生活保護は、受給する本人が申請することが基本です。しかし、病気やケガ、認知症など、本人による申請が困難な場合があります。今回は、本人が申請できない場合に、代理申請する方法について解説します。

1.生活保護の申請に必要な書類と条件

①生活保護受給の条件

生活保護は、世帯単位での収入を基準として受給の可否が判断され、以下の4項目のすべてを満たすことが条件となっています。


  • 3親等以内に援助できる親族がいない

  • 病気、ケガ、障害、年齢などの理由で働くことができない

  • 土地や預貯金など、生活費として活用できる資産がなにもない

  • 世帯の収入が「最低生活費」以下の場合※1

「最低生活費」とは、厚生労働省が定める基準を元に計算する、世帯単位で必要となる、生活を維持するために必要な費用です。

②生活保護の申請に必要な書類

1-生活保護申請書

まずは「生活保護申請書」が必要です。通常は福祉事務所での相談時に書類を取得できます。

生活保護申請書には、氏名、住所(居所)、生活保護を受ける理由などを記入します。

2-世帯の収入や資産を証明する書類

世帯の収入や資産を証明する書類が必要になります。

具体的には、世帯全員の預貯金通帳と申請時で最も新しい3カ月分の給与明細書などです。年金や手当などを受け取っている場合は、受取金額の分かる通知はがきや証書を用意します。

3-身分証など

必ず必要ではありませんが、相談や審査をスムーズにする為、マイナンバーカード、住民票、健康保険証、生命保険の証書など、身分を証明できるものは全て持って行きましょう。※2

③必要書類をもとに申請書を作成

用意した書類をもとに、資産報告書、収入報告書などを記入します。

また、申請後に生活保護受給の条件を調査するため、社会福祉事務所が収入や資産を関係先に問い合わせることへの同意書に同意する必要があります。

資産や収入の調査が終了し、生活保護の受給が決定すると、決定通知書が発送され、生活保護が開始されます。

※1出典:厚生労働省「生活保護制度」参照:2024.04.26

※2出典:長崎市「生活保護を受ける場合の手続き」参照:2024.04.26

2.条件と書類が揃えば誰でも申請できる?

本人の状況が生活保護受給の条件を満たしており、申請に必要な書類がすべて揃っている場合、扶養義務者と同居の親族であれば、代理申請をすることが可能です。※1

①扶養義務者

扶養義務者とは、民法で定められた扶養する義務を持つ人です。生活保護を受給する本人から見て、祖父母、父母、夫、妻、兄弟姉妹、子などに該当する場合、扶養義務者となります。※2

②同居の親族

同居している場合は、親族も代理申請が可能です。親族は民法に定められている「六親等内の血族」と配偶者(夫、妻)、「三親等内の姻族」です。※3

六親等内の血族は、生活保護を受給する本人の、祖父母、父母、妻、夫、子、孫、伯父叔母、甥姪、従兄弟姉妹(いとこ)などを指します。三親等内の姻族は、配偶者の祖父母、叔父叔母、兄弟姉妹、甥姪を指します。

親族となる、六親等内の血族と配偶者、三親等内の婚族に関しては、厚生労働省が詳しい資料を発表しています。

参照:厚生労働省「親族の範囲について

③福祉事務所

生活保護の代理申請をする人がいない場合や、生活保護を受給する本人の状況が緊急を要する事態の場合は、本人からの申請がなくても、保護する側である福祉事務所の判断で、必要な保護をすることが可能です。※4

※1参考文献:荘村明彦『生活保護手帳2023年度版』(中央法規出版、2023.10.30)p.7

※2出典e-GOV「民法」(第七百五十二条・第八百七十七条)参照:2024.04.26

※3出典e-GOV「民法」(第七百二十五条・第七百三十条)参照:2024.04.26

※4参考文献:荘村明彦『生活保護手帳2023年度版』(中央法規出版、2023.10.30)p.7

3.代理申請が認められるケース

代理申請が認められるケースは、生活保護を受給する本人が申請することが困難な場合です。

①認知症

本人が生活保護申請の意思を示すことができない場合。

②障害

精神障害、ケガや病気の後遺症による障害などがある場合。

③ケガや病気

ケガや病気で入院しているなど、申請が困難な場合。

4.弁護士や行政書士でも代理申請は可能なのか

心身の問題により本人の申請が難しい場合は主に親族の代理申請が認められるケースがあるとお伝えしましたが、親族以外でも申請が可能なケースがあります。

①弁護士

弁護士は、代理申請することが可能です。※1

生活保護の申請は原則、本人と本人の扶養義務者、同居の親族が申請するものです。そのため本人が申請の意思を示して弁護士に依頼するか、扶養義務者や同居の親族の意思で申請を依頼する必要があります。※2

弁護士費用は、法テラスを利用することで無料になる場合があります。

法テラスは、国によって設立された司法支援を行う無料相談窓口です。法テラス経由で弁護士に依頼することで弁護士費用が無料となります。

②行政書士

行政書士による生活保護の代理申請は可能です。行政書士によっては申請書の作成だけでなく、同行サポートなども実施するケースがあります。行政書士に依頼する場合は、対応する業務によって費用がかかるため、事前に確認しましょう。

※1出典:日本弁護士連合会「生活保護の申請手続き」参照:2024.04.26

※2出典:厚生労働省【「生活保護問答集について」の一部改正について】参照:2024.04.26

5.代理申請の場合に必要になる書類

扶養義務者や同居の親族が代理申請する際には、生活保護申請に必要な書類のほかに、代理申請する人の氏名、住所(居所)、生活保護を受給する本人との関係を記載した申請書が必要になります。※

※出典:厚生労働省「生活保護制度に関するQ&A」(Q2)参照:2024.04.26

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