生活保護は生活に困窮する人を救うために保護費を支給するものですが、経済的に困窮する人を救済する制度として自己破産があります。同時に両方の悩みを抱える人も多いため、保護受給と自己破産の関係について詳しく解説します。

1.生活保護を受けているが自己破産はできるのか

生活保護を受けていても、自己破産は可能です。というよりも、負債を抱えて生活保護を受け始めた人が合法的に債務を免れるためには、自己破産するしかありません。

詳細はこの後解説しますが、生活保護を受けている人は、新たに借金をすることも既にある借金を返すことも認められていません。必ず自己破産をしなければならない、という前提で詳細を解説します。

2.生活保護と自己破産の目的

生活保護も自己破産も経済的に困窮している人を救済するための制度ですが、両者の目的や管轄するところは違いがあります。

生活保護と自己破産の関係を正しく理解するため、ここでもう一度両者の概要を確認しておきましょう。

①生活保護の目的

生活保護は日本国憲法第二十五条で定められる生存権を保障するものとして、社会保障制度の最後の砦とも言われています。

具体的には国民全てが「健康で文化的な最低限度の生活」を送るため、国が定める最低限度の基準に満たない収入の世帯に対し不足分を支給するという内容です。

生活扶助・教育扶助・住宅扶助・医療扶助・介護扶助・出産扶助・生業扶助・葬祭扶助の8種類があり、日常生活における様々な場面に対応しています。

②自己破産の目的

自己破産は個人再生や任意整理と並び、裁判所を通して返済の負担を減らす手続きのひとつです。

個人再生や任意整理が無理のない範囲で返済を継続するのに対し、自己破産は裁判所の許可を得た上で返済義務が全て免除されるという違いがあります。

正確には自己破産に加え、裁判所から「免責の決定」がなされてはじめて返済が免除されることになるのですが、通常は自己破産と免責が同時に決定されます。

自己破産には一部例外があり、自宅などの不動産をはじめとした資産を有している場合、保有財産が競売にかけられ債務返済の一部に当てられます。

収入のある人は個人再生や任意整理も可能ですが、生活保護を受けている人は返済がそもそも認められていないため、自己破産しか選択肢がありません。

3.生活保護と自己破産、どちらが先か

生活保護の受給開始と自己破産の手続き、どちらを先にしなければならないということはありません。しかし事例としては、多額の負債を抱えて生活に困窮した人が保護を受給し始め、保護を受けながら自己破産の手続きをするという方が目立つようです。

自己破産をしてから保護申請をするのと保護受給を先にした場合とでは、ケースワーカーからの指導の有無という点が異なります。

保護申請前であれば自己破産するかどうかは任意の判断になりますが、生活保護の受給者が負債を抱えている場合はまず間違いなく自己破産の指導が入ると思っていいでしょう。

またどちらが先であっても自己破産の申請をすると債務が凍結され、負債の取り立ては禁止されます。そのため借金取りにおびえることなく、安心して暮らすことが可能です。

ちなみに住宅ローンは、持ち家という資産を売却することで生活費の捻出が可能です。そのため住宅ローンの残額がある場合、生活保護を受けることができません。住宅ローンの返済で生活が困窮している人は、必然的に自己破産を優先することになります。

4.生活保護を受給するための条件

生活保護も自己破産も、生活に困窮した結果たどり着く着地点です。そのうちの生活保護について、受給要件を改めて確認しておきましょう。

収入が全くないか、あっても国が定める最低生活費に満たない額であるというのが、生活保護を受ける大前提となります。

15歳から64歳までのいわゆる稼働年齢層の世帯員は就労を優先しなければなりませんが、病気やケガ・重い障がいなどで十分に働けない場合は保護の対象に入ります。

申請前には預貯金や資産を取り崩し、それを生活費として消費することも条件のひとつです。ほかにも親族からの援助や他法の施策を優先するなど、できる限りのことをしてもなお最低生活費に満たないという条件をクリアする必要があります。

5.生活保護で受給した金額から借金の返済はできない

生活保護費を借金の返済に充てることは認められておらず、保護を受けているのに新たに借金することも不可能です。いずれの場合も、返済額及び借入額を収入と見なし、保護費が減額されるという問題点があります。

一方借金を返済しないと当然額は減らず、自宅など保有が認められている財産がある場合は競売にかけられます。

自己破産の手続きをしようがしまいが借金の返済はできず、どちらにしても破産をするという結果は変わりません。最終的に自己破産の手続きはケースワーカーから指導されるので、弁護士や司法書士など法律の専門家に相談しておくのが望ましいでしょう。

6.生活保護受給者は自己破産に関する費用が免除される場合も

自己破産は手続きをするにもお金がかかり、裁判所に支払う予納金や弁護士などに依頼する際の費用を合わせると最低でも数十万円はくだりません。

総合法律支援法に基づいて設置される法テラス(日本司法支援センター)には、実施業務のひとつとして民事法律扶助業務があり、生活保護を受けている人はこの制度が適用されます。

この制度を使い法テラスと連携している士業に依頼すれば、裁判費用等を全て法テラスに負担してもらえるため自己負担が生じません。弁護士・司法書士でも法テラスと連携していない事務所もあるため、費用の免除を受けたい場合は法テラスに相談してみるとよいでしょう。

7.自己破産と生活保護を受給している場合、今の家には住み続けられるのか

生活保護を受けている人が自己破産した場合、住まいが賃貸住宅であれば引き続き住むことが可能です。一方持ち家に住んでいた場合は、保有財産が競売にかけられるため必ず転居先を探さなければなりません。

また後述するように、保護を受けながら自己破産した場合と自己破産した人が保護申請をする場合とでは取り扱いが若干異なります。

8.自己破産をした人が生活保護を受給するときの注意点

自己破産をした人が生活保護の申請をする場合は、それまでの住居に必ずしも住み続けられるとは言い切れません。

家賃を補助する住宅扶助は基準額に上限があり、それを超える家賃の物件になると生活費から家賃の一部を充当する必要が出てきます。

具体的にはケースバイケースなのですが、住宅扶助の基準より何万円も高いアパートに住んでいる場合だと、生活保護を開始する際家賃の安い住宅への転居指導が入る可能性もあります。

自己破産してから保護を申請する場合や前述した自己破産で持ち家を離れる場合、新しい住居を探す早めの行動が求められます。転居しなくていい場合は不動産会社回りを止めればいいだけの話なので、自己破産と転居はセットで考えた方がよいかもしれません。

9.自己破産も生活保護も専門家に相談することが大切

自己破産も生活保護も生活に困窮した人を救済する制度ですが、どちらも専門的な法的知識が不可欠です。特に自己破産は弁護士や司法書士も対応することからわかるように、自分で手続きするのは至難の業です。

また生活保護受給者が債務整理をする際の選択肢は実質自己破産のみとなるため、両制度を知り尽くした専門家に相談するのが安心と言えます。その中でもおすすめなのが、「明日の不安」をなくすためのサポートを得意とするリライフネットです。

リライフネットの運営法人は公的機関からの認証も受けた団体なので、安心して相談することができます。また居住支援法人の指定も受けており、自己破産で住まいを失う可能性もある方の住居探しも支援しています。

生活保護と自己破産をセットで検討する際は、リライフネットの利用も選択肢に加えてはいかがでしょうか。