1.借金がある人は生活保護を受けられるのか

借金の有無や程度に関係なく、経済的困窮の事実が認められ条件を満たせば、生活保護を受けることができます。

生活保護は「健康で文化的な最低限度の生活」を送るための最低生活費と収入を比較し、足りない分を給付するという制度です。多くの制度と同様、生活保護の要否も世帯単位で判断されます。

①最低生活費の算定

国が定める最低生活費の額は世帯によって異なり、世帯員の年齢や人数、賃貸の家賃など様々な要素が考慮されます。あくまでも一例ですが、東京23区内で家賃5万円のアパート暮らしをしている50歳・47歳・25歳という3人世帯の場合、

算定方法AB
 Ⅰ類 50歳39,840円47,420円
47歳39,840円47,420円
25歳42,020円47,420円
逓減率10.7151
 Ⅱ類3人55,610円47,060円
Aのみ適用の逓減率0.855
生活費計151,600円148,790円
住宅費50,000円50,000円
合計201,600円198,790円

BよりAの方が多いので、月201,600円が目安となります。

②収入認定される項目

生活保護の支給額を決定する際、働いて得る就労収入や年金・仕送りなどほとんどの収入が認定されます。しかし就労収入を全額収入認定すると就労意欲が削がれてしまうため、額に応じ収入から一定額が控除されます。

また社会保険料をはじめとした経費も実費控除されますが、所得税は課税されません。そのため源泉徴収された分は確定申告で調整し、収入認定にも反映させます

なお自治体からの支援金や災害見舞金など、一部収入認定されないものがあります。具体的には様々な事例があるので、自分で勝手に判断せずケースワーカーに報告しましょう。

2.保護を受けながら借金を返済することは認められない

生活保護を受けている人は理由のいかんを問わず、借金を返済することも新たに借金することも認められません。

新たに借金した場合、借入額が収入認定されるため支給される扶助費が減額されます。注意したいのは借金の返済で、返済している分だけ生活に余裕があるとみなされ収入扱いされる場合があります

もちろん生活保護は生活費として支給されるものなので、返済に充てるのは制度の趣旨に反します。返済している事実が判明した場合、収入認定だけでなく指導対象となり、指導にしたがわないと保護の停止や廃止の処分を受ける可能性があります。

特に悪質と判断されれば訴追され、刑事罰の対象になることもあります。ケースワーカーや福祉事務所が金融機関に照会をかければ、すぐ事態は明るみに出ます。借金返済を隠し通すことはできないので、「どうせわからないだろう」という思い込みは捨てましょう。

改めて、生活保護を受ける場合は借金を増やすことも、返済することも絶対にいけないということも、肝に銘じておきましょう。

3.生活保護を受けている人の借金は債務整理で対応しよう

生活保護は経済的に困窮する人を金銭給付の形で救済する制度ですが、借金の返済に困窮する人の負担軽減により救済する制度として債務整理があります。

債務整理には、

・任意整理

・個人再生

・自己破産

の3つがあります。

任意整理
任意整理は金融機関と交渉することで、負債額の減額や金利見直しなど負担を軽減させる方法です。裁判所を通さないという特徴があり、任意整理の結果過払額が生じ過払い金が後で戻ってくることもあります。
個人再生
民事再生とも呼ばれる個人再生は返済が困難なことを裁判所から認めてもらい、再生計画にしたがい分割で返済するという整理方法です。個人再生をしても住宅などの財産を処分しなくてもすむ、資格制限がないなどの特徴があります。
自己破産

自己破産は、分割ながらも返済する必要がある上の2つと異なり、債務(借金)そのものが免除され返済の必要がなくなります。

裁判所から破産手続開始と同時に免責の決定がされることで、申告した債務は返済する必要がなくなります。

また自己破産は資産の処分も伴い、持ち家がある場合は競売にかけられるため、別の住まいを探す必要があります。ただしその場合は、引っ越し費用や新しい住居の家賃などが住宅扶助として支給されるので、引き続き保護を受けながら生活することが可能です。

