住居を失ってホームレスになっても、日本では再び自立する方法があります。生活が困窮した場合に誰もが想起する救済制度として生活保護があります。しかし、働く意欲がある場合には生活保護に頼らず、自立支援センターの各種支援の利用が選択肢となります。今回は、生活困窮者支援制度の自立支援センターとは何か、どのような支援を実施するのかについてご紹介します。

1.自立支援センターとは

自立支援センター(生活困窮者・ホームレス自立支援センター)とは、生活困窮者支援制度によって設置された自立支援施設です。

①自立支援センターの対象者

自立支援センターは、生活困窮者や住所不定者(ホームレス)、ホームレスになる恐れのある人を対象とした施設です。都道府県や市区町村が主体となって、東京や大阪、名古屋といった生活困窮者や住所不定者が多く集まる大都市や、必要性のある地域に設置しています。※1

宿泊場所や入浴場など生活に必要な物を提供することと、就労による自立のためのサポートを中心とした業務を行っています。また、食事も1日3食提供されるため、自立支援センターでは最低限の人間的かつ健康的な生活が保障されます。

仕事や家を失い生活に困窮していても、就労の意欲がある場合には、自立支援センターの支援によって自立することが可能です。

②自立支援センターの目的

2015年から開始された「生活困窮者支援制度」は、生活困窮者やホームレスの状況に応じた支援を行うことで、自立を促進することを目的としています。生活困窮者支援制度の一時生活支援事業の一つとして、自立支援センターが各地域に設置されました。自立支援センターの設置により、生活困窮者やホームレスが生活保護受給の状態になる前に、衣食住にかかわる支援や就労支援による収入の確保までをサポートすることが可能になりました。※2

※1出典:WAMNET「自立支援センター」参照:2024.05.07

※2出典:厚生労働省「一時生活支援事業の手引き」参照:2024.05.07

2.自立支援センターの支援内容


自立支援センターは、一時生活支援事業と自立相談支援事業を実施しています。※1

①一時生活支援事業

自立支援センターでは、一時生活支援事業として生活困窮者やホームレスに緊急時に滞在できる宿所や生活必需品の支援を行います。食事や入浴の提供、日常生活に必要な下着などの衣類や日用品が支給されます。支援には健康診断などの健康管理のほか、地域社会での生活に必要な社会常識とされるルールや生活習慣の習得サポートまでが含まれます。利用期間は原則3ヵ月ですが、都道府県等が認める場合は最長6ヶ月となり利用料は無料です。

②就労支援事業

自立支援センターでは、自立相談支援事業として就労するために必要な住民登録や相談支援を行います。また、利用者ごとに異なる健康状態や生活状況に合わせた自立支援プログラムを作成し、利用者に適した仕事への就労支援が行われます。

自立支援センターによっては、就労訓練事業も行います。就労訓練には非雇用型と支援付雇用型があります。非雇用型は訓練として就労を体験できるため、就労に不安がある場合に適しています。支援付雇用型は、実際に雇用契約を結び就労しますが、支援やサポートを受けることが可能です。※2

③家計改善支援事業

家計改善支援事業では、生活困窮者やホームレスの家計を圧迫している金銭的な問題解決を支援します。


  • 借金問題を解決するための法律相談(債務整理の支援)

  • 家計管理の支援

  • 家賃や税金などの滞納を解消するための各種制度案内

  • 家計改善のための貸付けのあっせん※3

④施設退所後のサポート

施設の在所中に就職ができなかった利用者については、地域の福祉事務所と連携し、ホームレスに戻ることがないように見守りや巡回を行います。

⑤その他支援

自立支援センターによっては、貸与金制度や、保証人制度、就労後支援などがあります。

貸与金制度は、就職活動に必要な交通費、就職が決定し自立生活する住居が決まるまでの就職先への交通費など、就労にかかわる必要経費を貸与します。

保証人制度は、就職や賃貸住宅の契約に必要な身元保証人を自立支援センターが支援します。就労後支援では、就労した後に発生する問題に対する各種相談や法律相談が可能です。

このように手厚い支援を受けられるのですが、その代わりルールも守る必要があります。

※1出典:厚生労働省「一時生活支援事業の手引き」参照:2024.05.07

※2出典:埼玉県「生活困窮者就労訓練事業(いわゆる「中間的就労」)について」参照:2024.06.01

※3厚生労働省「家計改善支援等のあり方について」p.12参照:2024.06.01

3.自立支援センターのルール

自立支援センターには、施設ごとにルールや規則があります。具体的には外出可能時間や飲酒、金銭の貸し借りについての規則があり、守れない場合は退所などの罰則を受けます。

また、自立支援センターを運営する自治体や、NPO法人によっても規則は異なるため、入所時に規則を確認することが大切です。

自立支援センターでのサービスを希望される場合は、管理している自治体の福祉課や福祉事務所に相談することになります。相談の結果、支援対象条件に満たされていると認められた場合に、支援が受けられます。

4.自立支援センターの種類

①シェルター併設型自立支援センター

シェルターとは、生活困窮者一時宿泊施設と呼ばれる一時的な滞在場所です。自立センター内にシェルターが併設されており、当座の宿泊と食事が提供されます。その後、就労が可能な場合に、自立支援センターで就労支援などを行います。

②シェルター分離型自立支援センター

生活困窮者やホームレスはシェルターで保護します。分離型シェルターは自治体から委託を受けたNPO法人などが運営しています。自立支援センターでは、就労や自立を目指す人を中心に受け入れて支援します。現在シェルターは施設型が激減しており、自治体の多くが施設を借上げて利用する借上型に移行しています。※

③自立支援センターのメリットとデメリット

自立支援センターのメリットは、住居や食事、就労を前提とした自立支援などの各種サポートを受けられることです。生活保護の受給には申請や調査がありますが、自立支援センターは、生活が困窮した際に窓口で相談することで利用できます。当座の衣食住が確保され、資格取得の学習などの就業支援を受けながら仕事を探すことが可能になります。

デメリットは、外出可能時間(門限)などのハウスルールや施設の規則があることです。守れない場合は入所期間にかかわらず退所を求められるため、共同生活などでの規則に順応する必要があります。しかし、特別に厳しい規則ではなく社会常識の範囲内であるため、メリットと比較した場合に、規則を守ることは困難なことではないといえます。

自立支援センターのサービスが受けられるかどうか、最寄りの福祉事務所に問い合わせてみましょう。

※出典:厚生労働省「一時生活支援事業の手引き」参照:2024.05.08

5.リライフネットとは

リライフネットは、東京都等が指定する居住支援法人が共同運営をしております。東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県を中心に、住居を失ってしまった方に、マンションやアパートを迅速に提供する支援を展開しています。

リライフネットは行政・不動産事業者・職業紹介事業者・NPO・ボランティア団体などと連携しているため、総合的で専門的なサービスが可能です。

家具付きの住居や日用品の支給、当面の生活費のサポートで、安心して就労活動に集中することができます。

リライフネットでの相談は完全無料です。生活保護の受給を検討している、現在の住居を退去しなければならない、ネットカフェ生活から脱出したいなど、生活に関する不安や住居の問題を抱えている場合には、今すぐご相談ください。

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