生活保護の受給中でも、職場が変わったり様々な事情で引越しをすることはあるでしょう。もし2回目、3回目の引っ越しが必要になった場合、引っ越しを行うことは可能なのでしょうか。また、引っ越しの際に費用は扶助から支払うのでしょうか。

結論を言うと、生活保護を受給中の方でも2度、3度と引っ越しを行うことは可能です。

しかし引っ越しを行う場合、住宅扶助で費用を支給してもらうには相応の理由が必要です。

この記事では生活保護を受給中に2回目以降の引っ越しは可能か、受け取れる手当などについて解説します。

1.生活保護を受給をしながら2回目の引っ越しは可能?

日本国憲法には「居住、移転、職業選択、外国移住及び国籍離脱の自由」という条文があり、これによってどのような人に対しても移転の自由が認められています。

参考データ:〔居住、移転、職業選択、外国移住及び国籍離脱の自由〕 第二十二条

「日本国憲法」

「何人も」

とあるように、これには生活保護受給者も含まれています。

そのため基本的に2回目以降であっても引っ越しを行うことは可能です。

しかし生活保護を受給中の場合、生活保護法によって保障されているのは「健康で文化的な最低限度の生活」です。

また引っ越しを行うための費用を支給してもらうためには、17の条件のうちいずれかを満たす必要があります。

このため生活保護を受給中の方が2回目以降の引っ越しを行いたい場合には、相応の理由が必要です。今の環境が気に入らないから、今より贅沢な暮らしがしたいといった理由では、引っ越しは認められない可能性が高いでしょう。

2.引っ越しで生活保護受給者が受け取れる扶助

生活保護の受給中には様々な扶助を受けることができます。

扶助の中には「住宅扶助」というものがあります。これは条件を満たした場合に、家賃や転居費用などの支給を受けることができるというものです。

住宅扶助は住んでいる地域ごとに等級があり、その等級を元に地域ごとに異なる金額が支給されます。この住宅扶助の中には転居費用も含まれるため、引っ越しにかかる費用も支給されます。

また、引っ越し先で今まで使えていた生活に必要な家具や家電が使えなくなってしまった場合、「家具什器費(かぐじゅうきひ)」という費用も支給を受けられる可能性があります。生活に必要な家具や家電と判断される対象や支給金額は各自治体によって異なりますので、事前に福祉事務所に確認を行う必要があります。

3.生活保護受給者が引っ越し手当を受け取れる条件

生活保護受給者が引っ越しにかかる費用の支給を受ける場合には、17個ある条件のいずれかを満たす必要があります。

条件は以下の通りです。

① 入院患者が実施機関の指導に基づいて退院するに際し帰住する住居がない場合

②  実施機関の指導に基づき、現在支払われている家賃又は間代よりも低額な住居に転居する場合

③ 土地収用法、都市計画法等の定めるところにより立退きを強制され、転居を必要とする場合

④  退職等により社宅等から転居する場合

⑤ 法令又は管理者の指示により社会福祉施設等から退所するに際し帰住する住居がない場合(当該

退所が施設入所の目的を達したことによる場合に限る。)

