前に証明として必要な物を、ケースワーカーに確認しておくと安心です。
在宅ワークは売上金額によっては生活保護費が減額されますが、収入が安定すれば、自立へ繋がる可能性もあります。
時間がある場合はチャレンジしてみましょう。

③フリマアプリなどでお金を作る

お金を借りる方法ではなく、自身でお金を作る方法のひとつが「フリマアプリを利用すること」です。使わないものや不要なものを出品して、販売することでお金を作ることができます。

子ども服などはすぐに小さくなってしまうため、フリマなどで不要になったものを販売することで、服の買い替え費用に使用できます。

買い手が付くまで時間がかかってしまう場合もありますが、使わないものを放置しておくよりはプラスになる可能性が高いと言えます。

また、誰の力も借りることなくお金を用意することができるのもメリットといえるでしょう。たとえ1円であっても収益が発生した場合は必ずケースワーカーに収入申告してください。

注意点として、不用品を販売しただけでは一時的な収入になり、勤労収入とは認められない可能性が高く、事後的にその収入の全額を保護費から減額される可能性があるということを覚えておきましょう。

フリマアプリの売上ポイントは、現金化しなくても収入になります。
ポイントを得られた段階で、収入申告の対象になるため、ケースワーカーにアプリ画面を提示しながら正しく申告しましょう。

4.生活保護受給者がお金を借りる場合の注意点

生活保護受給中にお金を借りる上での注意点を紹介します。

①借入先に注意をする

資金力がない生活保護受給者は、そもそも銀行などの金融機関や消費者金融からの借り入れや融資の申し込みができません。

しかし、世の中には生活保護受給中でも借りられる違法な貸金業者も存在します。

金銭的な余裕がなくなってくると、ついつい甘い言葉に流されてしまいそうになることもあるかと思います。

しかし、たとえ少額でも闇金に手を出してしまうと、そこから法外な利息や悪質な取り立てが始まるケースもあります。

闇金から逃れることは難しく生活再建が遠のいてしまうでしょう。

被害に遭わないためには、例え生活保護受給中OKと謳っている業者でも絶対に手を出さないことが大切です。

②「借りる」よりも「相談する」の意識を持つ

生活保護受給中はお金を借りることが困難です。

そのため「借りる」ことにとらわれず、まずはケースワーカーや福祉事務所に「相談する」ようにしましょう。

生活保護受給中にお金を借りることによってさまざまなリスクがあり、生活保護費の減額や最悪な場合、受給停止なども考えられます。

急遽お金が必要になり、どうしても用意しなければならない状況になった場合には、生活保護の扶助に特別基準額などもあるため、はじめにケースワーカーに相談することがおすすめです。

③家族や知人に借りたらケースワーカーに報告

やむを得ず親族や身近な友人などから借りてしまった場合には、必ずケースワーカーに報告しましょう。

報告なしの場合「生活保護の不正受給」とされ、生活保護が打ち切られる可能性があります。

また、生活保護受有中に、生活保護費から返済することは認められていないため、すぐには返済できない事や返済の期日について十分な理解を求める必要があります。

生活保護受給中は計画的にやりくりを継続し、「お金を借りなければならない状況」になることを避けることが重要だと言えます。

5.生活保護受給中に知っておきたいポイント

①生活保護を正しく利用する

生活保護が受給できるということは、活用できる資産、利用できる制度が何もなく、援助できる親族もいない状態です。さらに、本人及び世帯人員すべてが、働く事ができない場合に生活保護の受給が可能となります。

そのため生活保護受給中は、必要最低限の生活が生活保護費によってまかなわれるため、基本的に貯蓄などの余裕がない状況となります。

しかし、生活保護の扶助は8つあり幅広くカバーされているため、その内容を理解し利用することで、やむを得ない出費の大半は生活保護から受給することが可能です。

特に、急にお金が必要になるケースとして、家電の買い替えがあります。

家電の買い替え費用は、家具什器費として毎月の「生活扶助」に含まれているため、「生活扶助」を計画的にやりくりして貯金しておくことが重要です。

夏場のエアコン、食品の保管に欠かせない冷蔵庫などは、故障するかもしれないと予測して貯金しておきましょう。

台風などの災害によるエアコンの破損や、引っ越し先の設備の違いで急遽暖房が必要なった場合は、32,300円の範囲内で、特別基準として家具什器が支給されます。

生活保護を正しく利用し、分からない事や不安な点はケースワーカーに相談してみましょう。

相談する際には、困っている点や、不安な点をメモに書き出して、要点を整理しておくことがおすすめです。

聞きたかったことを忘れたり、聞きたいことが上手く伝わらなかったりということを避けられます。

②5年ごとの「生活扶助」改定を知っておく

2023年は急激な物価の上昇に加え、電気代の値上げなど、あらゆるものやサービスの価格が上昇しました。

2023年10月には、5年ごとに行われる「生活扶助」の改定がありました。


「生活扶助」では、日常生活を維持するために必要な毎日の食費、被服費、水道光熱費などが支給されます。

厚生労働省は、物価などによる変動の影響を受けやすい「生活扶助」の金額を、5年に1度改定しています。

また、各自治体でも「生活扶助」の基準額の見直しが行われるため、不明な点がある場合は、ケースワーカーや福祉事務所へ相談してみましょう。

今回の「生活扶助」の改定では、社会情勢を考慮して、これまでの支給金額よりも下がる世帯はないことが決定しています。

また、規定の計算方式で決定された「生活扶助」金額に、世帯人員ひとりにつき月額1,000円が上乗せされることになりました。

制度にはこのような改定があるため、厚生労働や自治体のホームページなどで、常に最新情報をチェックしておくことが大切です。

5.まとめ

この記事では、生活保護受給中にお金が借りられるのかについて見てきました。
生活保護受給中はお金を借りることが難しいことがお分かりいただけたのではないでしょうか。

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