がんに罹患してしまった際、入院や手術が必要となり、高額な治療費が懸念されます。しかし、働けなくなった場合でも、公的医療保険の制度や他の公的制度を利用することにより医療費の負担を軽減することができます。この記事では公的制度の一つ、生活保護制度に焦点を当てて解説していきます。

1.生活保護で受け取れる医療費の種類

生活保護受給者の方の治療は生活保護制度のうちの医療扶助の項目に則って行われます。

医療扶助が適用される項目は下記のとおりです。※1

  • 診察
  • 薬剤又は治療材料
  • 医学的処置、手術及びその他の治療並びに施術
  • 居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
  • 病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
  • 移送

医療扶助は国民健康保険の給付対象と同じです。

 つまり、国民健康保険の適用される治療行為であれば、医療扶助で無償で受けることが可能です。 

※1参考データ:生活保護の医療扶助について 厚生労働省

2.がん治療のために生活保護の手当はどのくらい適用できるか

前述しましたが、医療扶助の対象範囲は基本的に国民健康保険と同じです。

生活保護受給者は国民健康保険の被保険者から除外されている代わりに、医療扶助として原則医療費がすべて負担されるのです。

ただし、障害者自立支援法等の公費負担医療が適用される人などは対象外となります。

国民健康保険と異なる点は、医療扶助を受ける際は指定された医療機関での受診に限られます。指定された医療機関以外で受診をすると全額が患者の自己負担となりますので、医療へのアクセスが制限されてしまいます。

医療扶助で抗がん剤による薬物療法を受けることも可能です。一般世帯の場合は高額な治療費が自己負担となりますが、生活保護受給者の場合、全ての治療費に医療扶助が適用される為、無償で受けることができます。

また、必要であれば医療扶助で手術を受けることも可能です。手術後の入院費用も医療扶助から支給されます。ただし、入院期間が1ヶ月を超える場合、毎月の生活保護の支給金額が減る※2為注意が必要です。

国民健康保険のサービス対象外である先進医療を受けたい場合、医療扶助では支給されない為、先進医療での治療を希望する場合は患者の自己負担となります。

また、医療扶助は現金による支給ではなく、現物給付のような形となっています。

原則として患者の自己負担がない為、かかった医療費は全て医療扶助から支給されるという仕組みの為、過剰診療を招いてしまうことが問題となっています。

※2参考データ:生活保護と入院・扶養照会・進学・就活 申請・利用について 専門家からのアドバイス(1) NHK福祉情報サイトハートネット

3.がん治療が必要な場合、生活保護を受給するべきか

がんと診断を受けた際、「もう仕事は続けられない」と退職を考えてしまうかもしれません。

健康な時は安定した収入があってやりくりできていても、いざ長期的ながん治療で生活が厳しくなってきた方が生活保護を検討するケースも少なくありません。

そもそも生活保護制度とは、最低限度の生活を営むための生活費を保障してくれる制度です。

生活保護を受給する最低限の条件とは、全ての資産を活用し、あらゆる公的制度や年金を利用しても世帯収入が生活保護法で定められている「最低生活費」よりも低いことです。

もし生活保護を申請する場合、お住まいの地域の福祉事務所の窓口で申請が可能です。

窓口では現在の経済状況などについて聞き込み、及び指導がおこなわれます。

聞き込みの中では所有している資産について調査が行われます。資産というと、預貯金は勿論、土地や持ち家、自動車や貴金属等をさします。

基本的に生活保護受給者がこれらの資産を保有することは認められず、売却や処分をして生活費に充てる「資産の活用」が条件となっています。

土地や家屋は原則売却となっています。リライフネットでは住居に関するお悩みに知識豊富なスタッフが丁寧にサポートします。まずは無料相談のご利用をおすすめします。

生活保護の受給は申請日から遡って行われるため、申請手続きの準備を早めに進めておくことが肝要です。

がん患者の場合、高額療養費制度を活用しても、毎月一定の医療費が発生するため、少額の所持金があっても、治療中に医療費や生活費が不足する場合があります。

例えば現在30万円ほどの預金があったとしても、家賃や光熱費、食費などを支払った後、2、3ヶ月で所持金はゼロになり、家賃も支払えなくなるかもしれません。

生活保護は原則として、所持金が1ヶ月の最低生活費の5割未満で申請することが求められますが、生活費や医療費で所持金がなくなる見込みがある場合、その見込みが明らかになった時点から相談は早めに行いましょう。※3

申請のタイミングを逃すと、本来申請できた時期よりも遅れて申請することになり、受給開始もそれだけ遅くなります。ですから、治療費の兼ね合いや預金の残高、そしてその後の入退院の予定などを病院のソーシャルワーカーや福祉事務所の担当者と継続的に情報共有しながら、申請のタイミングを調整することが重要です。

また、1回目の申請で不受理だった場合でも、それが最終的な結論ではありません。申請が受理されなかったからといってあきらめず、アプローチの方法を変えながら粘り強く交渉しましょう。

※3参考データ:4 保護開始時の手持金及び保険の取扱い 厚生労働省

4.生活保護を受け取るまでの流れ

生活保護受給を受ける場合、被保護者が申請することにより開始されます。

原則として、生活保護費を受給する要件とは世帯収入が最低生活費を下回っていることが最低条件となります。

生活保護を受給したいとお考えの場合、お住まいの地域の福祉事務所の窓口へ来訪してください。説明とともに、生活保護ではない他の福祉制度でも援助を受けられるかが確認されます。生活保護以外で利用できる制度がある場合、そちらを優先して受けることになります。

また、申請した際には下記の調査を受ける必要があります。

①ケースワーカーによる実地調査

生活状況を把握するために、家庭への訪問が必ずあります。聞き取りや指導・指示は申請後も定期的に行われます。

②資産の調査

特に重要なのが資産(収入)の申告義務です。収入がある場合は必ず申告が必要です。申告をしなかった場合には不正受給となり、保護費の停止、または返還を求められることがあります。

③扶養義務者の扶養

扶養義務者から援助が受けられる場合、優先的に受けなければなりません。生活保護の申請時には援助が出来ないかどうかを確認する「扶養調査」という通知が扶養義務者に届きます。

④能力の活用

能力の活用とは「稼働能力」のことをさします。就労できる人は働き、病気やケガ、障害などで就労が困難な人は病院に通院し、治療する必要があります。

審査結果は、福祉事務所から連絡があります。審査に通った場合、再度福祉事務所に足を運び、初回の保護費や必要書類の交付、公的保険証の返還手続きなどを行います。

審査が却下された場合は、再度来所する必要はありませんが、審査結果に対して審査請求を行うことができます。

5.まとめ

この記事では生活保護受給の流れをがん治療に絡めて解説してきました。

生活保護受給者でも、がんの治療を受けることは可能です。

受給を決断すべきか、それとも生活保護以外の選択をするならば早めの準備をおすすめします。

治療や社会復帰も諦めないために、今後の治療スケジュールや収入の見通しを明確にしていきましょう。整理しておくことで、生活保護を選択しなくても生活していける可能性があります。

リライフネットでは生活保護に関する無料相談を行っております。生活保護に関する知識が豊富なスタッフが丁寧にサポート致しますので、お困りごとのある方はぜひお気軽にご相談ください。