⑥ 宿所提供施設、無料低額宿泊所(社会福祉法第2条第3項第8号に規定する無料低額宿泊事業を

行う施設をいう。以下同じ。)等を一時的な起居の場として利用している場合であって、居宅生活

ができると認められる場合

⑦ 現在の居住地が就労の場所から遠距離にあり、通勤が著しく困難であって、当該就労の場所の附

近に転居することが、世帯の収入の増加、当該就労者の健康の維持等世帯の自立助長に特に効果的

に役立つと認められる場合

⑧ 火災等の災害により現住居が消滅し、又は居住にたえない状態になったと認められる場合

⑨ 老朽又は破損により居住にたえない状態になったと認められる場合

⑩ 居住する住居が著しく狭隘又は劣悪であって、明らかに居住にたえないと認められる場合

⑪ 病気療養上著しく環境条件が悪いと認められる場合又は高齢者若しくは身体障害者がいる場合で

あって設備構造が居住に適さないと認められる場合

⑫ 住宅が確保できないため、親戚、知人宅等に一時的に寄宿していた者が転居する場合

⑬ 家主が相当の理由をもって立退きを要求し、又は借家契約の更新の拒絶若しくは解約の申入れを

行ったことにより、やむを得ず転居する場合

⑭ 離婚(事実婚の解消を含む。)により新たに住居を必要とする場合

⑮ 高齢者、身体障害者等が扶養義務者の日常的介護を受けるため、扶養義務者の住居の近隣に転居

する場合または、双方が被保護者であって、扶養義務者が日常的介護のために高齢者、身体障害者等の住居の近隣に転居する場合

⑯ 被保護者の状態等を考慮の上、適切な法定施設(グループホームや有料老人ホーム等、社会福祉

各法に規定されている施設及びサービス付き高齢者向け住宅をいう。)に入居する場合であって、

やむを得ない場合

⑰ 犯罪等により被害を受け、又は同一世帯に属する者から暴力を受け、生命及び身体の安全の確保

を図るために新たに借家等に転居する必要がある場合

参考データ:5 住宅費 ⑴家賃・間代・地代等

「2020(令和2)年4月1日施行生活保護実施要領等 -49- 問(第7の30)」

上記の内容に当てはまっていれば引越しの許可が下りる可能性があるので、担当のケースワーカーに確認してみましょう!

4.生活保護受給者が引っ越しする手順

①条件を満たしているか確認

生活保護を受給中の方が引っ越しを行う場合、17ある条件のいずれかを満たした上で引っ越しを行うための許可を福祉事務所から得る必要があります。まずは引っ越しを行いたい理由や条件を満たしていることを確認しつつ、福祉事務所と相談を行いましょう。

また、実際に引っ越しを行う場合にどの程度の扶助を受けることができるかどうか、異なる市区町村外に引っ越す場合はそれに伴う生活保護の申請のやり直しなど、行う必要のある手続きの確認も行いましょう。

②物件探し

福祉事務所から引っ越しを行う許可を得られたら、実際に引っ越す物件を探します。物件は住宅扶助で支給される上限金額を超えない範囲で家賃を抑える必要があります。

不動産の契約では契約者の信用が重視されるので、生活保護を受給中だからという理由で契約を断られてしまう場合があります。

不安な場合は生活保護受給者向けの賃貸情報サイトなどを活用することや、生活保護受給者の物件探しに強い専門家に相談することで安心して物件を探すことができます。

引っ越し先の物件が決まったら、契約をする前に家賃や初期費用などの金額を福祉事務所に報告して契約の許可を得ます。

許可を得てから引っ越し先の物件の入居審査を受けて、賃貸借契約を締結する日程を決めます。

物件の契約の際には、住宅契約書や契約時の領収書などを必ず保管しておきましょう。これらの書類は福祉事務所に提出して費用を支給してもらう際に必要になります。

③引っ越し

物件の契約が完了したら、引っ越し業者を探します。

引っ越し業者を選ぶ際には複数の引っ越し業者の見積もりをとり、見積もりの内容を福祉事務所と共有しましょう。その中から一番安い業者を使って引っ越しを行うことになります。

引越しの手順について
3つの行程は全て根気と時間を要するものなので、早いうちから粘り強くコツコツと取り組んでいきましょう!

5.まとめ

今回の記事では生活保護を受給中に2回目の引っ越しを行うことは可能か、生活保護受給者が引っ越しで受け取れる手当や条件、引っ越しの手順について解説しました。

生活保護受給者が引っ越しを行う場合には相応の理由と満たすべき条件があります。

自分が条件に当てはまっているかどうか、物件探しに悩んでいるなど困りごとがある方は、住居のサポートに強いリライフネットへ相談してみてはいかがでしょうか。