身寄りのない方が亡くなった場合、葬儀の手続きや遺産の手続きなどはどうなるのでしょうか?

生活保護を受給していた方が亡くなった場合、故人の遺産等の処理は公的機関が遺族や関係者と協力する必要があります。

この記事では、そういったもしもの時に備えられる知識をご紹介していきます。

1.身寄りがなくて困ること

「身寄りがない」とは、家族や親族、配偶者、子どもがいないことだけでなく、疎遠であったり様々な理由で支援を得られない状況を意味します。

また、心身ともに健康であっても身寄りがないと、日常生活を送るうえで以下のような様々な問題が生じる可能性があります。

2.身元保証人と身元引受人とは

まず身元保証人と身元引受人の違いは何でしょうか?

「身元保証人」とは、支払い債務を連帯保証及び身元を保証する人です。

対して「身元引受人」とは、上記の役割のうちで保証以外の身寄りがない方を引き取る責任を持つ人のことです。

また、亡くなった場合に限らず身元保証人・身元引受人は認知機能や判断能力が低下し、治療・介護方針の意思確認ができない場合にも本人の代理で対応する役割があります。

3.身寄りがない生活保護受給者で入院が必要になったら

では、身寄りがない生活保護受給者の方が入院が必要となった場合はどうすればよいのでしょうか?

未成年者や判断能力のない生活保護受給者が入院する場合、身元保証人・身元引受人が必要となる場合が多いです。

しかし、身寄りがない場合でも入院をすることは可能です。厚生労働省の通達により、身元保証人等がいないことのみを理由に入所・入院を拒否することは「医師法19条1項に抵触する」との公的な見解がある為です。

入院拒否されることはありませんが、身元保証人の必要がなくなったということではないので注意が必要です。
入院が必要になった際は早めに医療機関を受診し、身元保証人等の設定や代理人の指定を福祉事務所に相談しておくことで入院期間中や退院後の生活をサポートすることができます。

4.介護施設に入居が必要になったらどうする?

身寄りのない人が施設入所は出来るのでしょうか?

まず介護施設において「保証人」は、支払い債務の連帯保証や身元保証の役割をもちます。

医療が必要になった際の入院の手続き、利用者間トラブルなどの保証をする人を「身元保証人」と呼びます。

対して「身元引受人」は入所者が亡くなったあとの手続き等を代理で行い、身元を引き取る人のことです。

介護施設などでは、こういった事態がいつ起こるかわからないため、身元引受人の役割は重要と言えます。

前述の入院の場合は厚生労働省の通達がある為、入院を拒否されることはほとんどありません。

しかし、介護施設に入所が必要となった場合には身元保証人等がいないと入所できない施設もあります。

なぜなら施設側が日常生活におけるリスクを避けるためです。トラブルなどが起こった場合には、施設側が責任を持たなければなりません。

判断能力が衰えてしまう前に介護施設について調べ、事前に専門家と任意後見契約をしておくことがおすすめです。

5.身寄りがない生活保護受給者死亡した場合どうなる?

身寄りがない方が亡くなった場合、まずは身元引受人や遺族がいるかどうかが確認されます。身元引受人や遺族がいる場合は、その人々が遺産の処理や後事を引き継ぐことになります。

身寄りがなく、自分の死後に火葬や役所の手続きをしてくれる人がいない場合はどうすればよいのでしょうか?

解決できる手段として「死後事務委任契約」という制度があります。

生前のうちに受任者と死後事務委任契約を結ぶことで、亡くなった後の諸手続き、事務を委任しておくことができます。

6.生活保護受給者の相続人がするべきこと

生活保護受給者の相続人となっている人は様々な手続きが発生します。

①通知と手続きの開始

生活保護受給者が亡くなった場合、速やかに福祉事務所にその旨を通知し、相続の手続きを開始します。死亡届を提出することによって生活保護の受給が停止されます。

②相続財産の確認

生活保護受給者の相続人は、亡くなった人の遺産や債務の有無を確認する必要があります。また、相続人が生活保護を受給していても、預貯金や不動産等の財産を受け継ぐことは可能です。しかし、遺産を引き継ぐことで生活保護の減額、停止または廃止となる可能性があるため、併せて福祉事務所に相談をしましょう。

③遺産分割

相続人が複数人いる場合は遺産分割の協議の必要があります。公正な分割が行われるよう、遺産分割協議書の作成や遺産の評価についても検討しましょう。

⑤税金の手続き

相続に関連する税金の手続きが必要な場合があります。相続税や所得税などについての情報は福祉事務所などに相談をして適切な手続きを行いましょう。

7.生活保護受給者が住んでいたアパートの退去は誰が何をする?

生活保護受給者が亡くなられた場合の手続きは誰が行うのでしょうか?

生活保護受給者死亡後にアパートの退去費用を負担する人は以下の通りです。

  • 連帯保証人
  • 相続人
  • 物件の所有者

最初に費用負担の義務を負うのは「連帯保証人」です。連帯保証人が支払えなかった場合は「相続人」に請求がいき、相続人も支払いが出来ない場合は最終的に「物件の所有者」が工面することとなります。まず、連帯保証人とは借主の扱いと同じです。借主が亡くなった際の債務は連帯保証人にそのまま引き継がれることとなります。
続いて相続人とは、故人の遺産を受け継ぐ権利がある人をさします。預貯金や不動産などの財産と同時に、借金・債務義務なども相続人に引き継がれます。
もしも相続人がいない、あるいは相続人全員が相続放棄した場合に、物件の所有者が退去費を負担する必要があります。

8.あらかじめ生活保護受給者自身が準備できること

生活保護を受けている方が身元保証契約や死後の事務手続きに費用を捻出するのが難しい場合でも、何もできないわけではありません。

特に、賃貸物件に住んでいる場合、亡くなった際の遺品整理や処分について、事前に対処方法を考えることが重要です。

入居者が亡くなった際、大家さんは勝手に遺品を処分できないため、相続人の有無や相続財産管理人の選任申請が必要となることが説明されています。この手続きには多大な労力や時間、費用がかかることとなります。

しかし、予め入居者と大家さんとの間で「入居者の家財処分を大家に一任する」といった内容を含む合意書を作成しておくことで、大家さんは正当な権利の下で遺品整理を行うことができるとしています。

これにより、遺品整理のための手続きが簡素化され、次の入居者募集までの期間が短縮される可能性があると述べています。

さらに、普段から生活環境を整理し、ゴミを溜めずに掃除を行うことによって、大家さんの負担が軽減されることも大切です。できる範囲で準備を行い、事前に合意書を作成することで、将来的な問題を予防する手段となります。

当事者が関係者の負担を減らすために身辺整理を行うことは一番感謝されることにもなるため、出来ることからコツコツと取り掛かるようにしましょう。

9.まとめ

この記事では身寄りがなく、生活保護を受給している方がもしもの時に備えられる基本的な知識についてご紹介しました。

入院、老後、死後など不安は絶えませんが、身元保証人になってくれる人がいない場合でもサポートをしてくれる人はいた方が安心です。ぜひ事前に福祉事務所や専門家に相談することをおすすめします。

また、そもそも身寄りがない方や生活保護を受給している方が賃貸物件を探して、入居することは困難を伴います。

リライフネットでは住居に関するお悩みに知識豊富なスタッフが丁寧にサポートします。まずは無料相談してみませんか?