生活保護は、家や土地、自動車などの資産があると受給できないとされています。今回は、生活保護における資産の取り扱いについて解説します。

1.資産があると生活保護は受給できない

生活保護は経済的な理由で最低限の生活が送れない方のための、セーフティーネットです。そのため資産を持っている方は受けることができません
生活保護制度では、活用できる資産は売却し生活に役立てることが前提です。※

家や土地などの資産を売却し、預貯金や自身の能力を活用しても、最低限の生活が維持できない場合に、生活保護の受給が検討されます。

※出典:厚生労働省「生活保護制度」参照:2024.06.22

2.生活保護制度とは

生活保護制度とは、日本の国民が困窮し生活が困難になった場合に、国が健康で文化的な最低限度の生活を保障する制度です。生活保護を受給するには、以下に説明する生活保護制度に定められた要件を満たす必要があります。※1

①生活保護の要件

生活保護を受給するには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

1-資産を活用する

家、土地、家屋などの資産がある場合は売却して生活の維持に使用する必要があります。

2-能力を活用する

仕事ができる場合は、能力を活用して働き、生活を維持します。

3-あらゆるものを活用する

生活保護を受給する前には、生活を維持するために使用できる年金や給付金、支援制度など、あらゆるものを活用することが前提です。

4-扶養義務者による扶養

扶養義務者となる親族がいる場合には、援助を受ける、扶養に入るなどによって生活を維持します。

5-世帯の収入を計算する

資産、能力、あらゆるものを活用した上で、世帯の収入合計を出し、その金額と厚生労働大臣が定める計算方法で算出された最低生活費を比較します。世帯の収入が最低生活費よりも少ない場合、不足分が生活保護費の対象となります。

②最低生活費

最低生活費は、健康で文化的な最低限度の生活を維持するために必要な金額です。最低生活費は厚生労働大臣が定めた基準をもとに計算します。住所によって決まる級地や年齢、世帯人員の構成などにより厳密に計算されています。

例えば、東京都に住む63歳の独身男性の場合、最低生活費は、通院などがない場合130,580円となります。※2

つまり、保有している家屋や土地などの資産が最低生活費以上の価値がある場合、売却することによって最低限度の生活維持が可能になるため、生活保護を受給することができません。また、預金などの財産も同様に生活費として活用する必要があります。預金口座を隠しても調査でバレるため、すべて報告しましょう

※1出典:厚生労働省「生活保護制度」

※2出典:厚生労働省「生活扶助基準額について」参照:2024.06.22

3.資産の保有が認められるケース

生活保護制度では、例外的に資産の保有が認められるケースもあります。資産の保有が認められるケースには、以下のような状況が該当します。※

①家屋

1-自宅

現在住んでいる自宅が、最低限度の生活を維持する上で重要な役割を持っており、売却するよりも生活の維持や自立に役立つ場合は、保有が認められます。例えば、親族の死後に相続した自宅や、住宅ローンがない持ち家の場合は、売却して家賃の必要な賃貸物件に移るよりも住み続けることが、生活維持に役立つと言えるため保有が認められる傾向があります。家が建っている土地(宅地)も同様の理由で保有が認められるケースがあります。

しかし、資産価値の高い豪邸の場合や住宅ローンを返済しながら生活保護を受けることは、認められないことが多いです。

2-事業用

事業用に使用している家屋で、周辺地域の低所得世帯と比較して問題ないと認められる範囲の場合が該当します。しかし、処分した場合の価値が著しく大きい場合は、保有が認められない可能性が高くなります。

3-貸家

貸家の保有は認められません。しかし、世帯の保護推定期間(3年以内)の家賃の合計が売却した場合よりも多い場合は、保有し貸家として活用することが可能です。

②土地

土地の保有は、生活の維持に重要な役割を持つ宅地のほか、以下のようなケースが認められる場合があります。また、生活保護受給中に、土地の相続や譲渡による、資産価値の高い土地の名義変更が発生した場合は、ケースワーカーに速やかに連絡しましょう。

1-田畑

周辺地域の農家の平均的な耕作面積であり、世帯に対して適当だと認められる場合、おおむね3年以内に大きな収入を得られた実績があるような場合が該当します。

2-山林や原野

事業用や自給で使用する場合、周辺地域の低所得世帯と比較して許容される範囲の面積の場合、おおむね3年以内に世帯の収入増加に貢献した場合などが該当します。

③自動車

自家用車の場合、公共交通のインフラの充実度によって保有が可能かどうかが異なります。自家用車は通勤や通院など、最低限度の生活費に重要な役割を持つ場合、以下のようなケースで保有が認められる場合があります。この場合、高級車などの資産価値の高い自動車は認められません。自動車の売却価格が小さく、維持費が収入よりも大きくならないことが保有の判断条件となります。

1-通勤

障害がある場合、利用できる公共交通機関がない地域の場合、利用できる公共交通機関がない場所の勤務先へ通勤する場合、深夜勤務の場合などが該当します。

2-通院

障害がある場合、障害がある子どもを通院、通所、通学させる場合、公共交通機関が利用できない地域で、送迎サービスなどもない場合の通が該当します。

※1参考文献:荘村明彦『生活保護手帳2023年度版』(中央法規出版、2024.06.22)pp.242-244.

※2参考文献:荘村明彦『生活保護手帳2023年度版』(中央法規出版、2024.06.22)pp.251-254.

④保険

生命保険や医療保険などの保険は、解約することで返戻金がある場合、解約が基本となります。保険には資産運用の要素が含まれるものも存在しますが、そのようなタイプは認められません。

例外として認められる保険は、掛け捨て型か資産価値が低い物に限定されます。生活保護受給前に契約した保険の保険金や解約返戻金を受け取った場合は、ケースワーカーに速やかに報告しましょう。

ここで取り上げた例はあくまで状況を考慮した例外的なケースなので、無条件に認められるものと誤解しないようにしましょう!

4.売却が必要な資産

売却が必要な資産は、維持費が大きいもの、必要以上に高価なものが該当します。また、生活保護受給中に不動産を売却した場合は、「譲渡所得税」がかかるケースがあることにも注意が必要です。

①資産価値がある家屋

売却することで、最低生活費を維持し続けることができる資産価値のある家屋は売却する必要があります。住宅ローンがある場合は、生活保護費からローンの支払いをすることはできないため売却し、返済に使用します。

②使用していない土地

使用していない土地は売却し、生活費に使用する必要があります。

③資産価値の高い自動車

中古車販売店での買取価格が高く、高額で売れる可能性が高い自動車は、維持費も高額になるため、売却する必要があります。

④資産として扱われる保険

保険は資産価値があるため原則解約となります。必要性があり、掛け捨てや少額の返戻金の保険は例外として認められる場合があります。

⑤貴金属や有価証券

所有する貴金属や有価証券は売却し、生活費に充当します。※

※出典:長野原町「生活保護について」参照:2024.06.22

5.生活保護のご相談はリライフネットへ

今回は、生活保護と資産について解説しました。原則として売却が可能な資産がある状態では、生活保護の申請は通りませんが、特殊な事情であれば例外的に許可されるケースもあるため、福祉事務所へ相談してみましょう。

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