生活保護を受けている人は、借金の返済が認められていません。したがって個人再生の手段としては、必然的に自己破産しかなくなります。借金の不安をかかえたままにしないためにも、自己破産の制度利用を検討してはいかがでしょうか。

4.自己破産するときの流れ

自己破産は自分で手続きすることも可能ですが、準備する書類が多く専門知識も必要なことから、弁護士や司法書士など(以下「弁護士」と表記します)に依頼することが一般的かもしれません。

以下、弁護士に手続きを依頼するという前提で手続きの流れをおさらいしましょう。

①申立までの手続き

自己破産のファーストステップとしてまず依頼する弁護士を探し、相談や依頼の正式契約を行います。

正式に依頼をすれば弁護士から債権者に受任通知が出され、債権者からの取り立てを一時的にストップさせることができます。返済の催促から解放されるため、借金取りにおびえる心配がなくなります。

その後弁護士が破産申立の書類を作成し、裁判所に提出します。その後裁判所に出頭し、「審尋」といわれる面談を受けることになります。審尋では、書類の記載内容に虚偽がないか、また書類に書ききれなかった実情がないかなどの確認がなされます。

②破産手続開始決定と免責の決定

申立書や審尋などの結果を踏まえ、適法な申立でかつ破産手続開始原因があると認められれば、裁判所は破産手続開始を決定します。

財産の状況によって「管財事件」と「同時廃止事件」がありますが、生活保護を受けている人は資産を持たない場合がほとんどなので、同時廃止事件として手続開始決定と同時に手続が終了することが多いようです。

破産手続の終了後に免責許可の手続へ移行し、免責要件に該当すれば、申立から半年を目処に免責許可決定通知が出されます。免責許可が決定されると、一部例外を除いて債務を返済する必要がなくなります。また、破産者に対する法令上の資格制限を免れることができます。

ギャンブルや遊興費など、借金をつくった原因によっては免責不許可事由として免責されない場合もあります。しかし生活保護を受けている人は事実上返済が不可能なので、最終的には裁量免責という形で免責されることも十分考えられます。

5.法テラスに弁護士費用の立て替えも依頼できる

自己破産の手続きをするためにはまとまった額のお金が必要で、弁護士への報酬も含めると最低でも数十万円かかります。生活保護を受けている人はこの額を用意するのが極めて困難なため、法テラスで費用を立て替えてもらえます。

手続中に保護を受けている場合は、免責の決定まで費用の返済が猶予されます。また手続が完了した後も生活保護を受給していれば、申請により返済の免除を受けることも可能です。

これらの制度を利用するには、法テラスと契約している弁護士に依頼しなければなりません。契約していない弁護士事務所もあるので、相談先がわからない場合は法テラスの各地方事務所に確認しておきましょう。

6.生活保護を受ける場合は借金のことも知っておこう

経済的に困窮する人の生活を支える生活保護は、「健康で文化的な最低限度の生活」を送るための制度です。そのため保護を受けている人は、借金することも返済することも認められていません。

金融機関やクレジット会社からの借金は債務整理で負担を減らすことができますが、返済自体が認められないので自己破産しか選択できません。また自己破産は今後の人生に大きな影響を及ぼすためしっかりとした相談対応をしてくれるところを探しましょう

生活保護受給者ができる債務整理は自己破産だけなので、両制度を知り尽くした専門家として、リライフネットへの相談をおすすめします。

リライフネットでは、生活困窮者のトータルサポートを行っています。生活保護や借金に関する知見も豊富で、他分野とのネットワークを活用し、関係機関へつなぐことも可能です。

中でも住まい確保の支援を得意としており、最短で相談翌日から入居できるという特徴があります。もちろん、自己破産の手続で自宅が競売にかけられた人の住まい探しにも対応します。

リライフネットに相談して借金のリスクを少しでもおさえ、安心した日常を取り戻しましょう。