生活保護は、事前に設けられている条件を満たせば、ずっと国から保障を受けられると認識している人もいるでしょう。しかし、生活保護費は5年に1度というタイミングで定期的な見直しが実施されています。事前に知っておかないと、生活保護が打ち切られてしまったり、見直しによる影響で再申請が必要になるかもしれません。そこで今回は、生活保護の基準が見直される理由や項目、再申請についても紹介します。ぜひ参考の一つにしてみてください。

1.生活保護費は定期的に見直される

生活保護費は、生活保護を利用していない低所得世帯との不公平さをなくし、バランスを図るために、厚生労働省が5年に1度のタイミングで定期的に金額の見直しをしています。見直しを実施することで、安定した職業に就き自立を促進したり、健康や生活面などそれぞれに応じた支援を行えます。

さらに、正当な理由なく就労しないなどの生活保護費の不正受給を防ぐために、調査権限を拡大し対策を強化したり、医療扶助の要件を明確化することで、医療扶助の適正化を図ることも目的に含まれます。不正に生活保護を受けている者には厳格な対処が必要です。

中長期的には、生活困窮者対策及び生活保護制度の見直しを継続し、現在生活保護を受給している世帯の子どもが成人した時に、再び生活保護を受給せずとも自立できるような防止策も検討する必要があります。

2.生活保護で見直される項目

①生活扶助

生活保護を受給する対象の人は、「経済的」に生活を維持することが厳しい状況であることが挙げられます。生活保護制度は、すべての国民に対し、生活の困窮具合に応じて必要な保護と最低限度の生活を保障し自立に繋げる制度です。生活保護における扶助には8種類存在し、生活扶助、教育扶助、住宅扶助、医療扶助、介護扶助、出産扶助、生業扶助及び葬祭扶助があります。中でも、生活保護で見直される項目には日常生活を送るうえで必要となる食費や光熱水道費用などを賄う「生活扶助」が対象になることが多いです。最近では、2023年10月に生活扶助基準の金額が見直されることになりました。ただし、見直しがされたとしても、現状支給されている生活扶助費が変わらないこともあります。

②2023~2024年度の見直された内容

2023年10月の検証結果を元に、生活扶助基準の金額が見直されることになりました。

⑴ 生活保護基準部会の検証結果の反映

①夫婦子1人世帯では、2%増額。年齢・級地・世帯人員別の較差体系の見直し

②ただし、年齢別較差は2分の1を反映。第2類額の級地間の較差は設けない。

⑵ 足下の社会経済情勢を踏まえた当面の臨時的・特例的対応(2023~2024年度の2年間)

①2019年当時の消費水準(検証結果反映後)に一人当たり月額1,000円を特例的に加算

②①の措置をしても現行基準が減額となる世帯については、現行の基準額を保障

⑶ 2025年度以降の生活扶助基準額の検討

○2025年度の予算編成過程において改めて検討。上記検証結果を適切に反映の上、これまでの基準見直しにおける配慮を参考にしつつ、その時の社会経済情勢を勘案。

⑷実施時期 2023年10月 財政影響額 130億円(2023年度は60億円)

3.生活保護受給中に基準が変わった場合どうなる

先でも紹介したように、定期的な見直しにより基準が変更になることがあります。人によっては生活保護受給中に基準が変わってしまうこともあるでしょう。改正後の生活扶助基準額は、世帯の構成によって生活保護費の金額が上がる世帯もあれば、下がる世帯もあります。

ただし、令和7年3月31日まで臨時的・特例的に以下の対応を実施します。また、母子家庭や介護を必要とする家庭などに関しては別途で加算を受けることができます。

さらに、物価上昇や新型コロナウイルス感染症による影響を踏まえ、2024年度までは「臨時的・特例的な措置」を実施することが決定され、今受給されている金額から下がることはありません。対象となる世帯1人につき月額1000円が加算されますが、世帯によっては生活扶助費の金額が上がらず現行の基準額を据え置く場合もあります。

今後、社会や経済の状況に応じて、検討や改正が行われる可能性は十分あります。そのため、生活保護受給者は見直しの時期や内容を把握し、どのような変更があるのか把握しておくことが大切です。

4.見直しで基準内になった場合再申請はできる?

①再申請は可能

これまで生活保護の受給要件を満たしていない方が見直しによって基準内になった場合、生活保護法第7条によって「保護は、要保護者、その扶養義務者又はその他の同居の親族の申請に基いて開始するものとする」という「申請保護の原則」が適用されるためです。基本的に国によって設置されている福祉事務所は、生活保護を利用したいと申し込みがあった場合、申請を必ず受け付けているため、再申請はできます。

②再申請の注意点

再申請はできるものの、生活保護が受給できる要件には、収入が最低生活費に満たないことや売却して生活費に充てられる資産を所有していないこと、親族などの援助が受けられないことなどがあり、すべての要件を満たしている必要があります。

さらに、再申請を行う際は通常の申請に比べ、審査が厳しくなる傾向があるため慎重に手続きを行う必要があります。特に、前回生活保護費が打ち切りになった理由や受給中の様子がポイントになります。例えば、生活保護費の不正受給をきっかけに打ち切りとなっていたり、福祉事務所のケースワーカーの指導に従わなかった場合は、再申請しても申請が受理されないこともあります。他にも前回生活保護費が打ち切りになった理由が就業し自立を果たしていた場合、就労意欲が低下したと判断される可能性もあります。再申請自体は行えるものの、審査に通ることが目的のため、生活保護の再申請に至った経緯や今の状況を細かく説明できるように準備しておくことが大切です。

③再申請の流れ

生活保護が受給できる要件を満たしている場合、最初に最寄りの福祉事務所に相談から行いましょう。生活保護を本当に必要としているのか、受給可否の調査が行われます。調査の結果、生活保護が必要と判断された場合には、福祉事務所に申請を行います。

先でも紹介したように、生活保護の廃止と再申請を繰り返している場合には、この相談や調査の段階でケースワーカーから指導が入ることもあるので、事前に対策をしておきましょう。場合によっては、最低生活費がいくらになるのかを事前に計算したり、今の状況や経緯をしっかり整理しておくと話がスムーズに進むのでおすすめです。

5.まとめ

今回は、生活保護の基準が見直される理由や項目、再申請についても紹介してきました。

生活保護費を支給するにあたって、条件を満たし、本当に必要な人に受給できるように厚生労働省は対策を行っています。具体的には、5年に1度のタイミングで定期的に生活扶助の金額の見直しを実施し、必要であれば加算ないしは据え置きという処置を行います。2023年10月には見直しが実施され、2024年度までは「臨時的・特例的な措置」を実施することが決定されました。

条件を見直したことで、生活保護費の条件を満たさず生活や住宅に悩んでいる人も少なくありません。そんな時にはプロの力を借りてみるのもいいでしょう。リライフネットでは、生活保護を受給している方などの、住宅を確保するのが困難な方向けに住居を提供するサポートを実施しています。お困りの方はぜひお気軽にお問い合わせください。