生活保護受給者が、お金を借りることは可能なのでしょうか。また、借りることが可能な場合、どのような制度があるのでしょうか?今回は、生活保護受給中のお金の借り入れについて解説します。

1.生活保護費の前借はできない

受給した生活保護費を使い切ってしまった場合、翌月の生活保護費を前借りしたいと考える人も多いのではないでしょうか。

生活保護費は、毎月決められた日に、定められた金額が支給されるため、前借りをすることはできません。

①生活保護制度とは

生活保護制度は、日本国憲法第25条で定められた「健康で文化的な最低限度の生活」を、国民に保障するための制度です。※1

そのため、1ヵ月の生活保護費は、厚生労働省(厚生労働大臣)が定めた基準で厳密に計算されています。生活保護の支給金額は、「最低生活費」と呼ばれます。※2

②「最低生活費」とは

最低生活費とは、住所地で決まる「級地」と「世帯の人数」、「年齢」などを確認し計算される、生活保護費の基準となる金額です。1ヵ月に必要な医療、介護、教育などの費用が含まれます。また、母子家庭や障害がある場合には金額が加算されます。

定められた基準で計算された最低生活費から、世帯の収入を差し引いた金額が、実際に受給できる金額です。

健康で文化的な最低限度の生活を維持するために必要な、1ヶ月分の最低生活費の支給が生活保護の目的のため、最低生活費を上回る支給はありません。

そのため、前借りをすることは不可能となります。

※1出典:e-GOV「日本国憲法」参照:2024.04.28

※2出典:厚生労働省「生活保護制度」参照:2024.04.28

2.もし緊急で足りなくなった場合に利用できる制度

生活保護受給中は、お金を借りることが認められていません。※1

しかし、緊急でお金を借りる必要ができた場合、一部貸付制度は利用することが認められています。生活保護は本来、「他の制度が利用できない人」の生活を保障するための制度のため、生活保護受給中に利用できる制度は限られます。生活保護の受給中に、お金を借りるために利用できる制度としては、「生活福祉資金貸付制度」があります。お金を借りる必要が生じた場合には、貸付の検討をしていることを、ケースワーカーに相談しましょう。

①生活福祉資金貸付制度

生活福祉資金貸付制度とは、都道府県社会福祉協議会が主体となって実施する、貸付け制度です。生活保護を受給している世帯は、通常は生活福祉資金貸付制度貸付の対象とはなっていませんが、条件を満たした場合に限り、生活福祉資金貸付制度を利用することが可能になります。

②生活福祉資金貸付制度を利用するための条件

生活保護受給者が生活福祉資金貸付制度を利用するための条件は以下の3つです。

・福祉事務所長が必要性を認めた場合

・生活保護費以外の収入(年金や就労収入など)がある場合

・原則1名の連帯保証人が必要
連帯保証人が立てられない場合は、貸付資金の種類により貸付利子がかかる場合があります。※2

生活福祉資金貸付制度からお金を借りる場合は、収入や生活保護費をやりくりして返済する計画性が必要になります。そのため生活保護以外の収入を持たない場合など、返済能力がないと判断される場合は、貸付を受けることができません。

生活福祉資金貸付制度を利用することで、個人事業の拡大やスキルアップによる職場での昇給など、収入の増加が見込まれる場合は、福祉事務所長から貸付制度利用の必要性を認められる可能性が高くなります。

③生活福祉資金の種類

ここでは主な生活福祉資金の種類について紹介していきます。

こちらで紹介しているものは一例であり、自治体によって実施しているかは異なりますので、詳細はお住いの福祉事務所や担当のケースワーカーにご確認ください。

1-総合支援資金

・生活支援費

生活を立て直すまでの期間に必要な生活費です。

・住宅入居費

敷金や礼金など、賃貸契約する際に必要な費用です。

・一時生活再建費

生活を再建するために必要になる債務整理の弁護士費用や滞納していた公共料金の支払いなど、一時的に必要な費用です。

2-福祉資金

・福祉費

生業の必要経費や、病気療養、介護費用、被災した際の復旧費用、冠婚葬祭費などです。

・緊急小口資金

一時的に生活が困難になった際に、緊急で少額(10万円以内)の費用を貸付します。※3

その他に教育支援資金(2種類)、不動産担保型生活資金(2種類)などがあります。

④生活保護申請と同時に利用されることが多い資金

生活保護の申請と同時に利用されることが多い生活福祉資金が、緊急小口資金です。

緊急小口資金は、生活保護を申請した後、生活保護が決定するまでの期間の生活費がない場合に利用できる貸付資金です。当座の生活費がない場合は、生活保護の申請窓口で、緊急小口資金を同時に申し込みします。

⑤収入に認定されない福祉資金

生活福祉資金貸付制度の福祉資金のうち、災害を受けた場合に支給される「災害援護資金」に関しては、自立更生のために使用する資金と判断されるため、収入として認定されません。※4

※1出典:習志野市「不正受給とならないために(生活保護受給者の皆様へ)」参照:2024.04.28

※2出典:京都府社会福祉協議会「生活福祉資金貸付制度」参照:2024.04.27

※3出典:全国社会福祉協議会「生活福祉資金一覧」参照:2024.04.27

※4参考文献:荘村明彦『生活保護手帳2023年度版』(中央法規出版、2023.10.30)p.388

3.知人からお金を借りた場合に収入として申告は必要か

生活保護受給中にお金を借りる身近な方法として、友人や知人からの借り入れが挙げられます。

①借りたお金は収入になる

生活保護受給中は、友人や知人からお金を借りた場合、借りた金額が収入となります。借りた金額は、担当のケースワーカーにすべて収入申告しなければなりません。収入申告は、生活保護を受けている世帯全員が対象です。

お金を借りることで収入が増えると、翌月の生活保護費から増えた収入分の金額が減額されます。減額された生活保護費から友人への返済もしなければならないため、基本的にはお金を借りるデメリットの方が大きくなります。

②収入を申告しないとどうなる?

借りたお金を収入として申告しない場合、不正受給となります。不正受給の金額によっては、生活保護が受給できなくなります。悪質な不正受給に関しては、生活保護法第85条に定められた罰則により、3年以下の懲役、100万円以下の罰金となります。※

生活保護費は計画的に使用し、お金が足りなくなる状況になることを避けましょう。

※出典:e-GOV「生活保護法」参照:2024.04.28

4.リライフネットとは

リライフネットは、生活保護の申請サポートや生活保護を受給されている方へ、正しい情報と支援を提供しています。行政・不動産事業者・職業紹介事業者・NPO・ボランティア団体などと連携しているため、専門的で総合的なサポートが可能です。

本コラムで説明した内容の前提となる、生活保護の申請や生活の基盤となる住居の確保等、お気軽にご相談ください。リライフネットでは完全無料で相談が可能です。

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